〇 フリマアプリの「メルカリ」がオークション機能を導入、利用者の不満解消が目的か !
メルカリがフリマアプリ「メルカリ」に「オークション機能」を導入すると発表し話題となった。というのも、メルカリはオークションの仕組みをあえて導入しなかったことで大きな成功を収めたからだ。なぜ導入するに至ったのか。背景には、メルカリの利用者が長年抱えていた不満があるようだ。
「フリマ」であることがメルカリの成功要因
個人が中古品などを売買するオンラインの2次流通プラットフォームとして、国内で代表的な存在となっているメルカリ。その人気を支えたのは、スマホを主体にしながらフリーマーケットの仕組みを取り入れたサービスである。
メルカリ以前の2次流通プラットフォームといえば、LINEヤフーの「Yahoo!オークション」に代表されるオークションが主流だった。オークションは、購入したい人がより高い金額を入札して商品を落札する仕組みである。出品者から見ると入札が終了して商品を売るまでに時間はかかるものの、より高く販売できる可能性がある点が魅力となっていた。
だがスマホ時代になるとインターネットの利用者層が拡大し、とりわけ女性の利用者が大きく増えた。利用者の変化により、多くのインターネットサービスが影響を受けた。2次流通プラットフォームもその1つである。
女性は2次流通プラットフォームで洋服を出品することが多く、高く販売するより早く処分したいというニーズのほうが高いといわれている。そのため、落札に時間がかかるオークションがマッチしなかったと見られる。
そこで台頭したのが、メルカリに代表されるフリマアプリだ。スマホで出品できる上、フリーマーケットと同様に出品者が付けた価格ですぐに販売できる。このことが女性などの支持を獲得し、利用者を増やしていった経緯がある。
そうしたフリマアプリの人気を受け、LINEヤフーはYahoo!オークションの一部にフリマアプリに類する仕組みを導入したり、「Yahoo!フリマ」を提供したりしている。その結果、国内のC2Cプラットフォームはフリマアプリが主流となった。
だが、そのフリマアプリを長年主導してきたメルカリが2025年1月29日、オークション機能を導入するという方針転換を打ち出した。
なお全ての出品がオークション機能に置き換わるわけではない。従来通り価格を設定して出品することも可能だという。
オークション機能の布石となった「価格なし出品」。
メルカリが今回導入するオークション機能は、出品者が商品を一定期間オークションにかけ、最高入札者を提示した購入者に商品を販売する仕組みとされている。オークションを採用した一般的なサービスと内容は大きく変わらない。
ただ、落札までの期間は異なる。一般的なオークションサービスでは、落札まで数日間の期間が設けられる。一方、メルカリでは最初に入札があった日の翌日午後8時台までに落札されるため、入札可能な時間はかなり短い印象を受ける。
これは先にも触れたように、落札されるまでに時間がかかるのがオークションの弱点とメルカリが捉えているからだろう。素早く売れるフリマアプリの利点も取り入れた結果、今回のような仕組みになったのではないだろうか。
話題となった今回のオークション機能だが、実はオークションに近い仕組みである「価格なし出品」を、メルカリは2024年5月から提供している。これは、出品者が価格を決めずに出品した後、購入したい人が価格を提案し、それに出品者が納得すればその価格が付くという仕組みだ。
価格なし出品では、価格を提示した人でなくても購入できる。もし価格を提示した人しか購入できないようにすればオークションと同じになる。そういった声はサービス発表当時から多く上がっていた。それ故、価格なし出品は今回のオークション機能に向けた布石と見ることもできそうだ。
値下げ交渉をしたくない出品者を救う。
冒頭で書いたように、メルカリはオークションを採用しなかったことで成長してきた経緯がある。このタイミングでオークション機能の導入を打ち出したのはなぜだろうか。
メルカリはその理由として、価格なし出品がいくつかの課題を抱えていたことを挙げている。具体的には出品者と購入者とのマッチングに時間がかかること、出品者から「いつ売れるか分からない」「提案がきても納得する価格ではなかった」といった声が上がっていたこと、そして価格を提案することを負担に感じていた購入者が多かったことなどだ。
価格なし出品の課題とオークション機能を導入した経緯を考えると、メルカリが今になってオークション機能を導入した真の理由が見えてくる。
それはフリマアプリの大きな課題の1つとされてきたコミュニケーションの問題だ。フリマアプリは「フリマ」であるだけに、コミュニケーションによって価格を交渉することが多い。しかしこれを負担に感じる人は多く、中にはトラブルに発展するケースもあるようだ。
しかも価格交渉で求められるのはほぼ値下げなので、出品者にしてみれば大きな不満要素となっていたことは間違いない。「メルカリに出品したいが価格交渉はしたくない」という声は以前から多かったという。その課題に対応するべくメルカリが打ち出した施策が、入札によって価格が上がるオークション機能だったのではないだろうか。
メルカリは既にMAU(月当たりのアクティブユーザー数)が2000万を超えており、利用者を増やすのが難しくなっている。加えて2024年11月ごろには、返品された商品がすり替えられる詐欺行為への対応を巡って強い批判を受け、利用者離れの動きが見られた。その結果、2024年10~11月期にはMAUが前年同期比で減少に転じるなど成長に陰りが出てきており、利用者の拡大が急務となっている。
このためオークション機能の導入は、ある意味でメルカリがこれ以上利用者を増やす上では、避けては通れなかったといえるだろう。オークション機能の導入によって、手軽さとスピードがメリットであるメルカリのサービスが大きく変わるとは考えにくい。しかし利用者がオークション機能を選ぶ割合が増えるようであれば、メルカリのサービス全体に影響を及ぼす可能性があるだろう。