◯ 広島銀行がスマホアプリを行員自ら内製、ベンダー依存を脱しスピード開発へ。
広島銀行はスマートフォン用アプリ「ひろぎんアプリ」の新機能を内製した。経営層の「行内の開発体制を強化する」という期待に応えた。行員自ら開発スキルを身に付け、リリース後も使い勝手を高め続けている。
2024年4月までにアプリのUI(ユーザーインターフェース)の修正や細かな機能追加など4度のアップデートを実施し、ベンダーに依存しない開発体制でアプリ続けている――。
広島銀行は2023年11月、スマートフォン用ネットバンキングアプリ「ひろぎんアプリ」に、新たに確定拠出年金(401k/iDeCo)機能を実装した。これにより、ユーザーは同アプリ内で自身の確定拠出年金の資産評価額を累計や運用商品別に照会したり、月額掛け金を確認したりできるようになった。顧客から「『アプリがさらに便利になった』と好評を得ている」(ひろぎんアプリ開発のプロジェクトマネジメントを務める広島銀行のIT統括部システム統括室担当課長代理の住田大樹氏)。
注目すべきは同機能を全て、広島銀行の行員が自ら内製で開発した点だ。若手を中心とした新設の内製開発チームがアプリ開発に取り組み、新機能の実装を全てやり遂げた。
2021年頃からシステム内製へ。
広島銀行は2021年頃からシステム開発の内製に力を注いできた。以前は開発を全てITベンダーに依存する状態で、「2020年度に経営層に示したIT施策が、2021年度になってようやくできるようなスピード感だった」と住田氏は話す。この状況に危機感を抱いた同行経営層は「デジタル施策のスピードを高めるため、行内の開発体制を強化する」方針を示した。
広島銀行は2022年4月に、同行の情報システム部門に相当する「IT統括部」内にクラウド化や内製化を進める組織「C-BIZラボ」を立ち上げた。同組織は既にローコード開発ツールを使ってクレジットカード申し込み管理システムを内製するなど成果を上げている。
中でも広島銀行が内製化すべき対象として特に意識していたのが、ひろぎんアプリだ。同アプリは2024年3月末時点で約54万のユーザー数を誇り、広島銀行と顧客をつなぐ重要なデジタル接点になっている。「顧客と銀行のコミュニケーションにおいてアプリの重要度が増しており、ひろぎんアプリの強化を重要施策と位置付けている」(住田氏)。ただ同アプリも他システムと同様に開発をITベンダーに依存しており、ちょっとした機能追加に半年~1年かかる状態だったという。「スマホアプリは機能追加や改修を繰り返し、使い勝手を高め続けられなければ顧客が離れてしまうリスクを伴う。そのためには柔軟でスピーディーな開発体制が不可欠であり、それが当行が内製を進める理由だ」(住田氏)。
ミニアプリで一機能から実装へ。
広島銀行はひろぎんアプリを一定程度自分たちで機能追加したり、改修したりできる状態が理想と考えた。ただ、同行はアプリ開発の経験がなければ、まだ十分な開発者もいない状態。そこでまずはスマホアプリ全体ではなく、一機能を自分たちで開発する方針を掲げた。同時期に、ひろぎんアプリの所管部からは「確定拠出年金機能を追加実装したい」との要望が上がっていたため、IT統括部はこの機能を自分たちで内製すると決めた。
アプリの内製に際し、広島銀行が着目したのがスマホアプリ上でミニアプリを配信・管理できるSCSKのプラットフォーム「miniApp Platform」だ。同プラットフォームを使えば、既存のホストアプリにはSDK(ソフトウエア開発キット)を導入するだけで、ミニアプリとして機能追加できる。
「直接改修しないためホストアプリに影響を及ぼさなくて済むことと、ミニアプリ単体で開発が可能なことから、アプリ内製の最初のプロジェクトとしてminiApp Platformを活用したミニアプリ開発が最適と判断した」(住田氏)。
広島銀行がひろぎんアプリの内製化プロジェクトを始動したのは2023年3月のこと。アプリ開発は未経験であったため、法人向けのデジタル化支援サービスを手掛けるモンスターラボに内製開発の支援を依頼した。同社が手掛けるアプリ開発の研修を受講し、その後はリモートでUI設計などを支援してもらう体制をとった。同社の技術的な助言は受けるが、開発はあくまでも行員が自ら行う方針を徹底したという。