綿毛~*○の童話集

☆2008年1月より、童話集専用のブログにタイトル・内容を変更しました☆

・★・雪の日の贈り物・★・5

2006年10月26日 18時20分04秒 | 絵本作家的なこと
頭を抱えてブツブツ、ウーンウーンと考えて込んでいたアマガエルくんでしたが、
いくら考えてもなかなかそれらしい答えが浮かんできません。
困ったアマガエルくんは、もう一度今日あったことを順番に思い出して
考えてみました。
「池のほとりでかけっこして~、森の草っ原で追いかけっこして~。
で、えーっと。えーっと…。夕べ見た雪の話になって~」
何かが引っ掛かったアマガエルくんでした。
「うん? 待てよ~、何か今引っ掛かったぞ! え~っと…。雪? 雪…。ゆき!
雪!」
アマガエルくんは、ケンカになる前に雪の話をしていたことを思い出しました。
「そうだ。おいらたち、雪の話をしてたんだ!」そう言うと、一目散にアマガエル
ばあさんの部屋に駆け下りて行きました。
「ばあちゃん! ばあちゃん! わかったよ。おいら、何でカタツムリくんがプンプン
してたのかわかったんだ!」

揺りイスに腰掛けて編み物をしていたアマガエルばあさんは、
「何だろうねぇ、この子は。騒々しいったら、ありゃしないよ、もう」
とたしなめるように言うと、でもすぐにニコニコと優しい顔になって
アマガエルくんの話に耳を貸してくれました。
「さあ、ここへお座り。落ち着いて、もう一度ゆっくりと説明しておくれな」

切れた息を整えながら、アマガエルくんは話し出しました。
三人で仲良く遊んだこと、どこへ行ったとかこんなことをしたとか。
とにかく順番に話を進めるアマガエルくんでしたが、アマガエルばあさんは
「はいはい。ほうほう」と、ニコニコ笑いながらアマガエルくんの話を
聞いてくれました。

「それでさ、そのあとに雪の話になったんだよ、夕べの」
アマガエルくんは、夕べ、アメンボくんも自分も偶然に、
ちらっと降った雪が見られたことを話しました。

「で、ここが本題だよ、ばあちゃん!」と、アマガエルくんは
身を乗りだして話し始めました。
「おいら、思ったんだ。カタツムリくんのやつは、きっと雪を見損ねたんじゃ
ないかってね。だから、仲間外れにされたような気分になって、
プンプンと怒って帰っちまったんじゃないかってさ!」

アマガエルくんの話を聞き終わったアマガエルばあさんが、
今度はアマガエルくんに尋ねました。
「カタツムリくんは、雪を見損ねたせいで、プンプンと怒って帰って
しまったと、おまえは思うのかい?
それで、おまえはこれからどうしようと思ってるんだい?」

アマガエルくんは黙り込んでしまいましたが、しばらくして口を開きました。
「おいら、あのときは、カタツムリくんが怒り出した理由なんて
全然考えてもみなかったんだ。ただ、急にプンプンされて、
すんごく感じが悪くてさ、おいらも頭にきちまったんだよ。
何だか、自分まで訳もないのに腹が立ってきちゃってさ。だけど…」
また少し、アマガエルくんの言葉が止まりました。

「だけど、それから、ずっとずっと考えて考えて、
いっぱいいっぱい頭を使って考えてさ、わかったんだ、カタツムリくんが
怒った理由が。
おいら、カタツムリくんがプンプンすねた理由がわかって思ったんだ。

『もし、自分がカタツムリくんと同じだったら、どうだったんだろう?』ってね。
やっぱり、カタツムリくんと同じに、きっとプンプンしちまうと思うんだよ、
おいらも。
自分だってきっと同じだったって思ったら、あんな風に怒っちまったこと、
悪かったなって、反省してる…。アメンボくんにも、悪いことしたなって…」

そう言うと、アマガエルくんはションボリと下を向いてしまいました。
優しくアマガエルくんの頭をなでながら、アマガエルばあさんがこんな話を
してくれました。
「池の脇の道をまーっすぐ行くと、小さな丘があるじゃろう?
あそこに、大きな桜の木があるのを知っているかい?」

「うん、知ってるよ。いつもカタツムリくんとアメンボくんと
三人でかけっこして遊んでる場所だよ」
アマガエルくんは元気よく顔を上げて答えました。

「あの木はね、おばあちゃんが子どものころから、
いや、おばあちゃんのおばあちゃんが子どものころから、
ずっとずっとあそこにあるんじゃよ。

あの桜の木には、こんな言い伝えがあってな……

-春先に降る雪は『寒い冬が終わりますよ。もうすぐ春が来ますよ』
という春の妖精からのお知らせだと言われておってな。
その冬の『最後の雪の最初の一粒』を一緒に、あの桜の木の下で
見た者同士はな、春が来てまた次の冬が来て、またその次の春が来て
桜の花が咲いて…、とな、なんど春が来て冬が来ても、
ずっとずっと仲良しでいられると言われているんじゃよ-

アマガエルばあさんがそう言うと、アマガエルくんの顔が
パーッと明るくなっていきました。
「ありがとう、ばあちゃん。それって、すんごくいい話だね!
きっと、今夜が今年最後の雪の最後のチャンスなんだよ。
おいら、ちょっと行って来る!」
そう言い終わるが早いか、アマガエルくんは、もうアマガエル
ばあさんの部屋から、自分の部屋へと走り去っていました。
「やれやれ…。本当に、落ち着きのない子だよ、まったく」
そう言いながら、アマガエルばあさんは、ドッコイショと揺りイスから
腰を上げると、出窓のそばへと歩いて行きました。
「降るといいねぇ、雪…」

外はシンシンと寒さを増し、夜の闇はどんどんとその濃さを
増していました。

いい案を思い付いたアマガエルくん。さて、これからどうするの
でしょう?

                 つづきは、また。。