とある弁護士の六法全書

~とあるロイヤーのコンペンディウム~
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聖夜に舞い降りた天使-映画けいおん!レビュー

2014-05-17 23:46:53 | 日記
※アニメ評論家の藤津亮太さんを講師とする-アニメを題材にした-レビュー(短評)の書き方講座で書いたものです。
 講師の指摘を受けて修正したバージョンになります。

アニメ「けいおん!」は2009年4月にテレビ放送が開始し、続編の「けいおん!!」が2010年4月から放送された。その大ヒットを受けて、2011年12月には映画けいおん!が劇場で上映された。そして、地上波では2012年12月24日に初オンエアされた。
映画けいおん!は、卒業をテーマとして物語が大きく2部で構成されている。前半は、高校卒業を間近に控えるだけとなった平澤唯、秋山澪、田井中律、琴吹紬と後輩の中野梓という軽音部のメンバーによる「卒業旅行」となっており、旅行先の決定から目的地へ向かうまでの道中、そしてロンドンでの滞在を、おもしろおかしく過ごす様子が描く。後半は、唯、澪、律、紬の「卒業式」が描かれており、残り少なくなった卒業式に向けた準備や卒業式当日の様子が展開する。また、軽音部の先輩4名が後輩である梓へ曲を贈るということは映画けいおん!の前半と後半とを貫くキーとして設定されている。
アニメけいおん!自体は、「涼宮ハルヒの憂鬱」や「KANON」、「CLANNAD」といった人気作を手がけてきた京都アニメーションが制作を手がけているが、制作発表当初は期待値の高い作品ではなかった。しかしながら、アニメ放送後にヒットした要因としては、オープニング曲・エンディング曲とともに劇中歌を含めてその音楽性の高さが語られることが多い。発売された関連CDが軒並み売上ランキングの上位にあったことがその証拠といえる。
それに付け加えてけいおん!の魅力を指摘すると、それは女性キャラの関係性を描いたドラマ性にある。それまでゼロ年代では多人数の女性キャラが登場するアニメとしていわゆる「ハーレムアニメ」と呼ばれるものが多かった。しかし、けいおん!では主要キャラに男性が存在せず(唯一メインキャラに絡んでくるのは田井中律の弟くらい)、女性キャラ同士の人間関係・距離感によって男性視聴者の圧倒的な支持を得た。この転換が2010年代における1つの流れの契機となっていった。
そのことは、映画けいおん!でも同じように描かれている。恋愛関係や部活動における挫折と成長といった要素を盛り込むことなく、卒業を前にした軽音部のメンバー5名の閉じた関係性だけをドラマとして取り上げる。異国の地という非日常的な場面においても変わらない5人の人間ドラマを見せていく。そのうえで、テレビ第2期では梓の視点で描かれることの多かった卒業式に向けた時系列を、映画では卒業する4名の視点に置き換えることで、軽音部のメンバーの人間関係の模様が重層的に豊かとなっていた。ラストはテレビ版と同じく「天使にふれたよ!」の楽曲によって締めくくられており、楽曲がより強く印象づけられる結果となった。
 そしてなお、テレビシリーズから映画まで見た視聴者に対しては、ご褒美と言わんとばかりに、テレビ第2期24話で描かれていなかったピースを埋めるような演出を仕掛けている。劇場版の制作告知がテレビ第2期の最終回に合わせて行われており、当初から仕組まれていたものである。
 まさに映画けいおん!は、梓に贈るために作られた歌での印象的なフレーズの「天使」が舞い降りる聖夜に多くの男性視聴者が自宅で過ごすお供として相応しい作品であった。
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