経営法務研究室2023

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てんかんによる 交通事故における 損害賠償請求

2012-04-20 | その他
 

 交通事故判例速報(交通春秋社発行)NO547に、てんかん発作に関する事故と交通事故訴訟における責任の評価についてという記事があった。
 


 まず前提として、

 道路交通法90条1項1号ロでは「発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気であって政令で定めるもの」については、免許を与えず、又は6月を超えない範囲で免許の保留ができるとしており、てんかんは同法施行令33条の2の3、2項1号にて「病気」に含まれるものとされている。

 かつては、てんかんり患の事実があれば、運転免許の絶対的欠格事由とされたが、平成14年改正によって、意識障害や運動障害のおそれがないとの医師の診断書があれば、免許が与えられるとの運用となった。


 
 それでも、事故が生じているようである。


 

 てんかんでの交通事故の場合、えてして、発作がでているため、重大事故になりやすい。

 しかし、一般的に現行の不法行為法(民法)上は、「心神喪失」にあたれば、賠償責任が否定される。もっとも、「心神喪失の状態を招致するについての故意・過失」がある場合、賠償責任が肯定されることになる。

 要するに、てんかん発作によって心神喪失の場合には、原則賠償責任がなく、てんかん発作に陥ることについて落ち度(たとえば薬の飲み忘れ等)があれば例外的に賠償責任が生じうるという扱いである。


 なので、難しい問題ではあるが、社会的には、免許を与えることについて慎重になるというのも理解できる。




 なお、運転者が、自賠責法上の運行供用者にあたる場合は、自賠責法3条の責任には713条の適用はないので、賠償責任が生じる。わかりやすくいえば、自分の自動車を人に貸して、事故になれば、自分が運転していなくても、自動車の所有者であるがゆにえ、自賠責法上の責任を負うので、仮に借りた人がてんかん発作によって事故を起こした場合でも、自賠責法上は、責任を生じうるのである。



 また、経営者の場合、運転者の責任が使用者責任として会社の責任が生じたりすることもあるので、注意が必要である。業務としての運転であったら、会社の責任も生じうる。もっとも監督に落ち度がなければ責任を負わない場合がある。

 自賠責の責任や使用者責任、これらの免責要件は決して容易ではないので、事故にならないように、普段から気を付ける必要がある。




 

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