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女性全般に言えるのかもしれないけど特に彼女はひとの弱みを探ったり指摘したりするのが好きで。
あなたの考えてることなんてお見通しよ
という彼女の自負はおそらくその母性本能から来ているのだろうとぼくは踏んでいる。
母乳の中に含まれてるある成分はさ、赤んぼうに授乳すると、その脳の中でモルヒネに似た物質を分泌させる作用があるんだって。もちろん副作用なしでね。鎮痛効果もあるらしくてさ・・・・・・赤んぼうはかなりハイな気分で眠ってるわけだ。
どうしてぼくが彼女の電話の相手を一々推理してほっとしたり緊張したりしなきゃならないんだよそういうのって中学高校生の感情じゃないかほんと進歩がないのだけど。
こんなふうに思うんだ世間には中途半端な履行が多すぎるって。
もちろんぼくもその一人さだからぼくがとても嫌いだ時々いやんなっちゃうんだよけいな知識よけいな情報よけいな感情よけいな物ありとあらゆる“よけい”の中にぼくはどっぷりと首まで浸かってもう手も足も出ないどれが大事なことなのかさっぱりわからない。
しかもまわりの連中ときたらそんな“よけい”をいくつ懐に入れてるかを現代人の勲章に見立ててえっへんどうだいと競い合ってる
分かっていてどうしようもないことがかなしいのは確かに道理だけど
分かっていてどうしようもないと分かっているなら話しても無駄なんじゃないかなとぼくは思ってしまうでも
彼女はその手の話をするのがすごく好きでいつもぼくを相手に告白しては
ああやっぱりどうしようもないのねと
確認してはカタルシスを味わったりするわけなんだ。
・・・・・・愛だよ。たぶん愛だと思う。
「別にあなたの意見を聞きたいとか、どうこうしてほしいとか、そういうつもりじゃなかったのよ。本当に」
「うん・・・・・・でも、そのう・・・・・・」
「ちょっと聞いてもらいたかっただけ。聞いてもらって“うん、でも仕方ないね”っていってほしかったの。それだけ」
あなたがね、私に守ってもらいたいことが三つあるって書いてたの。ひとつは“嘘をつかないこと”。それから“ぼく以外の人との約束を破らないこと”。最後のひとつは“誰かの痛みを知ってあげて、なおかつその傷に触れないこと”。これが三つの約束。思い出した?
“神は小さき所に宿る、という言葉があります”って。(中略)
“僕は神さまはあまり信じませんが、この場合の神は、愛に置き換えられるような気がします。ごく些細なこと・・・・・・例えば階段を下りる時に君の足元から目を逸らさずにいること。眠る前に方が出ないように毛布を掛け直してあげること。悲しそうな顔をしていたら理由は聞かずにそばにいてあげること。そんな所に、愛は宿っていると思えるのです・・・・・・・だからそんな所から、ぼくは君と始めたいと思います”
大丈夫。心配ないよ。みんなうまくいくよ。
「記憶力、いいのね」
「君に関しては特にね」
「気にならないって言ったら嘘になるかな。だって、もともと他人の気を引くためにするもんだろ?指輪って」
女は短く息で笑い、
「知らないのえ。指輪はね、色んな力を押さえるためにするものなのよ」
「力って?」
「例えば、結婚すると左手の薬指にするでしょ。あれはね、浮気心とか、嫉妬とかを押さえる働きがあるの」
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