○ どのくらい簡単かPixelで試してみた。
画1、写真:伊藤朝輝、以下同じ。
最近、筆者がYouTubeを見ていると、米Google(グーグル)のスマートフォン「Pixel」はケーブルでiPhoneと接続するだけでデータを移行できるというCMがよく流れる。筆者が持っている「Pixel 3a」も対応していたので、普段使っているiPhoneからのデータ移行を試してみた。
移行方法と、どの程度使えるようになるかを見ていこう。
移行用のアプリは不要。
Googleのサポートページを確認すると、移行元のiPhoneは「iMessage」と「FaceTime」をオフにするようにと書かれている。
iMessageは電話番号での送信も可能なため、そのひも付けをあらかじめ解除しておかないと、Androidスマートフォンに移行した際にSMSが受けられなくなってしまう。このトラブルへの配慮と思われる。なお移行完了後でも移行元のiPhoneが残っていれば解除可能だ。
データ移行中にiPhoneがロック状態になると移行がストップする。完了までには時間がかるので、自動ロックの設定はオフにしておいたほうがよいだろう。
画2、移行元iPhoneの「設定」→「iMessage」とタップして表示された画面で「iMessage」をオフする。同様に「設定」→「FaceTime」画面で「FaceTime」をオフにしておこう。(赤い枠は筆者が付けた)
画3、データ移行中にiPhoneがロックすると移行がストップするので、自動ロックの設定はオフにしておこう。(赤い枠は筆者が付けた)
PixelとiPhoneは接続しない状態から始める。Pixelを初期化し、初回電源投入時に表示される「Pixelへようこそ」を進めていくと「アプリとデータのコピー」画面が表示される。ここで「コピーしない」と「次へ」を選択できるが、iPhoneやほかのスマートフォンからデータを移行する場合は「次へ」をタップする。
続いて「以前に使用していたデバイスをご用意ください」と表示されるので、PixelとiPhoneをケーブルで接続。Pixel 3aはUSB Type-C端子なので、最近のiPhoneに付属している「USB-C - Lightningケーブル」があれば直接接続できる。以前のiPhoneに付属していたUSB Type-Aのケーブルを用いる場合は変換アダプターが必要だ。
ケーブルで接続するとPixel側は「他のデバイスをご確認ください」と表示され、iPhone側に「このコンピュータを信頼しますか?」とのダイアログが表示される。「信頼」をタップしよう。
画4、Pixelの初回電源投入時に起動する「Pixelへようこそ」を進め、「以前に使用していたデバイスをご用意ください」画面が表示されたら、PixelとiPhoneをケーブルで接続する。
画5、iPhone側の「このコンピュータを信頼しますか」ダイアログで「信頼」をタップする。
続いてGoogleへのログイン画面になる。ここではiPhoneのGoogle系アプリで使っている「Googleアカウント」でログインした。Googleアカウントを持っていない場合はここで取得するとよいだろう。ログインが完了すると「コピーの準備をしています」という画面になり、完了までの予測時間が表示される。筆者の場合は「あと1時間38分ほどです」となった。
画6、Googleへのログインが済むとコピーの準備となり、完了まで「1時間38分ほど」と表示された。
しばらくすると「お使いのiPhoneは暗号化されています」と表示され、「iTunesバックアップ」のパスワードを求められた。iTunesバックアップとはパソコンの「iTunes」アプリを用いたバックアップのこと。筆者はiTunesバックアップを使ったことがあるので、その際のパスワードを入力し先に進めた。
「アプリ、SMSメッセージ、連絡先を転送するにはiTunesバックアップパスワードを入力してください」とあるが、一度もiTunesでバックアップしたことがない場合はどうなるのかが気になる。
画6、暗号化されたコンテンツを転送する場合は、iTunesバックアップパスワードを入力する。
コピーの準備を始めてから30分ほどすると「コピーする項目の選択」画面となり、iPhone側から転送するデータを選択する。iPhoneにインストールされているサードパーティー製アプリでも、「Google Play」にあるものは自動的にインストールしてくれるようである。これには感心した。インストールするアプリの選択も可能だ。
この時点で完了までの時間が「1時間41分」となり、約30分前に表示された時間よりも延びた。ただし、そこからは意外と正確で、約1時間40分で転送は完了。コピー準備からは約2時間10分かかった。
画7、iPhoneからPixelに転送する項目を選択。iPhoneにインストールされているアプリも同じものがあれば「Google Play」からインストールできる。
画8、転送準備で約30分、転送開始してから完了まで約1時間40分。合わせて約2時間10分かかった。
iPhoneはすぐに使えるようになる?
iPhone標準の「連絡先」のデータは、Androidの「連絡帳」に丸ごと転送されていた。iPhone上で人ごとにつけたアイコンも引き継がれているのが面白い。ただしiPhone上で分けたグループは引き継がれていなかった。グループはiCloudと連携した際の機能なので、対象にならないものと思われる。
写真データはiPhoneのストレージ内にあるものだけが転送されていた。iPhoneで撮影した写真をiCloudに保管する「iCloud写真」を使っている場合、クラウド上にある写真は転送されない。
一般的に最近撮影した写真はiPhone側に残っている場合が多い。「iCloud写真」から「Googleフォト」に転送するサービスをアップルが提供している。iCloud写真から全ての写真を移行する場合に利用するとよいだろう。
iPhoneの「メッセージ」アプリの履歴は「チャット」アプリに引き継がれていた。iMessageを使用していた相手とは、Pixel上ではSMSまたはMMSでのやりとりを試みるが、送受信ができなくなる場合がある。
画9、iPhoneの連絡先は、丸ごと「連絡帳」アプリに転送されていた。iPhoneでつけたアイコンも反映される。
画10、iPhoneの写真データは「フォト」アプリに転送。
iPhone上のアプリの多くは、Google Playからインストールされたが、今回の筆者の端末ではインストールされていないアプリもあった。アプリに設定されていたアカウントとパスワードは引き継がれず、自分で入力しなければならなかった。インストールされているだけでも手間は省けるが、数が少ない場合は後から自分でインストールしても大した手間にはならないだろう。
画11、iPhoneにインストールされていたアプリは、転送完了後にGoogle Playから自動的にダウンロード。
Pixelのデータ移行機能で、iPhoneの標準アプリのデータがある程度移行できることが分かった。iPhoneでGoogle系のアプリを使っていなくても、Pixel側で適切なGoogleのサービスに移行されるため、スムーズに使い始められる。
個人的に困ると感じたのは、iPhone標準のパスワード管理機能「キーチェーン」に覚えさせているアカウントとパスワードは引き継がれない点。対策としてはパスワード管理アプリに移行するか、「Chrome」アプリのパスワードマネージャーへ移行する方法が考えられる。手元にiPhoneをしばらく残しておけるようなら、サービスを利用するたびに確認して手入力するのもよいだろう。
また「Appleでサインイン」は、アカウントとパスワードを自分で設定することなくWebサービスを利用できる機能だが、現時点ではAndroid端末には提供されていない。あらかじめメールアドレスを登録するなどして、通常のログイン方法に移行しておくとスムーズだ。
AndroidスマートフォンからiPhoneへの移行は、アップルが提供する「iOSに移行」アプリがAndroid側に必要だが、iPhoneからPixelへの移行はアプリを必要としない点は手軽だ。またクラウドなどを使わずに写真を移行できる点は、iPhoneからPixelへの乗り換えを考えているユーザーにうれしい機能かもしれない。