〇 「インスタ映え」よりも、友人との気楽な交流を重視。
皆さんはInstagramにどんなイメージを持っているだろう。もしかすると、2017年新語・流行語大賞での年間大賞を受賞した「インスタ映え」の言葉通り、「映え」や「盛り」が重視されるSNSとしての印象をお持ちなのではないだろうか。
そのイメージは決して誤りではない。しかし、日本でも度々話題になる「SNS疲れ」などに対応するため、親しい人たちと交流することを目的とした機能を追加し始めている。ユーザーがただ注目を浴びたいというSNSではなくなってきている。
そういったユーザーたちの思いをくみ取るInstagramは現在も若者たちの支持を集める。その証左として、中学生の60.5%、高校生の80.4%、大学生の81.4%が利用しているSNSという調査結果がある(2022年10月)。すべての属性において、インフラとなっているLINEに次いでの2位だ。しかも、これほど普及しているにもかかわらず、15~24歳を対象にした調査では「今後(今よりも)はやりそうなSNS」の1位になっている(2023年10月)。
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メイン利用は24時間で消える「ストーリーズ」。
Instagramを大きく変えた機能の1つが「ストーリーズ」だ。ストーリーズとは、投稿から24時間経つと表示されなくなる機能だ。Instagramのホーム画面の上部に、ユーザーのプロフィル画像がアイコンとなって丸く表示されている。タップすると静止画や動画で作られた投稿が再生され、自動的に次のユーザーのストーリーズが表示される。「24時間で消える投稿に何の意味がある?」と考える人も多いが、残らないからこそ何気ない日常を気軽に投稿できる。再生時間が短いことも、「じっくり投稿を見られない」という利点になっている。
米Meta Platforms(メタ)によると、日本でInstagramを1日に1回以上利用するユーザーの70%がストーリーズを利用している(2018年10月)。正式な発表はそれ以降ないのだが、現在はもっと多くのユーザーがストーリーズを利用していると考えられる。
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Instagramのヘビーユーザーである若者については、顕著な結果が出ている。マイナビが13~22歳のマイナビティーンズ会員に行った調査によると、Instagramの使い方は「ストーリーズの投稿」と「ストーリーズの閲覧」が79.0%で同率1位となっており、通常の投稿(フィード)を見る「タイムラインの閲覧」を20ポイントほど引き離している。
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ストーリーズには、公開範囲を限定する「親しい友達」という機能もある。下の画像で緑色の枠に囲まれているストーリーズは、「親しい友達」リストに入っている人にしか見えない投稿だ。フィードへの投稿には公開範囲を限定する機能はなかった(現在は一部ユーザーでテスト中)ため、親しい友人にだけ見せたい画像や動画はストーリーズに投稿する。
「親しい友達」に入っていると、見る側は「相手は私を親友と思っている」ことがわかる。うれしい面もあるが、リアルでの会話などで「あの子はよく『親しい』に投稿してるよね」「私は見てないよ。リストに入れてもらえていないんだね」というように、友人の心の内が推測できてがっかりすることもある。
そもそも、若者はInstagramを複数のアカウントで利用している。公式ともいえるメインのアカウント以外に、親しい友人とだけつながるサブアカウント、趣味用アカウントなどを取得し、投稿の内容によって切り替える。サブアカウントは一部の人にしか教えない。つまり、自分の情報を見せる相手をアカウントや公開範囲でコントロールしている。
「インフルエンサーになりたいのでは」「自撮りでバズりたいのでは」と推測している大人もいるだろう。しかし、SNSで人気者になりたい若者はごく一部で、自分のリアルな友人とネット越しでもうまく付き合うために利用しているのだ。
見に来てくれるプロフィル画面を重視。
若者がInstagramを使うとき、プロフィル画面を重視することも近年の特徴だろう。
プロフィル画面には、自分が過去に投稿したストーリーズをアーカイブして表示できる。「学園祭」「友達」などに分けて、見せたいストーリーズだけを置いておくのだ。
フィードへの投稿はすべて自分のプロフィル画面に残される仕様だが、若者はここにも厳選した投稿だけを載せたい。一度投稿したものの、残すほどではないと感じた投稿は削除するか、アーカイブしてしまう。投稿がフォロワーのフィードに流れることを嫌い、投稿後すぐアーカイブしてしまい、あとでプロフィル画面に出す人もいる。
こうしたしぐさは、「自分を知りたい人と思った人にだけ見てもらえればいい」という心理から来る。フィードは一度見た投稿が何度も表示されることがあるので、「ウザい」と思われたくない。わざわざプロフィル画面に訪れる人に見せるなら、相手の負担にはならないと考えている。
同様のコンセプトを打ち出しているSNSは他にも存在する。2020年にリリースされ、昨年あたりから国内でも注目されているSNS「BeReal(ビリール)」もその1つだ。人々の心をつかもうと、多くの企業が動いているのだ。
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親しい人たちとだけ気軽に交流すれば、SNSで疲れることもない。「SNS疲れ」を感じている大人がいたら、こうした若者のInstagram利用法を参考に使い方を変えてみてもいいだろう。