こいぬは
おもちゃじゃないけど
おもちゃより、ずっと
可愛かったんだ
多分、いのちが
あるからだ
でも、そのいのちを
子どもの自分は
捨ててしまって
もう、こいぬと
向き合うことが
出来なくなってしまった
いぬは、ひとの社会で
生きていかなければ
ならないんだから
ひとが、いぬを
いぬの、いのちを
守ってあげなくちゃ
いけないんだ
ましてや、こいぬは
ちっちゃくて、いたいけなんだ
そのいのちは
守ってあげなくちゃ
しゃぼん玉みたいに
はじけて、消えるだけだ
それが、出来なかった
自分が、凄く弱いから
だから、こいぬと
向き合うことが
凄く、怖くなった
そうだったんだろう
だから、自分は
おとなになっても、ずっと
こいぬも
おとなのいぬも
避けるように
なってしまって
いたんだろう
でも、やがて
結婚して
家族が出来て
家族が、いぬを
貰ってきた
だから、自然に
また、こいぬを
こいぬのいのちを
おとなの自分は
可愛いと思って
いや、ずっと
それが、出来なかったのが
今度は、おとなの
少しは、強くなった
そんな自分として
ただ、素直に
いぬが、こいぬが
可愛いと思うままに
実は、ずっと
そう思っていた
愛おしいと思う
その気持ちのままに
大切に、ただ大切に
育てたんだ
多分、きっと
子どもの自分に
こいぬのいのちは
その儚さと
掛け替えのなさを
教えてくれたのだろう
そして、やがて
おとなの自分には
こいぬのいのちは
儚さを守ること
掛け替えのなさを
守り抜くこと
その為の
自分の強さ
そのことを
呼び覚まして
くれたのだろうか…