つらつら日暮らし

「三種安居」の話

新暦・旧暦の話も混じるので、色々と面倒くさいところではあるが、本来、今日4月15日は、結夏(夏安居の結制)であるとされるが、どうもそれは、中国の禅宗からの印象もある。

解夏の上堂。四月十五日に結び、七月十五日に解く。
    『密菴和尚語録』


この通りである。十五日から十五日まで、ということで、とても綺麗な日付となっているのだが、実際に律蔵を見てみると、ちょっと別様の話が見えてくる。

三種安居有り、前安居・中安居・後安居なり。
    『四分律』巻58「毘尼増一之二」


それで、上記の説明について見ていくと、先に挙げた禅宗で安居が行われた日付について、色々と思うところが出てくるのである。

仏言わく、「後安居を聴す。二種安居有り、前安居有り、後安居有り。若し前安居に在れば応に前三月に住すべし、若し後安居ならば応に後三月に住すべし」。
    『四分律』巻37「安居揵度」


・・・「中安居」が無い。また、ここでは「前三月」「後三月」という用語が出て来たので、それも見ておきたいと思ったが、とりあえず以下の文脈などはどうか。

 今但だ夏に就いて亦た三時有り。初め四月十六日なり、是れ前安居なり。十七日已去、五月十五日に至るを中安居と名づく。五月十六日、後安居と名づく。
 故に律中に三種安居有り。謂わく前中後なり。前安居は前三月に住し、後安居とは後三月に住す。中の三月は云わずと雖も、然るに文中、具に前後の日数を明かす。中間、弁ぜざるも、理に於いて自明なり。
    南山道宣『四分律刪繁補闕行事鈔』巻上「安居策修篇第十一」


結局、律蔵の註釈書も見たけれども、今一つ良くまとまった箇所が見付けられなかったので、中国の註釈書を見てしまうけれども、以上の通りである。道宣が指摘した通り、或いは上で見た通り、「中安居」について『四分律』では詳しく説かないが、前後の文脈から類推していくべきなのだろう。ただし、このことから、夏安居の開始日によって、前中後の「三種安居」を定めたとしているのである。

それから、気になっていたことについて、「前安居」であっても、開始日は「四月十六日」だったのである。これだと、禅宗が「四月十五日」とした理由が分からないが、律蔵に依ったのでは無く、別の理由があった印象もある。その1つとして、安居に入るための儀礼を見ていくと、上堂や小参を行っている。そして、上堂は、中国宋代、五参上堂であり十五日に行われていたし、或いは、十五日は祝聖日で、皇帝や国家のために法要を奉っていたが、安居自体を十五日に始めることで、安居自体を奉っていたのかもしれない。

その辺は、安居の結制に因んで行われた「念誦」の回向文などを見ていくと、奉っている印象があるので、とりあえずこんな理由で如何だろうか?

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