だったな…
あんまり、何処も
連れて行って
貰えなかったな
親戚にさえね
何度も行ったのは
母親の実家だけか
父親の親戚回りは
いつも、兄さん
昔は、跡取り息子が
同行の定番だったから
末っ子のおまえは
たった一回だけ
兄さんには
おまえは、甘やかされていると
よく言われたけど
我が身を、振り返ると
ただの放任で
両親は、手が回らなかった
それだけだったと思う
まして、家族旅行なんて
両親に、金も暇もない
殆ど、あり得ない
日帰りが、数回位かな
泊まりは、なし
もちろん、我儘なおまえは
そんな時にでも
ぐずって、不貞腐れて
迷子になるとか
両親、真っ青
まあ、家族旅行がないのも
兄さんが、怒るのも
仕方がないか
とにかく、故郷は
地方の工業都市で
故郷の海岸地区は
その労働者の住宅地で
同級生の殆どは
地方出身者の子弟だった
ところが、両親は
二人とも、市内出身
母親の親戚は、市内だけ
父親の親戚も、県内だけ
だから、泊まりがけの
帰省なんて、あり得ない
ところが、同級生たちは
みんなが、みんな
全国、あちこち
夏休み、ずうっと
帰省するんだよな
おまえは、いつも
自慢されるだけ
おまえなんて
どの親戚に
連れて行って貰っても
日帰り、日帰りだよ
ああ〜あっ、だったな
今は、引きこもりで
親戚づきあいも
さっぱり
脚が、悪いのが
ちょうど良い
あんまり、何処にも
行けないのが
ちょうど、良い…