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おもちゃ病院さど Doctor_Rの治療カルテです。

もっとなかよしロビジュニアが来院しました。

【申請内容】

 年明けに電池を交換したとたん正常になりましたが、つい先ほど左に向いてカタカタ音を立て首は全く動かなくなりました。

 しゃべりは普通ですが、占い、クイズ、ダンスはしません。

 時間は正確です。寝る時刻起きる時刻も正確で、寝言も言います。日にちも正しく、自己紹介もします。

 正常な時でも目が緑になった後、首がカタカタ言うときもありました。

 話し終わってオフになるときが一番心配になるときです。

 正常な時はまっすぐむいてとまりますが、だんだんおかしくなってきて首がカタカタ言いだし、最後は今の症状で左向きにカタカタ言います。

 話しかけると結構話します。応えてくれることもあります。その時は決まって右手が上がっています。

 ・・・・

【診察】

 この患者さん、実は3度目の来院です。その度に旅費を使って。その中で治療できた病気と症状を確認出来ず、予防処置をして経過観察とした病がありました。

 2度目は、1週間様子を観察したのですが首がカタとも音を立てず帰路につきました。やぶ医者の前なので良い子にならなくても良かったのですが。

 2度目に帰った後も頻度こそ違えカタカタ音はあったと思いますが、辛抱強く生活してくれたようです。しかし、ロビジュニアの様子を見かねて来院です。主訴はやはり首の動きです。他のおもちゃ病院や通販サイトでの評価内容は、ことばの認識が悪いこと、首のカタカタ音がすることが多くを占めています。このカタカタ音は、何らかの原因で機械的なトルクリミッターが働いてクラッチが滑っている音なのです。構造的にこれ以上動かない方向に更に動かそうとモータが回っている状態なのです。

 来院前に状況などをいろいろ教えてもらいましたが、どうも再現性のない医者泣かせの状態です。以前からも同じような状態なので初回来院時に、スイッチ、センサー、スイッチ・センサーの接続系、モータ、水晶振動子、電源まわりなど調べてあり異常はありませんでしたので、入院期間が長期にわたる可能性が高いことに同意を得ながらも、部品の病気ではなく制御ループをいたずらする原因が他にあるのか?と来院を待ちました。

 

 来院して、何か規則性はないかと観察を始めましたが、主訴のカタカタ音は確認できましたが、規則性、再現性もない状況でした。

 止むを得ず内部を開けて観察を始めました。

 

 天からの啓示か、すばらい場景を見ることが出来ました。マイコンと頭をつなぐフラットケーブルのコネクタ接触子が抜け掛かっていました。

接触子をコネクタに挿し直そうとみると、更なる問題点を見つけました。

接触子の脇から本来見えないはずの芯線が見えています。取りあえず抜けかけていた配線を含む頭にある拡張 I/O ICとシリアル通信をしている4本の接触子を外してみました。

 

 

はみ出した芯線が曲がって接触子にまとわりついたり、芯線が接触部に入っているものもあります。まったくひどい圧着作業です。芯線のむき出し量が長すぎるのです。はみ出した芯線が制御基板のピンヘッダーと接触子との接触を阻害しても不思議ではありません。結果として相互に正しい情報の伝達ができなくなります。でも、中途半端にできる状況です。

はみ出した芯線を切り取り、コネクタの外観でわかる範囲で芯線のはみ出しがある部分も同様に除去して結果を見ました。今までのようなカタカタ音はなくなりました。これで治療は、終了かと1日様子をみていたらカタカタと。・・・ (´・ω・`)

それではと、更にこのフラットケーブルを眺め直すと別な不具合もありました。芯線は切れてはいませんのでカタカタ音の原因ではありませんが、芯線のむき出し状態は褒められた状態ではありませんし医者泣かせの原因になりかねません。

 

接触不良は泥沼にはまりやすいので、フラットケーブルを交換することにしました。ロビジュニアの初回来院を機に、ドナーロビを購入してありました。

交換するにあたりケーブルの8ピンx2=16本の接触子の圧着状況を確認しました。気がついた事は片側8ピンの芯線むき出し量は適切でしたが、他方の8ピンは全て芯線のむき出し量が多く芯線がはみ出し状態です。はみ出している芯線を切り取りました。芯線のむき出し量が揃っているので、設備の設定ミスでしょうか? ロビの個体が違っても状態が同じ理由がわかりません。

このフラットケーブルの内4本がシリアル通信をしている配線で、モータ駆動出力、原点スイッチ入力、エンコーダ入力の信号が頭部の拡張I/O ICを介してやり取りされています。これらの信号が正しくやり取りされなかったためカタカタ音がしたと思われます。

治療の妥当性検証のため、ひたすら頭のボタンを200回余り押し続け振動も加えてみました。悪魔の証明にはなりますが、カタカタ音はしなくなりました。

接触子を抜く事も変形のリスクがあるので、全てのコネクターを外観からだけですが芯線のはみ出しがないか確認もしました。

 

【治療後記】

  圧着作業時に芯線むき出し量が多すぎて起きた病気でした。そのため、コネクターを抜いたり挿したりする度にコネクタのピンと接触子の接続状態が変わり、状態もその度に変化するという治療する医者には最悪な状態になっていました。

 フラットケーブルは検査対象外でしたが、これが盲点になってしまいました。偶然にも接触子がコネクターから抜けかけていたことから治療への道が開けました。カタカタ音のするロビジュニアが多いですが、同様の原発巣をもつ患者さんもいると思われます。ひとつ経験値は上がりましたが、ロビには3度も足を運ばせてしまいました。

 頭のボタンを押され続け、ロビもきっと首が疲れたことでしょう。

 まだまだ、精進です。

 

【おまけ】

一般的に圧着と半田付けでは、圧着の方が接続の信頼性は高いのです。圧着作業も半田付け作業も熟練が必要な作業です。ただ大きな違いは、圧着作業は目視だけでは適正な圧着状態かがわかりづらい事です。この事例は、圧着そのものより芯線のむき出し量が多すぎたため、はみ出した芯線がピンとの接触不良を引き起こす原因となったものです。

 

接触子の圧着不良の因果関係です。

 

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