川柳で綴るショートエッセー ⑤ 神経の束 

2008-12-26 14:46:35 | Weblog




鍵おろす 神経の束どさり置く   多美



玄関の鍵を下ろして私は灯りもつけずに台所の床にペタリと座る。
勤めだしたばかりの精神病院での一日は緊張がいっぱい。

砥ぎすまされた精神を持つ患者さんや幻聴、幻覚のある人たちの中で、
看護士さんのお手伝い的仕事であっても神経はゆるむときがない。

緊張感で食欲も落ち、不眠が続いた。本当は私のほうこそ入院する必要が・・・。

ある日、院長にそのことを話すと「自分の神経を不安に思えることは正常な証拠」
と笑いながら仰った。神経は自由に形を変えるものらしい。ずいぶんと気分が楽になった。 





               
ふぐのセットが届きました。初めて口に入れるもの。            
「ふぐは食べたし命は惜しいし」
しばらくはお皿とにらめっこしていましたが
「えいやっ」とばかり口へ放り込みました。
美味しい!! 甘い歯ごたえがなんともいえません。
命と引き換えにしてもまた食べたい味でした。
 

川柳で綴るショートエッセー④チルド室 

2008-12-25 06:41:46 | Weblog


       
チルド室そろそろ死なせてくれますか   多美


先日、知人のおばあちゃんをお見舞いに病院へ行ってきた。
「おばあちゃん・・」と呼びかけるとかすかに目を開けてくれるが、すぐ閉じてしまわれる。
おばあちゃんは二本の管につながれて生きている。鼻から差し込んだ流動食用の管と 尿管と。
ときどきは、看護師さんが褥瘡予防のためにひっくり返して、腰のあたりをパンパンと叩いていく。

死なず生かさずの寝たままのおばあちゃんは、まるでチルド室で乾きかけた菜っ葉のようだ。
思わず自分の姿に置きかえてみる。私は延命措置を望まない。きっとおばあちゃんもそう思って
おられることだろう。布団の中の手を握ると、かすかに握り返してくれた。




いよいよ根雪になりました。いつも通る道路の曲がり角に立っている
消火器にも雪が積もっています。
この消火器、とっても面白い顔に見えるので通るたびに言葉をかけた
くなるのです。
それが今朝の雪が頭の上に積もってとってもユーモラス。
ゴリラをおんぶしているように見えませんか?

川柳で綴るショートエツセー③バラのつぼみ

2008-12-22 21:01:26 | Weblog




発熱のきざし つぼみのややピンク  多美



いただきものの赤いバラ一輪。裸電球の灯の下でそこだけぽっかりと浮いて、
つぼみがひとつ寄り添っている。赤いバラのつぼみは白くて固い。
よく見るとその先っぽは薄いピンク。少女期から乙女へ向かう恥じらいをみせて・・・。
母亡きあとの記憶には甘い余裕はなかった気がする。
そんなことを考えていたら、バラのつぼみに軽い嫉妬を覚えた。
ふいに花びらをばらばらにほぐしてしまいたい衝動に駆られた。

ふっと涙がこみ上げてきた。つぼみの先にかすかな熱を感じた。

私にもあった遠い日のこと。からだの芯がじーんの熱かったっけ。
あれは小女期を脱皮するときの微熱であったのか。

 コップのお水をそっと取りかえてあげた。
   




川柳で綴るショートエッセイ ② 縄梯子

2008-12-21 08:12:00 | Weblog



目の前にのんびり下りる縄梯子   多美

   ジャックと豆の木の ジャックは豆のつるにしっかり摑まって目的を果たしに
 雲の上を目指した。
  小さかった子供たちにせがまれて繰り返し読んだ本だ。危険を冒して鬼の
金貨を盗みに行くジャックの応援をする訳ではないが、その勇気を子供たちに
教えてやりたかった。

 そんな立派なこころざし?を、持って子を育てたはずの私にはその勇気に欠け
るところがある。
「おい、どうした? 上っておいで・・・」と、そんな私をからかうようにのんびり
と縄梯子が垂れさがってくる。




川柳で綴るショートエッセー  ① 眠らない枕 

2008-12-20 16:24:25 | Weblog





  しずしずと罠張りねむらない枕   多美
 

小さな鏡に写る私、泣いていました。
夫がはじめて出稼ぎに出た年のこと。山里の小さなも、
この年は大凶作、豆の一粒もとれません。

夫の居ない家はがらんとして、まるで冬の海みたい。はじ
めて夫を恋しく思いました。 
 
涙でぬれた枕は私を眠らせてくれないのです。なんて可愛い
妻だったのでしょう。

今の私は留守をさいわいに、ごうごうと高鼾で眠ってしまうのです。
  (なんとおそろしい女・・・) 



寒い夜です。

2008-12-18 14:38:48 | Weblog
    

寒さ厳しくなってきました。仕事の帰りです。駅前のいるミネーションも凍ってかえって寒さを誘います。
バスを降りてびっくり、除雪された雪が踏みしめられて固く凍っています。こんなところで転んだら骨折です。これからはガニ股歩きのよちよち歩き、これって結構疲れます。明朝はマイナス15℃の予報です。
こんな夜は暖かくして寝るのが一番、そこで湯たんぽの出番です。たった薬缶にひとつのお湯で朝までぬくぬく。ちょっと潰れてしまいましたがこの冬も活躍です。暖かい夢が見れそうです。

        【 夢ならば叶う母体にもどられる  多美 】

    

もうすぐクリスマス

2008-12-13 20:46:54 | Weblog
  

       街の鹿さん一家にもクリスマスが近ずいてきました。

       でもこの家族は道路をはさんでななめ向こうとこちらに別居です。

       お互いに見つめ合う瞳が切ないですね。

            【 時差のある時計を抱いて眠る夫婦  多美 】


風邪にご注意を

2008-12-03 04:14:22 | Weblog



          夕焼けを追う炎上のバスに乗る

           千人の神もみとれるもみじ山

          生き残る刻をせわしく水流る

          この先は流れにまかす花筏

          この辺で折れてみたいと思う葦    (川柳ノートから)   

              


  秋の終わりのころ、撮った実です。
  名前は知りません。
  
  昨日は撮影会があって、白鳥を撮る予定でしたが、
都合で行けませんでした。
  今の季節は灰色の風景。雪が降ったら明るく

なりますのに。やっぱり北国には雪がなければ様になりません。
私はちょっと風邪気味です。全国の皆さま、どうぞご自愛くださいませ。