誓球の空 - since 2001 -

昭和43年盛夏、初めて出会った人生の師匠は云った。
未来に羽ばたく使命を自覚するとき、才能の芽は急速に伸びる。

第97回 箱根駅伝

2021年01月03日 | 誓願の絆2012-2021

創立50周年の佳節を祝う快挙(総合2位・往路優勝)・・・ 本当におめでとう。
目標は総合3位以内、惜しくも総合優勝には届かなかったものの、
有言実行の成果に、思わず目頭が熱くなる2日間だった。
おめでとう、そして・・・ ありがとう。

正月二日から三日にかけて、コロナ禍において行われた・・・ 襷と絆が繋いだ熱き物語
午前8時前、スタートの号砲を待つ東京・大手町は「応援したいから、応援にいかない。」のキャッチコピーとともに、
メディアやポスターなどを通して、応援の自粛が要請され、例年とは違った静けさに包まれていた。

マスコミの注目は、青山学院大の連覇か? それとも・・・ 
東海大、駒沢大を交えた稀に見る大混戦か?
さらには、そこにダークホースと目される明治大が絡んでくるのではないか?
スーパールーキーや絶対的なエースを擁し、虎視眈々と古豪復活を狙う順天堂大、中央大、早稲田大を押す声があるなか、
創価大は全くノーマークで歯牙にもかからず、期待のひと言すら・・・ 語られることはなかった。

昨シーズン、三度目の出場で総合9位となり、初めてシード権を勝ち取った創価大は、
大胆にも・・・ 総合3位以内との高い目標を掲げ
「1区から出し惜しみせず、強い選手から並べます。」と、
就任2年目の榎木監督は、最強の布陣を配置して挑んできた。

1区を任されたのは、エースの福田悠一選手
5000メートルで13分43秒、1万メートルでも28分19秒のタイムを持ち、
創価大の日本人最高記録保持者となってはいるものの、各校のエースが集まる箱根の1区で注目されてはいない。

そんな福田選手に、榎木監督は・・・ 魔法をかけた。
「レースは、名前やタイムが走るわけじゃない。」
「人が走るんだから、何が起こるか分からない。」
「名前に臆せず、自信を持って走っていこう。」

スタート直後の超スローペースで、有力校が牽制しあい神経をすり減らすなか、
福田選手は惑わされることなく、自分のペースで走り切ると、
目標にしていたトップから20秒差で5位以内を上回り、15秒差の3位で2区へと襷を繋いだ。

エース区間と云われる2区は、留学生のフィリップ・ムルワ選手
いきなり抜け出した東海大のペースに惑わされることなく、しばらくは2位集団のなかで足を溜めていたが、
ハイペースで後方からまくってきた、東京国際大の留学生選手の後ろに着くと、
ここぞとばかりにペースを上げ、ラスト3キロで若干ばてたものの、後続を振り切って2位で3区へ襷を繋いだ。

湘南の海岸通りを走る3区は、昨年は1年生ながら大抜擢で6区を走ったものの、区間16位に沈んでしまった葛西潤選手
箱根直後にスランプに陥ったが、リベンジを誓って単身ケニアで合宿に挑み、心身ともに逞しくなって戻ってきた。
海から吹き付ける強い風に各校の選手が苦しむなか、トップとの差をじりじりと詰めて2位を死守するだけじゃなく、
トップとの差を34秒差にまで詰めて4区へ襷を繋いだ。
 
箱根の山へ繋ぐ4区は、昨年シード権を勝ち取った立役者の嶋津雄大選手
昨年は、一時期休学するなどいろんなことがあったが、
「初心に戻って、素直に競技に向き合えた一年間だった。」と本人が語る通り、
秋口の復学を機に、徐々に調子を上げていくと、キッチリ箱根を照準に当てた万全の調整で、この時を待っていた。

序盤で前を行く東海大に並ぶと、あっという間に突き放してトップに立ち、ぐんぐん差を広げたが
ラストの2キロで左足が攣るというアクシデント、その時・・・ 嶋津の目の前には箱根の山が見えたという。
5区でこの山を登る三上のことを思いうかべながら、なんども左足を叩き気合を入れ直して、トップで5区へ襷を繋いだ。

全10区間のうち、最も難所と云われる山登り5区は、この日ここを走るために1年間かけて鍛えぬいた三上雄太選手
昨年も5区を走る気満々だったが、直前でメンバーから外れ悔しい思いをしている。

昨秋行われた仮想箱根5区といわれる「激坂最速王決定戦2020」に出場し、各校の5区候補を抑えて見事に優勝し、
絶対的な自信を持って「山の王になる」と断言して挑んだ・・・ 箱根の山
2位の東洋大を2分14秒も引き離す独走で、創価大初の往路優勝のテープを切った。

往路優勝の感動から一夜明けた、正月三日の午前8時、復路6区のスタート地点となる箱根・芦ノ湖には、
この朝、エントリー変更された濱野将基選手が立っていた。
昨日までエントリーされていたのは、この一年チームを鼓舞し支え続けてきた鈴木渓太主将だった。

スタートラインに向かう直前、緊張した表情の濱野の肩に、鈴木渓太が優しい笑顔で手を置いた。
期待に応え軽快に山を下った濱野は、主将の熱い思いと監督車からの檄に応え、トップを守り7区へ襷を繋ぐ。

湘南の風を受けて走る7区は、エントリー変更された原富慶季選手
今年卒業する4年生のなかで、実業団(九電工)への就職が内定している主軸の一人で期待は膨らむ。

トップで走ることを喜びに、4年間の集大成との決意で序盤から快調に飛ばすと、なんと区間賞に2秒差の快走
「2秒差で区間賞を逃した悔しさは残る。」としたが、それが成長の証だろう・・・ 本当に強くなった。
東洋大を交わして2位に上がった駒沢大に、1分52秒差をつけて8区へ襷を繋ぐ。

8区を走るのは永井大育選手、4区を走った嶋津と同じ病気(網膜色素変性症)と闘うランナーだ。
「嶋津がいるから、自分も言い訳できない。」と意気込む。
シード獲得に沸いた昨年は、走ることができなかった悔しさを糧に、持ち前の負けじ魂で襷を受けると、
気持ちの強さで粘り、終盤にだらだらと続く上り坂を凌ぎ切って、トップのまま9区へ襷を繋ぐ。

9区は昨年もここを走った石津佳晃選手、昨年はシード権がかかったなか、襷を受け好タイムで走ったものの、
前を行く選手から後れを取ってしまい、満足できない走りとなってしまい、今年こそはと誓っていた。

「自分で課題を見つめ、自分でメニューを考えて、一年間、箱根に懸けてきた。」という石津は、
後半の弱さを解消するため、ハーフマラソンなど長い距離を強化し、駅伝と同じ単独走でスタミナを鍛え上げると、
前半から出し惜しみせず突っ込み、後半は強化してきた粘りで耐える作戦を立て、
競技人生最後となった箱根路で見事に区間賞を獲得、その雄姿は映像を通して、瞼と心に焼き付く圧巻の走りだった。

アンカーを任されたのは小野寺勇樹選手、にっこり笑って襷を繋いだが、10キロの手前から目が虚ろになり始めていた。
「脱水か?」と思ったが、蛇行するような気配はなく、足元に力強さはないものの、大きく乱れているようでもない。
後から聞けば・・・ 強度の緊張感からくる精神的な負担から汗が出なくなり、意識が飛んでしまったようだ。

晴海通りから銀座通りへと曲がる、ラスト2キロの交差点で、追い上げてきた駒沢大に交わされたものの、
ゴールテープを切るまで、必死の形相で前を行く駒沢大を追い続けた。
石津から襷を受けたとき、約3分あった差は、結果的に1分差に広がったが、
テレビは、意識が朦朧とするなか、2位でゴールした小野寺勇樹を、主将の鈴木渓太が抱きかかえる姿を映していた。

嗚咽で言葉にならない小野寺に、いつもの・・・ 渓太スマイルで語りかけた。
「小野寺、ありがとう。」
「最後まで諦めず走ってくれて、俺たちは目標を達成したんだ。」

悔しさを押し殺し・・・ 最後まで走り切ったアンカー小野寺を称えたのは、
主将でありながら、走ることが叶わなず、悔しさを人一倍知り、それを乗り越えた鈴木渓太だった。
これが創価、これこそが創価じゃなかろうか・・・ だから私は、勝っても負けても創価に拍手を送り、応援を続ける。

レース後、我に戻った小野寺は語った。
「ふがいない走りの自分に、みんなは温かく、ありがとうって言ってくれた。」
「このチームで本当によかった。来年はリベンジしたい。」
悔しさを経験したから、芽生え生まれる決意があり、やがてそれは誓いとなって成長につながるだろう。

「競技力=人間力である。」と榎木監督は訴える。
競技の悔しさが、人間を鍛える。
創価大学駅伝部は、必ず強くなって・・・ 箱根路に、また戻ってくるだろう。

最後に実況中継をしてくれた、日本テレビアナウンサーの言葉を記しておきたい。
「初めての往路優勝がありました。初めての総合優勝には届かなかった。」
「目標は、総合3位でした。目標達成とみれば、うれしい準優勝。」
「ただ、悔しい準優勝、2位で悔しいと思えるチームになった。」と伝えたのち、

「創価大学、準優勝!」
「この悔しさを来年につなげます!」と繋いで・・・ 結ばれた。

この実況は・・・ 来年箱根に挑む選手たちの糧になるだろうし、
新たなステージへ向けて、一歩を踏み出す四年生に贈る、最高の花向けになるのではなかろうか。

頑張れ! 創価大学駅伝部
そして、ありがとう・・・ 創価大学駅伝部


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2021年 1月 2日(木)~ 3日(金) 東京・大手町 ~ 箱根・芦ノ湖 往復10区間・217.1㎞
第97回 東京箱根間往復大学駅伝競走
 
[ 大会エントリー選手 (16名)]

[ 学年 ] [ 氏名 ]   [ 出身校 ]    [ 区間エントリー(当日変更)]
 4年 文   石津佳晃     静岡 ・浜松日体   復路・ 9区
    経済  鈴木渓太     山形 ・東海大山形  復路・ 6区 → (濱野将基に変更)
    文   原富慶季     福岡 ・福岡大大濠  控え → ( 7区)
    法   福田悠一     鳥取 ・米子東    往路・ 1区

 3年 経営  小野寺勇樹    埼玉 ・埼玉栄    復路・10区
    文   嶋津雄大     東京 ・若葉総合   控え → ( 4区)

    文   永井大育     鹿児島・樟南     復路・ 8区
    文   三上雄太     石川 ・遊学館    控え → ( 5区)

 2年 教育  緒方貴典     熊本 ・熊本工    控え
    文   葛西潤      大阪 ・関西創価   控え → ( 3区)

    法   濱野将基     長野 ・佐久長聖   控え → ( 6区)
    経済  横山魁哉     静岡 ・島田     復路・ 7区 → (原富慶季に変更)
    経済  フィリップムルワ ケニア(留学生)   往路・ 2区

 1年 経済  森下治      鹿児島・屋久島    往路・ 5区 → (三上雄太に変更)
    経営  山森龍暁     福井 ・鯖江     往路・ 3区 → (葛西潤に変更)
    経済  吉田悠良     宮城 ・利府     往路・ 4区 → (嶋津雄大に変更)


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[ 総合順位 ]
  優勝 駒澤大学   10時間56分04秒     11位 明治大学   11時間06分15秒

  2位 創価大学   10時間56分56秒     12位 中央大学   11時間07分56秒
  3位 東洋大学   11時間00分56秒     13位 神奈川大学  11時間08分55秒
  4位 青山学院大学 11時間01分16秒     14位 日本体育大学 11時間10分24秒
  5位 東海大学   11時間02分44秒     15位 拓殖大学   11時間10分47秒
 

  6位 早稲田大学  11時間03分59秒     16位 城西大学   11時間11分20秒
  7位 順天堂大学  11時間04分03秒     17位 法政大学   11時間13分30秒
  8位 帝京大学   11時間04分08秒     18位 国士舘大学  11時間14分07秒
  9位 國學院大学  11時間04分22秒     19位 山梨学院大学 11時間17分36秒
 10位 東京国際大学 11時間05分49秒     20位 専修大学   11時間28分26秒

 往路優勝 創価大学   5時間28分08秒     復路優勝 青山学院大学 5時間25分33秒 
 

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[ 個人記録 ]
[ 区間・距離・コース ]    [ 選手名 ]     [ 総合記録 ]      [ 区間記録 ]

 1区 21.3㎞ 大手町~鶴見  福田悠一     4年                3位 1時間03分15秒
 2区 23.1㎞ 鶴見 ~戸塚  フィリップムルワ 2年  2位 2時間10分33秒  6位 1時間07分18秒
 3区 21.4㎞ 戸塚 ~平塚  葛西潤      2年  2位 3時間13分14秒  3位 1時間02分41秒
 4区 20.9㎞ 平塚 ~小田原 嶋津雄大     3年  1位 4時間16分03秒  2位 1時間02分49秒
 5区 20.8㎞ 小田原~芦ノ湖 三上雄太     3年  1位 5時間28分08秒  2位 1時間12分05秒

 6区 20.8㎞ 芦ノ湖~小田原 濱野将基     2年  1位 6時間26分57秒  7位    58分49秒
 7区 21.3㎞ 小田原~平塚  原富慶季     4年  1位 7時間30分09秒  2位 1時間03分12秒
 8区 21.4㎞ 平塚 ~戸塚  永井大育     3年  1位 8時間35分19秒  8位 1時間05分10秒
 9区 23.1㎞ 戸塚 ~鶴見  石津佳晃     4年  1位 9時間43分33秒  1位 1時間08分14秒
10区 23.0㎞ 鶴見 ~大手町 小野寺勇樹    3年  2位10時間56分56秒 20位 1時間13分23秒

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