ジャズ入門編

2015-10-22 00:04:53 | 雰囲気のあるアルバム
ロックを聴いていくと自然と他のジャンルにも目が向く。比較的入りやすいのはブルース、ソウル、フォークといったところだろうか。ブルースはロックギターの元祖だし、ソウルは黒人の歌声の力を簡単に感じられる。フォークはディランを遡るだけでいい。この3つは楽器もロックと近い。で、困るのはジャズである。なかなかの存在感を放ち、はまる人は凄くはまると評判だ。だが、聴いてみるとめちゃくちゃ眠くなる。なんというか集中すべきポイントが見つけられない。歌ものやギターがメインのでも、力が抜けていてそのくせ長い。引き寄せられては跳ね返される。私にとってジャズはあまりに高い壁だった。
ところがついに取っかかりを見つけた。それがBuddy Richの「Big Swing Face」だ。以前紹介した映画でこのドラマーを知り、最近やっとアルバムを手に入れた。音楽のイメージはブラスバンドだ。これでぐっと聴きやすくなる。しかもバンドのリーダーはドラム。この点もロックに馴れた耳でも受け入れやすい。ドラムはジャンルが違っても音が同じだから。そして彼はえげつないドラマーだった。キース・ムーンの手数とボンゾの破壊力を合わせた感じ、とロック界最強の二人を足して2で割らないと言っても言い過ぎではない。常に爆走状態なのに見せ場ではさらにパワーアップするという超人っぷり。それにあわせたバンドもかなりキレのいいリズムである。ソロはまだわかったり、わからなかったりするが、ジャズと名のつく音楽の中ではかなり好きな部類にはいる。一曲目が「ノルウェイの森」なのも、ロック好きには入りやすくなっている。超パワフルな 「ノルウェイの森」が気になる人には是非聴いて欲しい。



真逆のメドレー

2015-10-17 00:20:36 | 衝撃の曲
日本語はロックには向いてないんじゃないか、なんて議論ははるか昔からある。そりゃ、英語圏の音楽を日本語でやろうとすれば無理がある。英語は意味のある文を作った時に、日本語に比べて発音にかかる時間が恐ろしく短い。アナ雪のサビの部分とかは分かりやすい。英語だと「レリゴー×2」のところを日本語は「ありのーままのー」なのだから。だから偉大な先人たちが日本語にあったロックを作り出して、今の日本のロックがあるのだ。
というわけで今回は初の邦楽、ウルフルズの「忘れちまえ」と「思いだせ」のメドレーだ。メドレーとはどこにも書いてなかったと思うが、この2曲が対になる曲なのは間違いない。曲調は前者が勢いのある軽やかなノリで、後者は暖かみのある落ち着いた感じ。でもなんとなく音が似ているのはコードとかが同じなのだろう(音楽的な知識はなく適当に言ってますのであしからず)。両方ともいいメロディで何度も聴きたくなる類いのものなので、似ている曲が続くのは問題無し。歌詞もまたいい。「忘れちまえ」で書かれているのは「いろいろ忘れるけどこれだけは忘れられない」というメッセージで、「思いだせ」の方は「思い出したことを全部背負った上で進め」という人生訓(?)のような
ものだ。両者は正反対の題名でありながら同じ方向を向いていたりするのだ。また、この思い出したり、忘れたりする内容がいかにもウルフルズな感じがある。バカらしい関西のセンスから徐々に真に迫るヒリヒリとした感情の表現に変わっていく彼ら(というかトータス?)の王道パターンががっつり発揮されている。歌詞がいい邦楽はホントに名曲ですね。


"忘れちまえ~思い出せ" を YouTube で見る






構成の妙

2015-10-10 23:43:44 | 雰囲気のあるアルバム
ベスト盤は買わないようにしている私だが、ライブ盤はかなり好き。特に初めて買うアーティストのCDはライブ盤にすることが結構ある。ライブ盤は選曲がベスト的なのだが、全曲同じ時期に演奏されているのでベスト盤に感じる雰囲気のバラバラさがない。まあそれでも曲の作られた時代は違うのでどうしても統一感には欠ける。そのかわりライブならではの即興やアレンジ、テンションの高さはやっぱりいいのだ。
このライブ盤に共通の特徴を覆す名盤についに出会ってしまった。それが今回のLou Reed「Animal Serenade」だ。当たり前だが選曲は彼の長いキャリア、VUから当時の最新アルバムのザ・レイヴンまでを網羅している。にも関わらず恐ろしいまでの統一感がこのアルバムを貫いている。流れるような選曲と曲順に、アレンジも前後の曲と噛み合うようになっている。多くない演奏者たちが楽器を持ちかえながらのバックは、シンプルかつ音に広がりと奥行きがしっかりある。チェロやオペラ的なヴォーカルの起用や基本的にドラム無し、という変わった編成も彼がいかに雰囲気を整えようとしたかが感じられる。ルーの曲にもとから備わっている都会的な暗さや退廃的な華やかさが輝きを増しながら淡々と流れ込んでくる。ルーのノイジーなギターソロも随所で味わえる。



境界の人

2015-10-07 00:37:31 | マイ・フェイバリット・ミュージシャン
ブルースはロックを聴き出すと必ずぶつかる壁だ。私のブルース初体験はマディだったが、あの良さが分かってきたのは今年に入ってからぐらいだ。それまでは勉強として聴いていたのが、やっと楽しみとして聴けるようになった。
一方で一回目からがっつり心を掴まれたブルースも数は少ないがあった。その中の一人がBuddy Guyである。出会いはストーンズのライブ映画。とにかくソロがエグかったのと、迫力の歌声が頭に焼き付いた。ユーチューブで検索して動画を漁るとロックの人との共演も多く、しかしながらこの人がステージに立てばもう場を支配してしまう。かなりロック寄りでありながらも、確実に彼のはブルースなのだ。それは単に彼が黒人だからというわけでもないと思う。そういうところが独特の魅力なのかもしれない。昔はキンキンした叫びと故障寸前のギターの組み合わせが、好きな人にはたまらない。この時期おすすめはバディマイルズ、ジャックブルースと共演した「メリーさんの羊」だ。もうちょっと円熟みがあるのはフェスティバル・エクスプレスの「マネー」。ギリギリと締め上げたようなテンションの高い名演。後はわりと最近ではジャスフェスの「マスタング・サリー」か。原曲と違いかなり抑えた静かな感じから怒濤の盛り上がりまでのぶっ飛びかたかすごい。ロニーウッドと共演の「ミス・ユー」も好きだなぁ。彼の大物っぷりが見られる。いつまでもテンション高く健康的な素晴らしいブルースマン。



「天才」

2015-10-06 23:44:17 | 映画・サントラ
天才ってのは基本的に変人だし、社会と折り合わない場合が多い。まぁだからこそアート的には成功するんだけど、今度はその成功に日常を奪われてただの狂人になってしまう、なんてのもパターンだ。
まさにこの王道パターンというか天才の宿命に乗っかりながらも感動的な作品が「FRANK」という映画だ。ハリボテの頭をかぶった主人公・フランクを中心にとにかく濃厚な登場人物たちと前衛的なバンドの音楽がこの映画の完成度にかなり貢献している。音楽映画の難しいところはストーリーにあった音楽を作れるかだ。大抵は2、3ヶ所くらい違和感を感じるが、この映画に関してはそこが絶妙にマッチした。後は笑いあり涙ありの展開に、ラストがこれまたいいのだ。全ての流れをきちんと受け止めた上で、余韻に浸れる作りになっている。伝記ものではなく、フィクションだからこその無駄の無さと緻密さ。それをもって天才ミュージシャンの典型を描いた感動作。