※本記事「タイノエ」にはグロテスクな画像(虫系)が多数あります。
苦手な方は閲覧の際ご注意ください。
自分の勤め先の社長は釣りが趣味だ。
趣味といえど かなり本格的で、一式ウン十万もする竿や電動リールを所有し、
クーラーボックスも巨大なものを複数持って、釣り仲間とともに深夜に出かける。
福岡近海・玄界灘はもちろんのこと、佐賀の呼子や長崎の対馬など、
玄人向けの釣りスポットへ、漁船をチャーターし沖で釣りを楽しむ。
翌日、釣った魚を誇らしげに披露する。
あまりに豊漁のときは、近所のおっさんらも呼んで、
作業場で新鮮な魚を肴に酒盛りが始まってしまう。
作業場には生花アレンジメントなんかが置かれているのだが、
これに焼き魚やさばいた魚の内臓などの生臭いにおいが染みついて、非常に迷惑を被る。
そんなはた迷惑な社長の豊漁酒盛りだが、
よほど不漁でないかぎり、従業員にもおすそ分けがある。
季節や釣り場によって異なるが、クロダイやレンコダイ,イトヨリダイ,
イサキやベラ,シイラにシロサバフグ,etc・・これまで様々な魚をいただいた。
釣ったばかりの新鮮な魚、遠慮することなくありがたく頂く。
先月、レンコダイ(連子鯛)を4匹ほどいただいた。
それをすべて母が煮つけに調理した。
その連子鯛の煮つけをおいしくいただき、
食べ終わった後の食器をシンクまで持っていくと、
蛇口のところに妙な物体がぽつんと置かれているのを見つけた。
ダンゴムシというかフナムシというか・・・。
なんかそんな感じの節足動物の死骸。
ただ、3cmくらいの大きさでダンゴムシとはいえないデカさ。
フナムシにしては、触角や脚が短いし体型もずんぐりしている。
「なんこれ!?」
思わず大きめの声をあげて母に訊いた。
「ああ、それ連子鯛の口の中から出てきたっちゃ!」
ちょっとカッコイイかも。
!
ピンと来た!
タイの口の中に棲むという虫。
前に本で見たことがあった。
アイツに違いない!
部屋に戻って、それが載っていた本を引っ張り出した。
パラパラとページをめくって、ソイツが載っているページを見つける。
コイツだ!コイツに違いない!!
この本の写真もまたグロい。
その連子鯛の口の中から出てきたという、このダンゴムシのような生物。
“タイノエ”という寄生虫だった!
そのフォルムから判るように、ダンゴムシやワラジムシ,フナムシ,
そして大人気の深海生物、ダイオウグソクムシなどの仲間だ。
釣り人や魚屋さん、調理人にとっては、そう珍しくない存在らしい。
自分は初めて遭遇した。
タイノエはウオノエ科に属する生物の一種で、
おもにタイやスズキなどの腔内に寄生して生活する。
宿主の舌や内頬にしがみ付いて組織の一部を壊死させて、
そこから宿主の体液をすするという。
ウオノエ科には、タイノエ以外にも数種類が居て、それぞれ宿主となる魚が異なるらしい。
誤って生きた個体を食べてしまっても、ヒトに寄生することはない。
ウオノエ科は性転換する生物で、
宿主の口のなかに入った最初の個体がメスとなり、後から入ったもう一匹がオスとなる。
かならず つがいで寄生し、宿主から栄養を摂取しつつ、せっせと繁殖を繰り返す。
こうやって一生を宿主の口に寄生して過ごすらしいが、
宿主が死ぬと、口から出て行くという。
!
必ずつがいで寄生!?
・・・てことは、あの連子鯛には、もう一匹コイツが潜んでいたってこと?
「オスメスつがいで必ず二匹で寄生しちょるらしいんやけど、もう一匹入ってなかった?」
「ああ、おった! もう一匹おったけど小さかったけん、はらわたと一緒に捨てたばい。」
すぐに生ゴミが捨てられている三角コーナーをまさぐる。
見つけた!
連子鯛のわたやウロコにまみれて、小さいのが出てきた!
王蟲じゃ!
体の大きい方がメスで、小さい方がオス。
オスはメスの半分以下の大きさだった。
いや~これは面白い!
ちょっとグロいけれど、記念にとっとこ!
きれいに洗って、保存することにした。
その翌々日。
また連子鯛の煮つけが食卓に出た。
先日いただいたやつの残りだ。
頭の部分を箸でつまむ。
尾頭付きの魚は、ちゃんと頭や頬あたりの肉も ほじくって食べる。
頬の肉を取っていると、えらの部分から下あごにかけての部分がバラバラと崩れた。
骨などの食べられないアラは皿の端に寄せようと、今崩れた部分をどけていると・・・。
!
ん!
なんだこれ・・・?
魚食べているとき、こんなん出てきたら・・・あなたならどうしますか?
うわぁぁぁぁぁぁ!!!
いや実際食べたら、シャコのような味で美味しいらしい。
とはいえ、この連子鯛と一緒に煮つけにされてしまったタイノエカップル、
もちろん食べたりはせず、また洗ってとっておくことにした。
これでツーペアだ!
タイノエを色々調べてみた。
まだまだ研究の進んでいない生物らしく、生態もよく判っていないらしい。
こいつらに寄生された魚は、生育不良,摂食障害や栄養失調などに陥り、
それが原因で死ぬことも多いらしく、漁業界ではわりと問題化しているという。
昔は鯛の口からこれが見つかると、縁起が良いとされていたとか。
タイノエ、漢字表記で、“鯛ノ餌”。
ウオノエも、“魚ノ餌”。
タイがエサとして食べた虫だと思われて名付けられたのだろうが、実際は逆。
まあ、この話を連子鯛をくれた うちの社長にしたら、
社長も これまでずっとタイが食ったエサだと思っていた。
釣り人は釣針を外す際、魚の口を開けたときに、
生きたコイツを見ることが多々あるとか。
実際ネットで、そういった画像をいくつか見た。
死骸を撮っただけの自分の画像の数倍グロい。
いや~地球にはいろんな生物がいるな~。
ここからは、タイノエギャラリー。
サイドビュー。
ダンゴムシのようなフォルム。
リアビュー。
尻尾?がシャコっぽい。
フロントビュー。
顔は地球外生命体。
ベースビュー。
この鋭いかぎ爪で宿主にがっちりと固定される。
保存からひと月経った姿。
干しエビみたいになっている。
美味しいかもしれない。
動いているタイノエが見られる動画。
閲覧注意。
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