※踊子〜1957年(昭和32年):KIINA.2010年
https://m.youtube.com/watch?v=ZTeN2oTRsKo
「踊子」は川端康成の「伊豆の踊子」を題材として作られました。創唱者の三浦洸一さんはこの他にも「初恋〜『たけくらべ』より」など文学作品を題材にした楽曲を端正なバリトンで歌われています。
歌謡曲の中にはこうした小説や文学作品を題材にした、いわゆる"文芸歌謡"と呼ばれるジャンルがあるようです。
遡ってみれば、日本の歌謡曲の始まりとされる「カチューシャの唄」は1914年(大正3年)にトルストイの「復活」の舞台の劇中歌として松井須磨子さんが歌われた作品ですし、同じく松井さんが歌われた「ゴンドラの唄」(黒澤明監督の名作「生きる」で主人公がブランコを漕ぎなら歌いました)はツルゲーネフの「その前夜」の舞台化のために制作されました。
折しも大正デモクラシーの風潮の中でトルストイやツルゲーネフといったロシア文学が青年たちに愛読されたという時代背景もあったのでしょうね。
昭和に入ると、東海林太郎さんが「すみだ川」(永井荷風)や「高瀬舟」(森鴎外)を情緒たっぷりに歌われました。
戦後には「青い山脈」など石坂洋次郎さんの小説を題材にした曲が次々と作られましたが、この場合は小説を題材にしたというより映画の主題歌として作られた曲という色合いが強く、それよりは、私は石川さゆりさんの「風の盆恋歌」(高橋治)や「飢餓海峡」(水上勉)の方に、連綿と続いた"文芸歌謡"の系譜を感じます。その前、舟木一夫さんが島崎藤村の「初恋」をそのままメロディーに乗せて歌われたのも、やはりこの流れの中にあったように思います。
この流れは決して過去のものではなく、令和に入ってYOASOBIがSNSに投稿された小説を楽曲化するというプロジェクトで世界的なヒットを飛ばしていますが、これもまた"文芸歌謡"の新しい展開と言えるのではないでしょうか。
三浦洸一さんの「踊子」とYOASOBIの「夜に駆ける」が時代を超えて一本の糸で繋がっていると思うと、何だかどちらの曲にも親しみが湧いてきます(^O^☆♪
※踊子〜味わい尽くす♬207
https://blog.goo.ne.jp/tazutazu3232/e/b2b55bb3f7022a86f2903559ca8ebc80