ありふれた生活

今年こそ阪神日本一!

新井神話継続で3連勝!!!

2008-05-16 22:46:50 | 08阪神タイガース
阪神 8-5 ヤクルト (甲子園)

新井さんが打点をあげれば18連勝!

阪神打線は、序盤から得点を重ね、前回やられたヤクルト村中をノックアウト!

初回、新井さんの先制タイムリーツーベースっ!
3回、トリの2点タイムリースリーベースっ!!
4回、レッドのタイムリーで4点目!
新井さんが、走者一掃の3点タイムリースリーベースっ!!!
6回、金本アニキのタイムリーツーベースっ!

いやあ、ええ感じで攻められましたっ!

先発の安ちゃんは、しっかり試合を作りました!
8、9回で5失点となってしまいましたが、ちょっと球数多すぎたね。
9回は志願の続投でしたが、結局江草のリリーフを仰ぎました。
でも、ええピッチングでしたよ!
これで5勝目!
ちなみに、エグはいまだ防御率0!

一応先発全員安打でしたが、本日5番の広大はチャンスで打てず…。
最後の打席で今シーズン初ヒットを打ちましたが、広大にヒットが出てればもっと点が入ってたよね。
でもまあ、1本出たし、次回はしっかり打ってや!

今日はバルディリスもスタメン!
4回に先頭でツーベースを放ち、追加点のホームを踏みました!
守備でもナイスプレーあり!
右のDH1番手は、バルディリスか??

このカードが終われば交流戦!
最後のカードも勝ち越して終わりたい!
明日も、たのんますっ!

逆転勝ちでボギー今シーズン初勝利!

2008-05-15 23:06:20 | 08阪神タイガース
広島 2-5 阪神 (福井)

新・代打の神様ありがとおっ!!!
ひーやんが2点タイムリーツーベースで同点っ!
選手会長レッドのタイムリーで逆転っ!

ボギーは、6回5安打2失点(自責1)のナイスピッチング!
今シーズン初勝利もつきましたっ!

今日はJFKではなく、WJF!
久保田が調子悪いので、ナベが1点差の逆転直後に試合を締めましたっ!
ジェフは連投できっちり!
最後は球児できめ!
3人で9人斬り!
阪神投手陣、磐石です!

8回にはトリの犠牲フライ!
9回、1死からレッドが出塁!
平野がきっちり送って2死2塁!
ここで、新井さんがタイムリーヒットっ!
岡田監督、新井さんに託しましたねー。
それにしっかり答えるあたり、さすがやね!
新井さんが打点をあげた試合は、負けません!17連勝!

ほんまは、レッドのタイムリーの前に、坂かモンキーで決めたかったよなあ。
二人とも、次はたのむでっ!

さあ!交流戦前最後のカード!
まず頭とろうや!

下さん5勝目!

2008-05-14 22:18:37 | 08阪神タイガース
広島 2-4 阪神 (金沢)

新井さんは、やっぱりいい!
負けた翌日は必ず打ってくれます!
今日もツーランホームランっ!

下さんは、いつもの下さんらしいピッチングで試合を作ってくれました!

久保田がまた1失点は心配だけど、JFK締め!
阪神らしい勝ちゲームと言っていいのかな。

エラーがあったのは、もちろん反省だけど、ひーやんはタイムリーで汚名返上しました!

さて、これで北陸シリーズイーブンです。
明日も絶対勝って、勝ち越しするでっ!

祝!金本アニキ400号!

2008-05-13 23:18:16 | 08阪神タイガース
広島 9-3 阪神 (富山)

負け試合だったから、悔しい。
でも、いつでも最後まで諦めないアニキだから、アニキらしいホームランだったのかもしれない。
でも、やっぱりアニキには笑顔で花束を受け取ってほしかった。
そんな試合にしてほしかった。

だから、崩れてしまった投手陣は、次回は絶対に頑張ってほしい!

明日は絶対勝つんや!

JFK復活!で連敗脱出!!

2008-05-11 22:26:22 | 08阪神タイガース
阪神 3-1 横浜 (甲子園)

連敗脱出ーっ!

負けた翌日に強い新井さんが今日も打点をあげましたーっ!
おまけに、日曜日にも強い!
頼りになる弟や~!

そして、今岡はんもタイムリーっ!
昇り調子なんちゃう!?

そしてそして、チャンスメイクしたレッドも忘れちゃならんね!
本日マルチ安打!&初回に盗塁成功で13盗塁!
先制点の時も、ナイスラン&ナイススライでしたっ!

先発の岩田は4勝目!
ランナーを出しながらも粘りのピッチングで、5回7安打1失点!
しっかりゲームを作ってますっ!
本日の中継ぎ陣はばっちり!
6回ナベ!開幕からしっかり自分の仕事をしています!
7回久保田!ひさびさ3人斬り!
木戸コーチと調整したそうな。
これで、乗っていけるでしょう!
8回復活ジェフ!ランナーを出すものの3人斬りでお立ち台~!
最終回は、もちろん球児!きっちり3人斬りで13S!

JFKの復活で、阪神中継ぎ陣がさらにパワーアップ!
明日のデイリーが楽しみや~!

デイリーといえば、吉田風さんが書いてましたが、小栗旬くんは阪神ファンだそうな。
いやー、気になる人が阪神ファンでうれしい限り。

伝え貝が伝えない・16

2008-05-11 14:37:39 | Weblog
高雄は不機嫌を隠さずに言った。
 「なに怒ってんの? 夕飯はせっかく奮発してすき焼きだってのに」
 確か、すき焼きの割り下にはアルコールが入っている。
 「母さん、ミドリは?」
「高くんの部屋」
高雄は部屋でミドリと相談した。
「大丈夫かな」
「誓約は『酒を飲むな』でアルコールを取るな、じゃないからねえ。たぶん大丈夫だよ」
「そうだな。でも一応料理酒は入れないように頼んどこう」
高雄がまどかに料理酒を使うな、と頼んで二階に戻ったのと入れ違いに、高雄の父が台所に入ってきた。
「おお、今日はすき焼きか」
(そう言えば、いつだったかテレビで見た事があるぞ)
すき焼きにビールを入れるとコクが出るという。
「母さん、確か冷蔵庫にギネスビールが残ってたよな」
「んー、確か二本ほど」
なんか今日はやけに酒にこだわるねえ、うちの男どもは、とまどかは首を傾げた。

高雄の一箸目とほぼ同時に居間で爆発音が鳴り響いた。
何事かと居間に走りこんだ土塁一家が見たものは、テレビの上に置いてあった筈のボールが四散し、灰色の煙が立ち昇る様だった。
「ああああ。僕の緒前選手のボール」
 高雄はその場にへたり込んだ。爆発した以上は大事な物だったという事であり、案外、本物だったのかも知れない。
 「高くん。また食べ物関連でしょうもない約束事をしたね?」
 まどかの声はドスが効いていた。
 「お弁当の件といいこれといい、どうもキミにはまともな食事を出す価値を感じない。明日からキミのお弁当は当分ビタミン剤と栄養ドリンクにします」
 「そりゃないよ!」
 高雄の悲痛な叫びが響いた。

 「みんな、昨日はごめんね」
 スポーツで鍛えている身体の賜物か、風邪も引かずにさやかは登校して来て、四人と話していた。話すうちに、さやかの観察眼は高雄を捉えた。さっきからろくに話もせず、目は開いているだけでどこも見ていない。
不機嫌をこねあげて形作り、憂鬱と無力感を上薬にして塗り固めた塑像の様になっていた。
 「ルイくん、怒ってるの?」
 「あ、ルイちゃんはね、昨日のゲッシュで大好きな酒と女を断たなきゃいけなくなっちゃったからとっても機嫌が悪いの」
 ミドリは平然と大嘘をついた。
 「ふーん、ルイくんってそういう人なんだ」
 さやかは軽蔑の目で高雄を見た。
 「んなワケあるか! ……いや、ゲッシュの内容は本当だけどさ」
 「そりゃ残念だなあ、実は俺の鞄の底にはロマネ・コンティが隠してあって、後からふたりで一杯飲ろうと楽しみにしてたんだが」
 「あ、わたしも今日ルイ君にデート申し込もうと思ってたんだ。雰囲気次第では行くとこまで行っちゃってもいいかなー、とか考えてたんだけど」
 「お前らってさ、大嘘ついて僕をからかってる時が一番輝いてるよな。目とか」
 高雄は笠場と泉を恨みがましく睨んだ。
 「じゃ、そんなルイくんにあたしから本当にプレゼント」
 さやかは昨日も学校に持って来ていた坂木大三の伝え貝製ストラップを取り出して高雄に微笑んだ。
 「昨日のお礼。あたしはおばあちゃんの使うんだ。ミドリちゃんが直してくれたやつ」
 さやかはミドリにも微笑みかけた。
 「ありがとう、ミドリちゃん。あのラケット新品の匂いがした。買ってもらったばかりの時の匂い。もう一度嗅げるなんて思ってなかった」
 「え? いやあ、アタシにかかればあの程度」
 ミドリは柄にもなく照れた。
 いつの間にかさやかが「土塁くん」を「ルイくん」と呼び、「ミドリさん」を「ミドリちゃん」と呼ぶようになっていた事に気付いていた者はいるだろうか。高雄もミドリも、当のさやかもたぶん気付いていない。

 案外、教室中央の列、高雄の席から数えて三つ前の彼女だけが気付いていたかも知れない。
 相変わらず彼女は高雄たちの方を見ず、前を見続けている。
 「またひとり、お馬鹿さん達にお仲間が増えたみたいね」
 深い緑色の黒板を見つめながら、金森美麗はお馬鹿さん達に聞えない様に小声で呟いた。

 その後高雄は、何度か貰った伝え貝を試してみたが、さやかから返事があった事も、逆にさやかからなにかメッセージが伝わって来た事も無かった。
 今のところ、伝え貝がなにか伝える様子は、無い。


伝え貝が伝えない・15

2008-05-11 14:32:57 | Weblog
普段は性格そのままにせわしなく羽ばたいている羽根が動かないのだ。それでも宙に浮いている所を見ると、羽根は本当にただの飾りなのかも知れない。シャーマニズムによく見られる激しい躍動は無く、ミドリは静かにただ揺蕩い、やがて「下れり」とだけ告げる。
笠場と泉はこの光景を見るのは初めてではないが、この時ばかりは普段のミドリとあまりにも違う静かな威厳に気圧される。ただふたりにとって不思議なのは、託宣が下った後のミドリは神々しくなるどころか、普段にも増して言動がデタラメになる事だった。
「汝これより十日酒色を断つべし。さもなくば過あらん」
「シュショクって、パンとか御飯の主食?」
「ううん、酒と色の方」
「なんだ、楽勝じゃん」
高雄の表情が明るくなった。
「僕は未成年だから酒は飲まないし」
「女の子にははなから縁が無いしね」
ミドリは高雄に何か言う暇を与えず、木箱に向き直った。
「さあ、いってみよう」
木箱の中の破片にミドリが歌とも呪文ともつかない文言を唱え始めると、破片が一斉に震え出し、やがて次々に浮き上がって一点に集まり始めた。ミドリの声に乗り幾百の破片が螺旋を描きながらもとの伝え貝としての姿を取り戻していく。
「いつもはこの後がつらいんだよな。わけのわからない苦行が待っている」
高雄が誰に言うともなく呟いた。隣に泉が居た。
「今回のは楽そうじゃん? 誰かがいきなり告白してきたりしなけりゃ」
「実に楽でいい」
泉の言葉に、高雄は組み上がっていく伝え貝を見ながら情けない答えを返した。
「なんなら、わたしがルイ君に苦行を課してあげよっか?」
「やめろよな! そもそもそういうのは本気じゃないと効果は無いの」
「わたし結構好きだよ、他人の為に魔法使って自分がひどい目に遭ってるルイ君」
「ひどい目に遭ってるのを見るのが好きだとか言うんだろ、どうせ」
「それもちょっとあるかな」
ふたりが話しているうちに、伝え貝が組み上がった。ミドリは感嘆の声を上げた。
「すごいよこれ。足りない所がほとんど無い。粉一粒まで拾い集めて取っといたって感じ」
そして、かなり強力な水怪が作ったのだろう、再生するなり六十年の歳月など無かったかのように力を漲らせている。今すぐ使える、とミドリは言った。
「これで娘の居場所がわかるんですね」
さやかの母が貝を手に取ろうとするのを高雄が押しとどめた。
「待って下さい」
高雄はうつむいたまま座っているさやかの父の前に立ち貝を差し出した。
「あなたにやってもらいます。あなたがやるべきです」
さやかの父は顔を上げずに伝え貝を受け取った。

 伝え貝が伝えない。いくらさやかの父が話しかけても何の返答も無いのだ。
 「声の大きさじゃないんです、気持ちの強さなんですよ。繋がりっていうのかな」
 高雄のコーチングもまるで役に立っていない。
 「ルイには悪いけどさ、こりゃあいつの独りよがりだと思うぜ」
 笠場と泉は邪魔にならない様に廊下に出ていた。行儀悪く座り込んでいた笠場が言った。
 「だってそうだろ、これで親父が必死に呼びかけて伝え貝の声が娘に届いて、親子のわだかまりが解けて絆が戻ってめでたしめでたしじゃ、警察はいらない」
 「ケーサツ?」
 「この場合警察は違うか。家庭裁判所かな」
 (こいつわざとバカなのかな、それとも素でバカなのかな)
 韜晦でやっていようが地でやっていようが、今の泉にはそれはどうでもいい。
 「独りよがりでもさ、わたしは上手くいってほしいんだ。ルイ君のやる事はなんでも全部」

母親に代わってみたが、伝え貝が言葉を受け付ける様子は無かった。さやかの母は力無く伝え貝をリビングのテーブルに置いた。
「これ以上連絡がつかないようだったら警察に……」
 「そんなみっともない真似が出来るか、この程度の事で」
 さやかの父は妻の言葉を一蹴した。
 夫婦のやり取りに背を向け、高雄は伝え貝を手に取って玄関に向かい、扉を開けて雨の降り続く庭に踏み出した。

 高雄は傘も差さず、大粒の雨が土砂降りの庭に立った。ミドリが後ろから追いかけてきて左肩に止まり、どこに隠し持っていたのか小さな自分用の蝙蝠傘を開いた。
 「どうするの、ルイちゃん?」
 「やるだけやって見る。正直な所あんまり自身は無いけどな」
 高雄は伝え貝を口元に当て、語り出した。
 「坂木さやかさん。僕は君の家族じゃないし、こ、ここここ、こ」
 「ルイちゃん、どもってる」
 「こいびとでもないから」
 「ルイちゃん、声裏返ってる」
「だからこれから話す事が君に伝わる自信は全く無い。でも出来る限りやってみようと思う」
 その間にも雨は髪を伝わって頬を流れ、白いシャツを濡らして灰色に変えていた。
「妖精使いになった時の事を訊かれた時、僕は言葉を濁した。恥ずかしい話だったから。小学生の頃、僕はあの森に逃げ込んだんだ。その頃の僕は何をやってもダメで失敗ばかりで、その日も学校で怒られて家で怒られて、自分がイヤになって、ここにいるのがイヤになった」
 「今も似たようなもんじゃん」
 「お前黙ってろ。この世界から逃げ出したくなった僕は違う場所に繋がってるっていう噂の森に入っていった。どこかここじゃない場所に行きたくって。違う世界に行く道をうろうろと探し回っているうちにミドリに会ったんだ」
 「その時はミドリじゃなかったけど。ほんとこの名前って安易っていうか」
 「だからお前黙ってろ。ともかく、こいつの話だとたしかに森の奥は違う世界に繋がってるんだそうだ。けど、こいつが言った。どこに行っても大して変わらないよ。なまじ足があってどこかに行ける生き物ほど違う場所ってものに見なくてもいい夢を見る。背中の羽根でもっとどこにでも行けるアタシに言わせてもらえば、どこに行っても同じ」
 「そんな事言ったっけ?」
 高雄はミドリを黙らせるのを諦めた。
「僕は帰る事にした。森を出る道案内をこいつがしてくれたんで、僕は妖精と一緒に人間界に帰ってきた人間になった。石塔さんによると、妖精使いの才能があるから出来たんだってさ」
 雨は降り続いている。
 「森の奥は時間の流れ方がこっちと違うんだ。数時間しか居なかったのにこっちでは三日以上経っていた。案の定家族に怒られ、世間に叱られ、帰って来るんじゃなかったって後悔した時、棚押のおっさんが僕の前に座り込んで言ってくれたんだ。『お前を探し回るの、凄く楽しかったぞ』って。それからこう言ったんだ。『ただし皆怒ってるし、今度はお前が鬼な。俺がどこかに行っちまったら探し出してくれ』って」
 雨は一向に止まない。
 「少しでも通じるものがあるかも知れないと思って僕が逃げ出した時の話をしてみた。きみがどこに居るのかは訊かない。訊いて心に届くとも思えないから。何か訊くとしたら、そう、昨日生まれ変わるとか天国だとかの話をしていた時に訊きそびれたんだけど……なにしろあの時は他の奴らがうるさくって」
 高雄は夜空を見上げた。雨が激しく顔を叩いた。
 「僕は昔、自分に嫌気が差して一度逃げ出した。もっと才能がある人間に生まれて来られたら良かったのにと思っていた。いや、今でも少し思ってる。今、きみが懸命に練習していた姿を思い出している。僕はテニスには疎いけどあのサーブはすごいと思ったし、テ、テニスルックも似合ってたと思う」
 「ルイちゃん、顔赤いよ。雨でも冷めない?」
 「それでもきみに訊きたいのは、もしもきみが誰かの生まれ変わりで、運動神経も頭脳もルックスも、全部今のきみより優れている天才的な人になれるとしたら。それでもきみはやっぱり自分が誰かの生まれ変わりなのはイヤなのかどうか」
「……生きてる間にね。いつかは、どこかで。何かをやり遂げて……」
聞こえた。土砂降りの雨音にかき消されそうになりながら、か細い声が確かに聞こえた。
 「あたしはあたしで良かったんだ。もう一回この世に生まれ変わる必要なんか無いや。そう思える人になりたいって頑張ってきたつもり」
 高雄は伝え貝を耳元に持ち替えた。
 「でもダメだね、あたしそこまで大きくないや。この程度の事で家飛び出して、公園のジャングル・ジムの上で夜空を見上げて雨に打たれて」
 輝奈野にジャングル・ジムのある公園は少ない。この近所だと南輝奈野第一公園だ。多分さやかはそこにいるのだろう。
 「笑っちゃうよね、公園だよ? ありがちすぎ」
 (僕が夜空を見上げたら坂木さんの声が聞こえてきた。同じ様に夜空を見上げていた坂木さんの心と何かが繋がったのかもな)
 「ジャングル・ジムの上ならブランコよりはまだありがちじゃないかなって思ったんだけど。公園ってところでもうやっちゃってるよね。姉さんならこんな所じゃなくて」
 一瞬の沈黙の後、再びさやかの声が伝わってきた。
 「姉さんは飛び出さないか。あたしと出来が違うもん。おばあちゃんって、あたしと姉さんを比べなかったんだ。おばあちゃんだけが一度も比べなかった。あたし自身も比べてたのに。まだ言ってなかったかな。あたしの名前ってお姉ちゃんと同じなの。坂木さやか」
 (そうか。それであの表札が)
 高雄は焚き火の跡を見た。ラケットの残骸は雨で泥塗れになっていた。
 「あたしも帰ろうかな。土塁くんを見習って」
 「待って。迎えに行って貰う様に頼むよ。そのまま公園に居て」

 高雄は雨水を滴らせながら家の中に戻って来て、さやかの居場所が分かった、と告げた。
 さやかの母はしきりに礼を言ったが、父の方は終始無言で、聞き終えると立ち上がって迎えの車を出す準備を始めた。
 あとは笠場と泉である。
 「俺ら、結局何の役にも立たなかったな。もう帰るわ」
 そう言った時には、既に笠場は傘を開いて玄関を出ていた。
 「あのさ……その」
 泉は口ごもり、やがて高雄に言った。
 「伝え貝でさやかと話せたんだよね?」
 「ああ!」
 もっとも高雄の喜び様は、実験に成功した学者のものに近い。水を張った容器に王冠を沈める事を思いついた男や、斜めに傾いた塔から球を落とした男はその時これによく似た表情をしていたかも知れない。
 「魔法が、うまくいった、って事、だよね。おめでとう」
 「泉ちゃん、なんか歯切れが悪い」
 ミドリが泉の顔を覗き込んだ。
 「そんな事無い無い。わたしはルイ君のやる事はいつも上手くいって欲しいって思ってるよ」
 (ただ「なんでも全部」は気前が良すぎたかな)
 泉は心の中で付け加えた。
 泉と笠場は雨の中を帰っていったが、立ち去るふたりを見送ってから高雄は焚き火の跡を見た。まだやる事が残っている。
 「普通さ、娘が何年も大事にしてる物を目の前で燃やしたりしないよな」
 「ひどい話だよね」
 「ひどい話さ。ただ、そうなるだけの理由も積もっていたのかも知れないな。つまり、あの親父と坂木さんのお祖母さんの間にも確執があったんじゃないかな。親子の」

 「俺はそろそろ、人生の纏めに入らなきゃならん歳だ」
 薄暗い車内の運転席で、普段は無口な父親が珍しく自分の心情らしきものを語っていた。
 「意味の無い物と遺しておきたくない物はああやって燃やしている。俺は自分の人生は無意味で失敗だったと思えてならない」
 「出来のいい自慢の娘がいなくなったから?」
 助手席のさやかは冷たい薄ら笑いを浮かべた。
 「違う。自分の人生が失敗だったから娘には成功してもらいたい」
 「それであたしの人生に口出し? 自分で人生に失敗したって思ってる人がアドバイス? なんであたしの物まで燃やすの? どうせ意味が無いから? それって父さんが決める事?」
 さやかは捲し立てながら、あたしはこの人にどんな応えを期待しているんだろう、と頭の片隅で考えていた。この不器用な人にいったい何が言えるというのか。
 娘の横で、父は黙ってハンドルを握っていた。結局の所、彼がこれまでの人生を振り返った時、心の中で最も大きなスペースを占めていて常に浮かんでくるのは
 (時間を無駄にしすぎた)
 (無意味な事ばかりやってきた)
 という事であり、だから娘には時間を無意味に浪費して欲しくは無いのだろう。
 坂木家が見えてきた。父は車を玄関の前に付けた。
 「きっと父さんにはあのラケットも無駄の固まりだったんだよね。でも、あたしには」
 最後に言い捨てて、車を降りようとしていたさやかは玄関に立つ人影に気付いた。
 (土塁くん?)
 両腕を背中に回して立っている。笠場と泉は既に帰ってしまっていて姿が見えない。

 門を抜けて高雄に近付いたさやかは訝しげな視線を向けた。
 「どうしたの?」
 「いや、親切のつもりだったんだけどさ」
 高雄は背後に隠していた物を前に出して見せた。折れて燃えて泥まみれになった筈のラケットが、散々に使い込んだ跡も全て消え失せた真新しい状態になってそこにあった。
 「ちょっと直しすぎたな。新品同様になっちゃったよ。こういうのって思い出深い傷跡とか大抵あるんだよな、それも全部消しちゃうんだから」
 アタシのせいにするか、とミドリが悪態をついた。
 さやかの瞳が潤んだ。
 「土塁くん……」
 さやかは感極まってか、高雄に抱きつこうとしたが高雄は慌ててその両肩を掴んで制した。
 さやかの両親が見ている前だし、「酒色」の「色」にあたる気がしたのだ。
 「ありがとう。ラケットは……また傷だらけにする。思いっきり使って」
 さやかの額に貼られたガーゼが濡れて剥がれ落ちそうになっていた。皮の剥けた赤く痛々しい傷痕が覗いていた。
 「自分に傷をつけるのはなるべく勘弁な。それでさ」
 高雄は最も重要な事を訊かなければならない。
 「お父さんを許せる?」
 さやかは、車庫に車を納めて戻って来ようとしている父を遠目に見て少し考えてから
 「努力はする」
 とだけ答えた。

 一向に勢いの衰えない雨の中、水溜りを避けながらとぼとぼと歩く高雄の横を、水飛沫を跳ね上げて自動車がすれ違った。
 「人間も早くなったもんだよね。車に飛行機、どこに行くのも足も使わずあっという間」
 泥で服が汚れていないかどうか確認しながらミドリが呟いた。
 「努力はする、か」
 高雄の顔色は冴えない。傘は差していた。
 結局自分が何の役にも立たなかった様に思えてならなかった。
 「なんだろうなあ。形のある物は魔法で簡単に直っても」
 高雄はぼやいた。形の無いものを直すというのがここまで難しいとは。そもそも直るものなのかどうなのか。見えないものだけに直ったのか直ってないのか分からない事さえあるかもしれない……。
 「仕方無いって。一足飛びには行かないよ」
 ミドリが呟いた。
 「人間はどこかに行こうと思ったら、本来一歩一歩歩いて行かなきゃいけない生き物なんだから。何かをしようとする時も一歩一歩進めて行かなきゃいけないんだと思うな」
 「ミドリ」
 たまには良い事を、と言いかけた高雄の前にいつもの含みありげな笑みがあった。
 「人間は、ね」
 次の瞬間、霧の様にミドリの姿が掻き消えた。主人を置き去りにひとりで帰ったらしい。
 「一歩一歩歩いて帰れってか! ひとりで!」
 高雄は傘を思い切り路上に投げつけた。

 二つ目の角を右に曲がって夜道をまっすぐ行くと土塁家が見えてくる。
 「お帰り、遅かったね。ミドリちゃんとっくに」
 「知ってる」