リドリー・スコット監督の最新作。
映画はＣＩＡがアルカイダによるテロの首謀者を捕らえる為に、ＣＩＡや中東ヨルダンの諜報員とアルカイダとの駆け引きがスリリングに描かれている。タイトルは「嘘の世界」とでも訳すのだろうが、原題は「Ｂｏｄｙ ｏｆ Ｌｉｅｓ」。ともかくこの”嘘”が映画中渦巻いて、それぞれが相手を出し抜こうとする。それはそれぞれの理念の達成の為であろうが、そのための手段に道徳もへったくれもない。それが、この世界の各勢力の主張する「正義」の本質だとしたら、その「正義」こそ”嘘”で固められたものでしかないのか？
中東諸国に潜入しているＣＩＡの諜報員フェリス（レオナルド・ディカプリオ）とＣＩＡ本部で彼に指示をだしているエリート局員ホフマン（ラッセル・クロウ）は、ヨーロッパで相次ぐアルカイダによる爆弾テロを防ぐべく、その首謀者を捕らえようとしていた。当初、イラクで活動していたフェリスは、危うくテロリストに殺されかけるところを米国の特殊部隊に救助されるが、すぐにホフマンはテロの首謀者が潜伏すると思われるヨルダンへと向かうようにフェリスに指示して、フェリスはヨルダン情報局のハニ・サラーム（マーク・ストロング）と接触し協力を得る。ハニはフェリスに言う「私に嘘はつくな」。信頼関係こそが中東では大事であるという意味だが、しかし母国アメリカで指示を出すホフマンは「誰も信じるな」と言い、様々な嘘を駆使してでも、世界の平和を守る為にテロの首謀者を捕らえようとする。その一方でフェリスは最前線で危険に常に直面しながらも、テロリストへと近づこうとする。そして、その目的を達成する為に、「世界を騙す嘘」を仕掛ける事をフェリスは思い立ち、ホフマンも賛同する。しかし、それは嘘の応酬を呼び、泥沼化しかねない事態だった。そんな中で協力者や関係の無い第三者までも巻き込みながら、それでもテロの首謀者に近づいていくフェリス。しかしそこにはやはり大きな”嘘”による罠が待っていた。
ＣＩＡ局員のラッセル・クロウ演じるホフマンが、家庭サービスをしながら、実に冷酷な指示を出し続けるのが印象的だ。米国はベトナム戦争の敗戦以来、極端に自国民が他国で戦死する事を恐れるようになった。このために、ハイテクを駆使した作戦で最小限の犠牲で勝利を得る技術を手にした。この映画の中で活躍するのは無人偵察機による画像や、携帯電話を駆使したデータのやりとりだ。しかしテロリストはそのハイテク技術の盲点を突き、次々とテロを成功させていく。焦りを感じるＣＩＡが取った作戦が「偽物のテロリストを創り出す」という荒唐無稽な手段だった。
この展開は「あり得ないだろう！」というくらいに荒唐無稽なのだが、なぜか妙な説得力がある。この映画は確かにフィクションだが、実際のＣＩＡなどの活動をベースにしてるので、「普通ならあり得ない」事をしないと、今のこの嘘で溢れた世界で真実を得る事は難しいのか？と思ってしまう。
ＣＩＡや中東諸国そしてアルカイダ、それぞれがそれぞれに持つ大義名分があるはずだが、嘘に嘘で出し抜くような事をしているうちに一体何をやってるんだろう？と疑問に思わざるを得ない。そして実際の世界もこのような事態になってしまっているのではないだろうか？
フェリスはそんな中で自らの体に無数の傷を抱えながらもがき苦しみ、そして自らも嘘を演出しながらも真実にたどり着こうとする。しかし、その命がいよいよ危険にさらされた時に、自らの嘘が招いた事態をまた救ったのも他の人間の嘘だった事を思い知った時に、自らが信頼出来る女性の元に行くことを決心し、ＣＩＡから離れる。それはホフマンが言うように「もう母国はお前の事を助けてはくれない」という事だ。それでもあえて中東の国に安らぎを見つけたフェリスは虚飾に満ちた母国を捨てる覚悟をする。体を張った演技で、傷だらけになりながら、壮絶な拷問シーンなども演じたレオナルド・ディカプリオの演技は秀逸だった。
頭脳戦を駆使して、スピード感溢れるストーリー、リアルな映像など見応えたっぷりの映画だ。情報を駆使すれば、一般人さえもテロリストに仕立て上げ、逆にテロリストが善良なる市民として生活する事の出来る世界。その嘘の中に見えてくる真実は、もはや大義名分を失った世界なのだろうか？最後に信じる事の出来るものは何か？それは”愛”だとか”友情”だとかそんなものでも無い、それさえも嘘くさく聞こえてくる。でも、人は嘘だけでは生きていけない。だから信じる事や信じる者を求めるのではないだろうか？フェリスのもがき苦しむ姿にそれを見いだす事が出来るのが唯一の救いかもしれない。
映画はＣＩＡがアルカイダによるテロの首謀者を捕らえる為に、ＣＩＡや中東ヨルダンの諜報員とアルカイダとの駆け引きがスリリングに描かれている。タイトルは「嘘の世界」とでも訳すのだろうが、原題は「Ｂｏｄｙ ｏｆ Ｌｉｅｓ」。ともかくこの”嘘”が映画中渦巻いて、それぞれが相手を出し抜こうとする。それはそれぞれの理念の達成の為であろうが、そのための手段に道徳もへったくれもない。それが、この世界の各勢力の主張する「正義」の本質だとしたら、その「正義」こそ”嘘”で固められたものでしかないのか？
中東諸国に潜入しているＣＩＡの諜報員フェリス（レオナルド・ディカプリオ）とＣＩＡ本部で彼に指示をだしているエリート局員ホフマン（ラッセル・クロウ）は、ヨーロッパで相次ぐアルカイダによる爆弾テロを防ぐべく、その首謀者を捕らえようとしていた。当初、イラクで活動していたフェリスは、危うくテロリストに殺されかけるところを米国の特殊部隊に救助されるが、すぐにホフマンはテロの首謀者が潜伏すると思われるヨルダンへと向かうようにフェリスに指示して、フェリスはヨルダン情報局のハニ・サラーム（マーク・ストロング）と接触し協力を得る。ハニはフェリスに言う「私に嘘はつくな」。信頼関係こそが中東では大事であるという意味だが、しかし母国アメリカで指示を出すホフマンは「誰も信じるな」と言い、様々な嘘を駆使してでも、世界の平和を守る為にテロの首謀者を捕らえようとする。その一方でフェリスは最前線で危険に常に直面しながらも、テロリストへと近づこうとする。そして、その目的を達成する為に、「世界を騙す嘘」を仕掛ける事をフェリスは思い立ち、ホフマンも賛同する。しかし、それは嘘の応酬を呼び、泥沼化しかねない事態だった。そんな中で協力者や関係の無い第三者までも巻き込みながら、それでもテロの首謀者に近づいていくフェリス。しかしそこにはやはり大きな”嘘”による罠が待っていた。
ＣＩＡ局員のラッセル・クロウ演じるホフマンが、家庭サービスをしながら、実に冷酷な指示を出し続けるのが印象的だ。米国はベトナム戦争の敗戦以来、極端に自国民が他国で戦死する事を恐れるようになった。このために、ハイテクを駆使した作戦で最小限の犠牲で勝利を得る技術を手にした。この映画の中で活躍するのは無人偵察機による画像や、携帯電話を駆使したデータのやりとりだ。しかしテロリストはそのハイテク技術の盲点を突き、次々とテロを成功させていく。焦りを感じるＣＩＡが取った作戦が「偽物のテロリストを創り出す」という荒唐無稽な手段だった。
この展開は「あり得ないだろう！」というくらいに荒唐無稽なのだが、なぜか妙な説得力がある。この映画は確かにフィクションだが、実際のＣＩＡなどの活動をベースにしてるので、「普通ならあり得ない」事をしないと、今のこの嘘で溢れた世界で真実を得る事は難しいのか？と思ってしまう。
ＣＩＡや中東諸国そしてアルカイダ、それぞれがそれぞれに持つ大義名分があるはずだが、嘘に嘘で出し抜くような事をしているうちに一体何をやってるんだろう？と疑問に思わざるを得ない。そして実際の世界もこのような事態になってしまっているのではないだろうか？
フェリスはそんな中で自らの体に無数の傷を抱えながらもがき苦しみ、そして自らも嘘を演出しながらも真実にたどり着こうとする。しかし、その命がいよいよ危険にさらされた時に、自らの嘘が招いた事態をまた救ったのも他の人間の嘘だった事を思い知った時に、自らが信頼出来る女性の元に行くことを決心し、ＣＩＡから離れる。それはホフマンが言うように「もう母国はお前の事を助けてはくれない」という事だ。それでもあえて中東の国に安らぎを見つけたフェリスは虚飾に満ちた母国を捨てる覚悟をする。体を張った演技で、傷だらけになりながら、壮絶な拷問シーンなども演じたレオナルド・ディカプリオの演技は秀逸だった。
頭脳戦を駆使して、スピード感溢れるストーリー、リアルな映像など見応えたっぷりの映画だ。情報を駆使すれば、一般人さえもテロリストに仕立て上げ、逆にテロリストが善良なる市民として生活する事の出来る世界。その嘘の中に見えてくる真実は、もはや大義名分を失った世界なのだろうか？最後に信じる事の出来るものは何か？それは”愛”だとか”友情”だとかそんなものでも無い、それさえも嘘くさく聞こえてくる。でも、人は嘘だけでは生きていけない。だから信じる事や信じる者を求めるのではないだろうか？フェリスのもがき苦しむ姿にそれを見いだす事が出来るのが唯一の救いかもしれない。
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