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もうすぐ免許不要で走行可能に、バルセロナで見た電動キックボード普及の鍵。

〇 道路交通法が2023年7月1日に改正され、電動キックボードは「特定小型原動機付自転車」という新しい区分に分類される。この区分の車両は免許不要で利用できるようになる予定だ。

これによって電動キックボードの普及拡大が期待されるが、課題はあるのだろうか。取材で訪れたスペイン・バルセロナでの状況を見ながら考えてみたい。

改正道路交通法で自転車により近い存在に。

海外ではシェアリングサービスが広く展開され、既に多くの国で利活用が進んでいる電動キックボード。自転車と同じ感覚で利用でき、それでいて手軽かつスピーディーに移動できることから人気を博している。一方、日本では電動キックボードの法的な位置付けやルールの整備がもともと曖昧だったこともあり、利用に懸念の声が多く、普及が大きく遅れている状況にある。

現在、電動キックボードは原動機付き自転車と同等の扱いとなっていることから、走行するにはナンバープレートを取り付ける必要があり、運転免許を携行してなおかつ車道を走る必要がある。手軽さに重点が置かれたモビリティーとしては利用のハードルが高く、普及を阻む大きな壁となっている。

だが2023年7月1日に改正道路交通法が施行されることで、その状況が大きく変わろうとしている。なぜなら電動キックボードなど、最高速度が時速20km以下の電動小型モビリティー車両が「特定小型原動機付自転車」という新たな区分に分類され、16歳以上であれば免許不要で走行できるようになるからだ。

走行時は原則として車道を走ることにはなるものの、最高速度が時速6km以下であれば自転車が走行できる歩道も走行可能になる。原動機付き自転車よりも自転車により近い運用が可能になることで、電動キックボードの利便性を大幅に高めると期待されているのだ。

とはいえ日本から一歩外に出れば、先にも触れた通り電動キックボードは新しいモビリティーとして受け入れられ、既に生活に定着した存在となっているのもまた確かだ。筆者は2023年2月にモバイル関連の展示会「MWC Barcelona 2023」の取材のためスペイン・バルセロナを訪れたところ、そこでの電動キックボードの活用は、普及が進んだ現在では以前と大きく変わっている印象を受けた。

取材で訪れたスペイン・バルセロナではキックボードに乗る人が非常に増えていたが、その様子は以前の欧州の光景とは異なってきている印象を受けた
画1、取材で訪れたスペイン・バルセロナではキックボードに乗る人が非常に増えていたが、その様子は以前の欧州の光景とは異なってきている印象を受けた。

電動キックボードは借りるものから買うものへ。

筆者がバルセロナを訪れたのはおよそ4年ぶりなのだが、今回訪れて最も大きく変わったと感じたのは、電動キックボードが“借りる”ものから“買う”ものに変化していることだ。

海外における電動キックボードは、「Lime」などスマートフォンを用いて手軽に借りられるシェアリング型のサービスを利用して乗る人が多く、日本でも「Luup」などがサービスを展開していることからそのイメージが強い人も多いと思う。確かにコロナ禍以前に欧州を訪れた際には、そうしたシェア型の電動キックボードが頻繁に利用され、街中にあふれかえる様子を何度も目にしていた。

一方バルセロナでは、元々シェア型の電動キックボードサービスの提供が禁止されているのか、4年前には電動キックボードを見かけること自体少なかった。だが4年が経過した現在は様子が一変しており、シェア型のサービスは相変わらず見かけなかった一方、自己所有と思われる電動キックボードで走行している人をかなりの頻度で見かけるようになったのだ。

街中には電動キックボードの専門店などが現れており、電動キックボードが生活に根差した存在となっている印象も強く受けている。それだけ需要が高まったこともあって、メーカー側が電動キックボードの新製品を積極的に投入する動きも見られるようになってきた。

その1つが中国のスマホメーカー大手、小米科技(シャオミ)だ。同社はスマホ以外にも多くのデバイスを手掛けているのだが、MWC Barcelona 2023に合わせて実施された新製品発表イベントでもスマホ「Xiaomi 13」シリーズだけでなく、電動キックボードの新製品「Xiaomi Electric Scooter 4 Ultra」も発表した。電動キックボードの販売に力を入れている様子を見てとれる。

シャオミは2023年2月26日(現地時間)に開催した新製品発表イベントで、スマートフォンのほかに、電動キックボードの「Xiaomi Electric Scooter 4 Ultra」も同時に発表した
画2、シャオミは2023年2月26日(現地時間)に開催した新製品発表イベントで、スマートフォンのほかに、電動キックボードの「Xiaomi Electric Scooter 4 Ultra」も同時に発表した。

自転車専用道路が少ない、日本が抱えるインフラ面の課題。

同様にMWC Barcelona 2023の会場においても、中国Ninebotのブランド「Segway-Ninebot」が大規模なブースを構えて電動キックボードなどのモビリティー製品を展示。いずれも個人消費者を狙ったものとみられ、その販売拡大に向けたアピールを強めている様子だった。

「MWC Barcelona 2023」のSegway-Ninebotブースより。電動のマイクロモビリティーを多数手掛ける同ブランドでは電動キックボードを多数展示し、会場で注目されていた
画3、「MWC Barcelona 2023」のSegway-Ninebotブースより。電動のマイクロモビリティーを多数手掛ける同ブランドでは電動キックボードを多数展示し、会場で注目されていた。

こうした状況を考慮すると、日本においても改正道路交通法の施行後はシェアリング型のサービスが広まるだけにとどまらず、個人で電動キックボードを所有するという流れが確実に高まってくると考えられる。それが新たな市場の創出につながると考えられる一方、多くの人が懸念するのはやはり事故の増加であろう。

今回筆者が訪れたバルセロナの場合、電動キックボードは歩道や車道よりも自転車専用道路を走行していることが多かった。ある意味、既に自転車専用道路が整備されているからこそ電動キックボードの活用もしやすく、普及を後押しする要因になったとも言えるかもしれない。

バルセロナでは大きな道路に広い自転車専用道路が設けられていることが多く、電動キックボードはそこを通行する
画4、バルセロナでは大きな道路に広い自転車専用道路が設けられていることが多く、電動キックボードはそこを通行する。

一方で日本の状況を振り返った場合、とりわけ東京都心では細くて入り組んでいる複雑な道が多く、自転車専用道路が整備されているとは言えない。大きな道路であれば自転車専用の通行帯が設けられているケースがあるものの、実際に自転車で走行してみると非常に多くの自動車が一時停止でその通行帯を塞いでしまっているため、結局歩道を走行せざるを得ない状況に追い込まれることも少なくない。

そうした状況で電動キックボードの利用が増えれば、事故が増えることに不安を抱く人が多く出てくるだろう。日本は電動キックボードの普及で非常に大きく後れを取っているが、今後一層の普及を図るためには法整備が進んだ後も事業者、そして行政の側が安全に運転できる環境整備などを進め、信頼を得る地道な取り組みが求められることになりそうだ。


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