KYOKOⅡ<元AOL→teacupの2009年1月までの旧ブログ、映画・音楽・美術展など>

現ブログSomething Impressive (https//autumnnew.exblog.jp)です。

死ぬまでにしたい10のこと(’03)

2009-01-18 00:00:29 | その他
スペイン・カナダ合作、先日見た「あなたになら言える秘密のこと」のイザベル・コイシェ監督作品。夫、2人の幼い娘と暮らす23才のヒロインが、突然、腫瘍のため後数ヶ月の命、と宣告され、残された日々の内にしておきたい項目を10挙げ、緩やかにそのリストに沿って日々を送っていく物語。

ヒロインのアン役は同じサラ・ポーリー、「あなたになら・・」ではブロンズだったけれど、今回栗色の髪、やはり何処か知的、繊細な雰囲気の女優と改めて。映像はやはりスタイリッシュ、折々の音楽も、コインランドリーで眠るアンをリー(マーク・ラフェロ)が見つめるシーンでのバラード、2人が車の中で聞いていた、ワルツの男性ボーカル曲、リーが実際の名を挙げ、最高さ、と言っていたブロッサム・ディアリーというシンガーの曲等、「あなたになら・・」同様好み的にはいい感触。ラフェロは「コラテラル」に出ていたのだった。

内容は、「あなたになら・・」が、ヒロインが抱えていた生半可でない秘密、その吐露、という爆弾、があったのに対して、致命的運命の宣告、という衝撃はヒロインの内面に留まり、表向きには不発のまま、注意深くソフトに、オブラートで包んだような流れ。

そもそも、アンがカフェで挙げた10のリスト、それは現実的なものも現実逃避的なものもあったけれど、それを書き出したのが、苺の色の小さなメルヘン的なノート、だったり、一家が暮らすトレーラーハウスに、赤いビーズを繋いだ長い簾のようなインテリアが掛かっていたけれど、死というものを、生々しく、でなく、その簾ごしに垣間見ているような印象も。

現実的には、いよいよの時になって、一人蒸発でもしない限り、家族に知られず病死するのは無理だろうけれど、そういう葛藤を全て割愛、夫(スコット・スピードマン)や娘、母達一人一人に、録音メッセージで優しさだけを残そうとする姿は、ある意味、愛情表現、臆病さ、強さ、逃げ、等、私には様々に感じられた。

若い恋愛結婚での絆ある夫との、残された日々の、愛情劇、にはならず、自分に惹かれはしていても、君のことは10%も判らない、という行きずりの男リーに一時の慰めを求めるのも、ヒロインの、周囲には事実を閉ざす深い孤独、からの大人の選択、なのかもしれないけれど、その2人の時間は、どうも切実さのないファンタジックな空想劇、という感も。

むしろ、隣に越してきた同名のアン(レオノール・ワトリング)が、コーヒータイムにアンに打ち明けた看護婦時代の、一人で看取ったシャム双生児の悲しい話、というのが、人間的な過去の生々しい痛み、としてインパクト残り、

その話によって、アンは彼女を、将来の一家の自分の身代わり、の候補に認めた感もしたけれど、「あなたになら・・」のテイストに繋がる感覚もしたシーン。その聡明そうなショートカットのワトリングは、「あなたになら・・」で、出番は少しだったけれどジョセフの因縁の友人の妻役、だったのだった。

そういうふと垣間見える事実、日常の中、隣に住む母とのやや皮肉めいたやり取り、10年刑務所にいる、という父に会いに行き、ガラス越し、母について、幾ら愛していても、相手の望むように生きられない場合もある、というような言葉、根底に娘としての両親への愛情はあっても、やはり自分の悲運を分かち合おう、とは出来ないような距離感、目にする街やスーパーの日常のモノに溢れた風景への、やや醒めた眼差し。

そういう、抑えた切なさや虚無感を、淡くスマートに脚色した、深みあるヒューマンドラマ、というよりは、どちらかと言えば女性向き的な、美しいお伽噺、という後味だった。昨夜「ミューズの晩餐 稲垣潤一」録画。(http://www.amazon.co.jp/%E6%AD%BB%E3%81%AC%E3%81%BE%E3%81%A7%E3%あなたになら言える秘密のこと(’05)



2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (いい加減人(やまと))
2009-01-18 23:11:47
こんにちは。
だいぶ前にこの映画をレンタルだったか、テレビでみました。『あな
たになら言える秘密のこと』も最近テレビでやっていたような・・・
。こちらの方はあんまりよくみていません・・・。やっぱり、このふ
たつは姉妹版だったんですね。
だいぶ前にみたので、細かいところはあんまりよく覚えていませんが
、まだ、わかいヒロインが死に直面するというお話ですよね。それで
、10個リストアップするわけなんですが・・・。
似合わないのに、不倫をしてみたりですが・・・。でも、子供の成長
を見守ることは出来ない切なさがあり、誕生日ごとに録音を残してい
たんでしたっけ?何か、このあたりが曖昧なのですが・・・。消して
大げさではないですが、母親としての、愛情が感じられるシーンだっ
たと思います。
Unknown (Autumn)
2009-01-19 10:33:13
いい加減人(やまと)さん(ことYamatoさん)、コメント有難うございます。こちらの方ご覧だったですか、先月「あなたになら・・」の放映があって、私は録画を見て、同じ監督・ヒロイン作品でこちらもDVDで見て、テーマは違いますけど、ちょっと繋がるような所も感じたりしました。

一人で車の中で、18才までの誕生日用に、それぞれの娘にメッセージを録音してましたね、思い出とか交えて、ちょっとしたアドバイス入れたりして。この部分は、面と向かっては死の運命を話せない代わり、という感じもしましたが、何か不倫の部分等よりも、行動そのものは切実さというか、母としての真直ぐな切ない思い、がにじみ出ていた気しました。

コメントを投稿