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日記、日々の想い 

あの頃、戦争は、凄く近くに…

お腹、いっぱいだ
母さんのお弁当
お稲荷さんと
干瓢巻き
いつも同じだな
ちょっと、寂しい
でも、お腹は
いっぱいだ
だって、母さんの
お稲荷さんは
凄く、大きいからね
それに、甘くて
美味しい
さあ、遊ぶぞ
みんなでね
鬼ごっこ
この公園は
山のてっぺんなのに
とっても、広いんだ
我が家の方を、見れば
海岸線が、ずぅ〜っと
K岩と、E島と
遠くに霞むのは
m半島だ
もちろん、大海原
果てしがない
故郷のS湾の先は
太平洋になんだ
海岸に行くと
O島だって
うっすら、見えるけど
ここからは、目を凝らしても
ちょっと、見えないかな
でも、振り返ると
故郷の霊山、O山だ
連なって、T沢の山々
大景観だったよね
秋晴れの気持ち良い日
おまえたち、子どもたちの
はしゃいだ笑い声、叫び声は
大景観に、飲み込まれ行く
でも、お腹いっぱいだと
追いかけっこって
ちょっと、苦しい
何とか、逃げてるけど
息が、切れるな
あっ、先生だ
呼んでいる…
そこは、公園から
少し降りた
殺風景な、駐車場だ
いや、ただの
だだっ広い空き地
土埃が
舞っているだけみたいな
先生は、みんなを
頂上の公園広場との
崖のところまで
連れて行った
深そうな、横穴だ
ちょっと、怖い
なんか、ただ
荒っぽく、掘られているだけ
「これはねえ
 戦争の時の
 防空壕なんだ」
先生は、みんなに
話し掛けた
「この山の頂上が
 平らなのは
 高射砲陣地が
 あったからなんだ」
あの戦争だよね
枯れ始めた草むらから
のぞいている
土肌が、剥き出し
真っ暗で、深そう
その横穴
何だろう
凄く、生々しい
あの戦争なんて
僕が、生まれた
遥か、昔だよね
でも、この穴は
今でも、なんだか
生々しいな…
あの時のおまえは
そう思ったよね
まだ、昭和三十年代の
後半の頃だ
それこそ、今からしたら
大昔だった
おまえは
防空壕なんて
大人たちから
聞いたことしかなくて
見たことなんか
無かったよね
だから、生まれる前に
掘られたあの穴が
あんなに、生々しいのが
ただ、不思議だった
でも、今のおまえには
そんな風に、感じたことが
よく分かる
あの時には、まだ
あの戦争は
そんなに昔のことでは
なかったんだ…
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