水槽から手ですくってとる豆腐

古い映画館、個人書店、レコード屋、量り売りの菓子屋、カンケリする子供たち…
懐かしい町は、自分の頭につくるか、映画などで会えます。

私は、よくお使いに出されました。
魚屋、卵屋、肉屋、豆腐屋。
みんなお店の人としゃべらないと買えません。
頼んでから、また時間もかかります。
パックじゃないですから。
包むんですね。
お店の人の手は、すべらかな動きで見てて飽きません。

豆腐は、水槽にたくさん沈んでいます。
「木綿を１丁ください」
注文があると店の人がすくってくれます。
あんまり簡単に豆腐を扱うので、
自分にもできると思ってマネしました。
無残にくずれ、怒られました。
それでも、またそこに買い物に行きましたが。

時間がゆっくりと流れ、ゆっくりと見、
ゆっくりと関係を作れました。

そんな蜜月を堪能する間もなく、
町はあっという間に変容してしまいました。
こども心にも寂しかったです。