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スマホ決済がふるさと納税と連携、「PayPay商品券」が求められる理由とは。

〇 スマートフォン決済「PayPay」を提供するPayPay社は2022年11月16日、ふるさと納税ポータルサイト「さとふる」を運営するさとふる社と「PayPay商品券」を提供すると発表した。これは特定の自治体の店舗で、PayPayで決済する際に利用できる商品券をふるさと納税で手に入れられる施策である。ふるさと納税とスマートフォン決済を連携させる理由はどこにあるのだろうか。

寄付の返礼品にPayPayで使える商品券を提供。

自分の選んだ自治体に寄付することで、一定額が所得税と住民税から控除される「ふるさと納税」。最近はふるさと納税で得られる返礼品が人気となっており、年末が近づいた今はとりわけ、ふるさと納税が活況を呈するシーズンでもある。

しかも最近ではふるさと納税人気の高まりから、返礼品などをWebやアプリで手軽に検索、購入できるポータルサイトも増えており、その1つがソフトバンク系のさとふる社が運営する「さとふる」である。そしてそのさとふる社が2022年11月16日、同じソフトバンク系のスマートフォン決済サービス「PayPay」を提供するPayPay社と打ち出したのが、「PayPay商品券」という新しいサービスだ。

さとふる社とPayPay社が新たに提供すると発表した「PayPay商品券」。ふるさと納税の返礼品として、PayPayで使える自治体限定の商品券を提供するサービスとなる。写真は2022年11月16日に実施された「さとふる × PayPay 新サービスに関する発表会」より(筆者撮影)
画1、さとふる社とPayPay社が新たに提供すると発表した「PayPay商品券」。ふるさと納税の返礼品として、PayPayで使える自治体限定の商品券を提供するサービスとなる。写真は2022年11月16日に実施された「さとふる × PayPay 新サービスに関する発表会」より。

PayPay商品券は、対象となる自治体の指定の店舗や施設などで利用可能で、さとふる上で入手できる。その最大の特徴は名前の通り、PayPayによる決済で利用できることだろう。

ふるさと納税でも寄付先の自治体で使えるチケットが販売されているケースは多くあるが、対象が特定の店舗や施設に限定されているものが少なくない。だがPayPay商品券であればPayPayの決済に対応している自治体指定の店舗であれば、どこでも利用できるというのが大きなポイントだ。

そしてもう1つ大きなポイントとなるのは、現地を訪れてから寄付してPayPay商品券を入手し、その場で利用できることだ。紙のチケットなら送付されるまで利用できないので現地を訪れる前に寄付をする必要があるし、届くまでに予定や気分が変わってしまい利用しなくなる可能性もある。

だがPayPay商品券はデジタルであるため、さとふるで寄付した後すぐ入手できる。それゆえ対象の自治体を訪れているときにPayPay商品券を手に入れ、現地での買い物に使える。利用できるのは寄付から180日までという制限があるが、寄付額は1000円から50万円まで選択でき、そのうち3割をPayPay商品券として利用できることから、現地で使用するのに必要な分だけを手に入れることが可能だ。

PayPay商品券の入手フロー。「さとふる」で寄付をしてPayPayのアカウントと連携することにより、いつでも商品券を入手できるようになる。写真は2022年11月16日に実施された「さとふる × PayPay 新サービスに関する発表会」より(筆者撮影)
画2、PayPay商品券の入手フロー。「さとふる」で寄付をしてPayPayのアカウントと連携することにより、いつでも商品券を入手できるようになる。写真は2022年11月16日に実施された「さとふる × PayPay 新サービスに関する発表会」より。

「モノ」に弱いが「コト」に強い自治体に大きなメリット。

両社の説明によると、PayPay商品券は利用者だけでなく、導入する自治体の側にもいくつかのメリットがあるという。1つは先に触れた通りPayPayを導入しており、なおかつ自治体が指定した店舗や施設であれば利用できるので、幅広い店舗や施設で利用してもらえることだ。

PayPay商品券はPayPay導入店舗のうち、地場産品などを扱う自治体指定の店舗で利用できる。対象店舗には専用のステッカーが配布されるという。写真は2022年11月16日に実施された「さとふる × PayPay 新サービスに関する発表会」より(筆者撮影)
画3、PayPay商品券はPayPay導入店舗のうち、地場産品などを扱う自治体指定の店舗で利用できる。対象店舗には専用のステッカーが配布されるという。写真は2022年11月16日に実施された「さとふる × PayPay 新サービスに関する発表会」より。

もう1つ大きなメリットとなるのは、チケットの発送や処理に手間をかける必要がなくなることだ。PayPay商品券の発行も決済も全て、さとふるとPayPayという既存のプラットフォームの中で完結するためアナログ的な作業は必要ない。既にPayPayを導入してさえいれば多くの店舗が追加負担なく利用を開始できるというのは、自治体や店舗にとって大きなメリットとなるのは確かだろう。

こうした特徴を持つPayPay商品券の導入によって期待されるのは、導入自治体の地域活性化に直接寄与できることだという。従来のふるさと納税は、寄付をすると各地域の特産品がお得に手に入る点に注目が集まった。だが一方でふるさと納税をした自治体に直接人が訪れ、その魅力を体験する「コト消費」にはあまりつながっておらず、モノによる自治体間の返礼品合戦となっていた側面は否めない。

こうした状況に陥ったのは、従来のふるさと納税ではコト消費につながる返礼品に様々な弱点があったからこそともいえる。そこでPayPay商品券は広く普及したスマートフォン決済を活用し、それら弱点の多くをクリアして地域を直接訪問する人にメリットを与え、観光客などを呼び込んでコト消費につなげることが期待されているわけだ。

とりわけ魅力的な観光地などを持つ一方、高級な生鮮食品など目を引きやすい特産品がなく、モノの返礼品に弱さがある自治体などは、ふるさと納税で不利な状況にあったといえる。しかもそうした自治体はこれまで、新型コロナウイルスの感染拡大による行動制限で大きなダメージを受けてきただけに、コト消費に強いPayPay商品券のメリットは大きく働くだろう。

多くの観光名所を持つ栃木県日光市は、PayPay商品券の導入を決めた自治体の1つ。これまで観光で利用できる返礼品が少なかったことから導入に至ったという。写真は2022年11月16日に実施された「さとふる × PayPay 新サービスに関する発表会」より(筆者撮影)
画5、多くの観光名所を持つ栃木県日光市は、PayPay商品券の導入を決めた自治体の1つ。これまで観光で利用できる返礼品が少なかったことから導入に至ったという。写真は2022年11月16日に実施された「さとふる × PayPay 新サービスに関する発表会」より。

プラットフォームとしてのPayPayの活用がより重要に

 PayPay商品券は2022年11月29日から提供を開始するとしており、2022年内の導入自治体は約30、利用可能な店舗・施設数は8000以上を予定しているとのこと。さとふる社の代表取締役社長である藤井宏明氏によると、PayPay商品券の導入に向け多くの自治体に声掛けをしているが、現在のところ断られるケースは「ゼロ」だという。サービス内容にかなりの自信を示している様子だ。

2022年内にPayPay商品券を導入する自治体はおよそ30に上るという。自治体の反応も良好なことから導入自治体は今後も一層拡大すると見ているようだ。写真は2022年11月16日に実施された「さとふる × PayPay 新サービスに関する発表会」より(筆者撮影)
画6、2022年内にPayPay商品券を導入する自治体はおよそ30に上るという。自治体の反応も良好なことから導入自治体は今後も一層拡大すると見ているようだ。写真は2022年11月16日に実施された「さとふる × PayPay 新サービスに関する発表会」より。

ただ実は、スマートフォンによる決済とふるさと納税を連携させたサービスを提供しているのは2社だけに限らない。同種のサービスとしては既に、「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクが提供する「チョイスPay」などが先行しており、多くの自治体に導入されている。

もちろんPayPay商品券は、PayPayという基盤をそのまま活用できる強みを持っていることから、競合に対し一定の優位性を持つことは確かだろう。ただそれでも、今後他のスマートフォン決済事業者が同様の取り組みを推し進める可能性もないとはいえず、それによって競争が急速に激しくなることは懸念されるところだ。

QRコードを活用したスマートフォン決済も、激しいポイント還元合戦から紆余曲折(うよきょくせつ)を経て、現在では幅広く定着しプラットフォームとして大きな存在となりつつある。一方で競争環境が厳しい上に決済手数料に対する抵抗感もあって、決済サービス単体では収益化が難しいとされているだけに、PayPay商品券のようにプラットフォームとしての特性を生かしてビジネスを広げる動きは今後も増えるものと考えられる。

しかもソフトバンクは子会社化したPayPay社の上場を目指すとしており、最近は上場に向けた取り組みが大きな関心を呼んでいる状況だ。それを見据える上でも、プラットフォームとしてPayPayをどう活用していくかが重要な意味を持つのではないかと筆者は感じている。


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