つらつら日暮らし

「晨朝六念法」の内容について(1)

以前、【「晨朝六念法」という作法】という記事を書いたのだが、その時には全体の作法を紹介したのみであった。詳細は、この記事で見ていきたいと思う。ところで、先の記事で允堪律師の言葉に「僧祇の文を出す」とあったものの、完全にスルーしてしまった。調べてみると、『摩訶僧祇律』に関連する文献で、「六念法」が出ていた。

  六念法
一には、当に日数を知るべし、月一日、二日、乃至十四日、十五日。月大、月小、悉く応に知るべし。
二には、清旦に当に施食法を作すべし、「今日食を得て某甲に施す、某甲、我、意を計らず、我れ当に食すべし」〈是の如く三説す〉。
三には、日日に自ら若干臘数を憶すべし。
四には、当に受持衣及び浄施者を憶念すべし。
五には、当に衆食の別ならざるを念ずべし。
六には、当に病・不病を念ずべし。
    『摩訶僧祇律大比丘戒本』


允堪律師が述べているのは、この項目のことであろう。細かな表現はともかく、先般紹介した記事の内容とも相即している。ただ漠然とでも「六念」で検索してみると、普通は阿含部経典にも出て来る「念仏・念法・念僧・念戒・念施・念天」なのだろうと思うのだが、ここでは全く違う「六念」となっている。

それで、今回はとにかく少しでも内容を学んでおきたいので、第一から順番に見ておきたい。その際、調べてみると南山道宣『四分律刪繁補闕行事鈔』巻上之三に「六念」への註釈が見られたので、それを探っておきたい。

 次に六念を授く〈僧祇に文出づ〉、
 第一念知日月、
 応に言うべし、今朝の白月一日、十五日に至る。以て純大なるが故に大小を云わず。若しくは黒月に大小有るが故に須らく之を両分すべし。今朝、黒月の大一日、十五日に至る。
 或いは云く、今の黒月の小一日、十四日に至る。此れを去りて布薩の遠近を識ると謂う。出家の日月法式、此の如し。若し律文に拠らば、俗人の為に問うて識知せしめよ。若しくは聚落に入るに、先に日月の数法を知るは、此の方土に準じて、黒白を論ぜざれ。若しくは俗人に答うるには、唯だ通相を得て、正月の小なれば今、是れ某日なり。此れ則ち道俗通知して允と為す。
    南山道宣『四分律刪繁補闕行事鈔』巻上之三


思ったより長いので、今回はこの一節のみとしておくが、まず「六念」自体を、『摩訶僧祇律』からの引用だとしつつも、全体は上記の通り組み立てられている。そこで、六念の第一は「日月を知る」ことなのだが、その意義は、太陰暦に対応することを主眼とした内容であることが分かる。例えば、現在の太陽暦の通り、一年は365(或いは366)日であり、1ヶ月は(2月を除いて)30日か31日であり、各年によって変化が無い。

ところが、太陰暦の場合は、月の満ち欠けを元に1ヶ月を設定するため、1年の長さは355日程度であり、更には1ヶ月も29日か30日となる。これが、小月・大月の違いとなるのだが、結局その1ヶ月の長さに基づいて、南山道宣がいうように、布薩の日付が変わるのである。ただし、暦というのは、地域によって制定方法が違うので、その辺は地域に従うべきだという。

結局、地域を変えると日付も変わり、いわゆる「月中行事」のやり方が変わるので、「六念の第一」として、それを知るように促しているのである。つまり、出家者として生活に必要な知識の体系を挙げたのが、この「六念」であった。

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