〇 ノートパソコンやディスプレイ単体製品など、表示装置を搭載した機器を選ぶときに役立つ重要用語を解説していこう。
画面サイズは表示範囲の対角線の長さ。
ノートパソコンやディスプレイ製品は、多くのメーカーが「15.6型」や「24インチ」といった画面サイズで製品を分類していることが多い。画面サイズとは、画面を表示できる範囲の対角線の長さをインチで表記したものだ。1インチは約2.54センチなので、15.6型なら対角線の長さは約40センチ、24インチなら対角線の長さは約61センチである。
対角線の長さだけでは通常、縦と横の長さは正確に分からない。横と縦の比が4:3なら正方形を少し横に引っ張ったような形になり、16:9ならいわゆる横長のワイド画面になる。ところが、ノートパソコンやディスプレイ製品では横と縦の比が16:9の製品が多く、一部16:10といった異なる製品があるだけだ。16:9で画面サイズが24インチなら、画面の幅は約53センチ、高さは約30センチと決まる。
しかし、ノートパソコンのように運びやすさも製品選びに影響を与える場合、画面サイズだけでは大きさを判断できない。同じ「15.6型パソコン」でも、製品によって本体サイズがかなり異なる。運びやすさを考えるときは、外形寸法や重さを確認する。
画面の大きさが同じでも画面解像度で見え方が変わる
ディスプレイ性能の中で、画面のきめ細かさを示すのが画面解像度だ。画面解像度は、画面上にあるドットの数量を示す。この数値が多いほど画面を構成するドットの数が多くなるため、写真や文字などがより鮮明に描画できる。
画面解像度は1920×1080ドット、3840×2160ドットなど「横のドット数×縦のドット数」で表記する。画面解像度は720pや1080p、2K、4K、8Kといった単語で表すこともある。720pや1080pは画面比率が16:9のときの縦のドット数で、720pは1280×720ドット、1080pは1920×1080ドットを意味する。「p」は「プログレッシブ」を表す。インターレスを示す「i」もある。プログレッシブは走査線を上から順番に隙間なく描画するのに対し、インターレスは1行おきに交互に入れ替えて描画するため、画面のちらつきが発生しやすい。
ノートパソコンやディスプレイ製品では、1920×1080ドットや3840×2160ドットなど、16:9の画面比率が主流だ。ただ、1920×1200ドットや3840×2400ドットといった16:10の製品もある。少しでも縦の解像度が大きいほうがよい場合は、16:10の製品を選ぶとよい。
2Kや4K、8Kも画面解像度を示す単語で、2Kは横幅が2000ドット程度、4Kは4000ドット程度、8Kは8000ドット程度を示す。画面比率が16:9なら2Kは1920×1080ドット、4Kは3840×2160ドット、8Kは7680×4320ドットであることが多いが、メーカーや製品によって解像度が異なる場合もある。
画質にこだわるならパネルの種類を確認。
ほとんどのノートパソコンやディスプレイ製品では、液晶パネルを採用している。液晶分子を使ったパネルで、液晶分子の制御方法の違いから大まかにTN方式、VA方式、IPS方式の3種類に分けられる。それぞれの方式の特性を知っていると、製品をより選びやすくなる。
TN方式は応答速度が高速で、ちらつきや残像が出にくい。スポーツやゲームのような動きの激しい映像を映す用途に向く。特にゲーミングディスプレイはこの方式を採用する製品が多い。また、3種類の方式の中で最も安価なので、低価格帯製品に採用される。ただし、この3種類の中では色の再現範囲(色を表現できる範囲)が狭いといわれている。また、視野角(画面に対して角度を付けて見たときにコントラストを保てる範囲)も狭いため、斜めから見ると画面が暗くなったり色が変わったりする。
VA方式はTN方式よりコントラストが高く色の再現範囲が広い。また、視野角も広い。応答速度もTN方式と同じか若干劣る程度で速い。TN方式より高価だが、IPS方式よりは安価。動きの速いコンテンツを視聴しつつ、発色や視野角を求める人には向いている。
IPS方式は、この中で最も色の再現範囲が広く、視野角も広い。写真編集やデザイン用途など、発色を重視した作業に向く。ただし、この3方式の中で応答速度は遅く、最も高価だ。一部の製品で採用されるADS方式は、仕組みも特徴もIPS方式に近い。
液晶パネルではなく、有機ELパネルを採用するパソコンも一部にはある。背面から光源(バックライト)を使って照らす液晶パネルと違い、有機ELパネルは有機EL素子自体が発光するため、視野角が広く、消費電力が少ない利点を持つ。またバックライトの光を液晶分子でさえぎって黒色を表現する液晶パネルより、発光をオフにして黒を表現する有機ELパネルのほうがコントラストが付いたメリハリのある描画をしやすい。もし、画面の色味を重視するのであれば、有機ELパネルを採用したパソコンを検討する価値はあるだろう。
画面の滑らかさを重視するなら高リフレッシュレート。
ディスプレイ製品には、高リフレッシュレートを売りにした製品がある。リフレッシュレートは、1秒間に画面を何回書き換えるかを示す。リフレッシュレートが高いと、画面の書き換える速度がより高速になり、その分画面を滑らかに表示できる。
リフレッシュレートは、Hz(ヘルツ)という単位で表し、パソコンの場合は通常は60Hzが主流だ。60Hzの場合、1秒間に60回画面を書き換えることを示す。ゲーミングディスプレイなどは、その倍以上の120Hzや144Hz、240Hzなどといった高リフレッシュレートに対応しており、数値が大きいほど画面の書き換えが速い。その分ゲーム画面描画が滑らかになる。また、一般的な画面のスクロール速度やマウスカーソルの動きなども、高リフレッシュレートのディスプレイだとかなり滑らかになる。ただし、ゲーム以外だと利点はその程度だ。高リフレッシュレートのディスプレイはあくまでゲーム向けと思っておいた方が良いだろう。
Windows 10以降はHDR(ハイダイナミックレンジ)の描画に対応する。通常のSDRよりも明るさの幅が広がり、より表現が増す描画機能だ。例えば、SDRでは黒で塗りつぶされてしまっていた暗部の表現や、明るく白く塗りつぶされてしまった明部の表現が、HDRだとより鮮明に描画される。臨場感が増し、動画再生やゲームといったコンテンツに効果を発揮する。そのHDRを利用するには、HDRに対応したディスプレイが必須。もし、動画再生やゲームを重視するならHDR対応ディスプレイも考慮したい。
HDMI端子の仕様に合わせてケーブルを選ぶ
ディスプレイのHDMI端子の仕様やHDMIケーブルのパッケージを見ると、「スタンダード」「ハイスピード」「プレミアムハイスピード」「ウルトラハイスピード」などと記載されている。これはHDMIのバージョンを表す。HDMIはそのバージョンによって利用できる機能が異なるため、ケーブルを買うときはバージョンを必ず確認したい。
HDMIケーブルは、ハイスピードことバージョン1.4が多い。1.4以降であれば、フルHDはもちろんのこと、4Kも30フレーム以下であれば対応するため、通常利用であれば、バージョン1.4のケーブルで問題ないだろう。
4K(60フレーム)や8K(30フレーム)といった映像を映すには、それらに対応したプレミアムハイスピードことバージョン2.0以上のHDMIケーブルが必要になる。また8K(60フレーム)や、4K(120フレーム)などの転送速度が必要となる機器の場合は、ウルトラハイスピードことバージョン2.1以上が必要になる。HDMIケーブルには互換性があるため、ウルトラハイスピードのケーブルを買っておけばトラブルは避けられる。ただし、ウルトラハイスピードのHDMIケーブルは高価なので、用途に応じてハイスピードのHDMIケーブルを選ぶのはありだろう。
名称(バージョン) | 転送速度 | 主な対応解像度 |
---|---|---|
ウルトラハイスピード(HDMI 2.1) | 48Gbps | 8K(60フレーム)、4K(240フレーム)以下 |
プレミアムハイスピード(HDMI 2.0) | 18Gbps | 8K(30フレーム)、4K(60フレーム)以下 |
ハイスピード(HDMI 1.4) | 10.2Gbps | 4K(30フレーム)、1440p(2560×1440ドット)以下 |
スタンダード(HDMI 1.2以下) | 4.95Gbps | 1080i(1920×1080ドット)、720p(1280×720ドット)以下 |