王様の耳はロバの耳

乙女ゲームやBLゲーム、時々映画の感想を書いていきます。
ネタバレありです。閲覧注意。

『お前なんかに会いたくない』 著 乾ルカ 感想

2024-02-01 02:11:45 | 読書
こんにちは、サニーです。

今日は小説
『お前なんかに会いたくない』
著作 乾ルカ

の感想(ネタバレ有)を書きます。


この小説の主なテーマは
・高校生のスクールカースト
・いじめ
・同窓会

簡潔に言うと
いじめられっ子が大人になってから復讐する話

です!

こういうテーマの作品って
青春時代の精算と和解の物語
もしくは
痛快!下剋上スカッと展開
的な感じかなぁと思うんですが…


この小説、Amazonレビューや他の感想ブログを見ても
結末が今ひとつの評価
なんですよね。


そのへんの私の所感や考察を中心に、感想を書いていきます。














⚠初っ端から結末のネタバレあります⚠











【感想】



結末、全くスッキリしないというか、締まらない終わり方なんですよねぇ。

いじめられっ子は望み通りの復讐を果たせず、いじめっ子筆頭格は腹を括って対峙したのに土壇場でちゃぶ台返しをされ、全員イライラモヤモヤしたまま終了…

ただ、いじめられっ子・岸本の本質からしたら「らしい」終わり方かなぁとは思う。

岸本は自分でも言ってたけど
「絶望的に空気が読めない」
「自分勝手に振る舞い周りの顰蹙を買う
要は客観性がなく、相手にどう思われるか、相手がどう動くかを全く読めないし考えられない。自分に都合のいい妄想や思い込みに従って行動するんですよね。

大人になり多少は知恵がついて取り繕えるようになったけれど、ズレた本質は変わらないからいい年こいて本気でタイムカプセルで復讐ざまぁが実現できると思っちゃったんだと思います。

と、こんなこと書いたけど気持ちはわかるんですよ。
私も陰キャだったので小馬鹿にしてきた元クラスメイトにぎゃふんと言わせたい!って思ったことはあります。「大人になってからかつてのいじめっ子を見返した」みたいな読み物も好きですし。

けど、岸本のやり方でぎゃふんとなるかって言われたら微妙。
不気味さと不快感は与えられるけど破滅させるほどの後悔と恐怖は与えられない気がする。
室田の上司みたいに嫌な思い出として残るけどそれだけ。

ただ、コロナ禍もあって、何人かには多大なストレスを与えられたし冒頭で岸本が望んだ「大人になって順調に生きているあいつらの日常を目茶苦茶にする」は1人分叶った。
岸本が投げたボールを室田がパスを回し木下がゴールを決める。見事な連携。
そしてオブサーバーの滝本がいい仕事をしたおかけで井ノ川のキャリアに泥を塗り、精神的に追い詰めて同窓会の場に引きずり出すことに成功。

なんていうか、
ラッキーマン的な勝ち方だなぁと。

ほぼ運で復讐が進んでる。

そして井ノ川が岸本の恨みつらみを受け取って堂々と対峙すると決めたのに、
岸本は最後の最後で
「は?あなた達なんか知りませんけど」
他人のふり
手紙もビリビリに破り捨て
「なかったこと」

井ノ川からしたら仕事に支障をきたすレベルでキリキリ舞いさせられた挙げ句のこれ。
そりゃあ青筋立てますわ。

岸本は多分井ノ川を筆頭に一軍グループ、ひいてはクラスメイト全員を精神的に隷属させたかったんだよね。

だから井ノ川に「気持ちは受け取るけどそれには応えない」って拒否されて決別されるのが嫌で逃げた…

うーん、自己中ここに極まれリ

この岸本に最大の理解者兼生涯のパートナーが存在するのが奇跡だな。

まぁ、岸本の本位ではないけど嫌がらせは何人かには成功してるんだよな。
井ノ川は先程の通り。
作中には書かれてないけど、「独身」「彼氏なし」を気にしてる室田は見下していた岸本が「堅い職」「既婚者」の社会人がドヤれるカード持ってることに発狂しそう。
木下は本垢で井ノ川を売ったせいでクラスメイトの前に顔出せなくなったし。
けど全員じゃない。
嵯峨はSNSに反応してたけどノーダメだし、他の一軍メンバーはノーリアクションだから何にも影響ない。

骨折り損のくたびれもうけ


まぁ、ここまで岸本批判したけど、井ノ川やクラスメイトの鼻へし折ってやりてぇってのは
ものすごーくわかる

なんでどいつもこいつも鼻につく選民意識拗らせてるんだよ。
特に井ノ川の思い上がりっぷりと他者評価の気にしいっぷりは
女王様なのに小物感が漂ってる

実際、真のクラスの中心人物は三井なんだよな。
三井が声をかければクラスの大半がコロナ禍にも関わらず集うし、リーダーシップがある。
井ノ川は三井のことを「カーストエラー」と評してるけど、井ノ川たち一軍グループはヤクザ者の方が近いかも
派手派手しい雰囲気と威圧で我が物顔してるだけだし。
華やかさがあるからそこには皆惹かれるけど人望はない。
木下にいたっては一軍メンバーの中でも若干浮いてたし。

三井の心情は書かれてなかったけど、岸本や一軍メンバーへの本音はどんなものだったのかね。


あと磯部。壮絶な生い立ちの割に話すと普通の人というか。
奉仕精神への固執さえなかったらもうちょっとクラスに馴染んでいたかも。


富岡はいい奴。


ちなみにこの物語の鍵になってる遺言墨、
エピソードが恋愛ものだったから一連の騒動を「愛の告白」に置き換えてもしっくり来た。

SNSに同窓会アカを立ち上げると、「クラスに在籍してたけど転校していった奴が遺言墨で書いたラブレターをタイムカプセルに入れた」という旨の投稿がちょこちょこ入るようになった

大半はこの話題にあまり触れなかったのに一部のクラスメイト達が「あいつ宛じゃね?」などと予想して書き込み始める

騒動はクラス内に収まらず、アナウンサーになっていたクラスで一番モテてたやつに至っては告白イベントの本命としてまとめサイトに書かれ全世界に発信される。

アナウンサーは同窓会ごとスルーするつもりだったのに無視するわけにもいかなくなり、学校に忍び込んでタイムカプセルを処分しようとしたが見つからず途方に暮れる。

仕方ないからアナウンサーは腹を括って告白主と対峙することを決意。
「あなたの気持ちは受け取った。だけどこんな事するやつは無理」と返事をすることにした。

一方告白主は教師になり、たまたまもうすぐ同窓会という時期に母校に赴任してきて、サプライズを思いつく。
ラブレターと「びっくりした?ドッキリだよ」と書いた紙を入れ替えて、当日は同窓会になんの関係もない学校職員として同席。1年後に改めてラブレターを送りつけてインパクト大にする。というもの。

当日は告白主の思惑通りに「ドッキリだよ」の手紙が読まれほくそ笑んでいたら、クラスメイトの1人に正体を気づかれた。

動揺して他人の振りをしたけど告白イベントが始まる流れになってしまい、告白主は土壇場でアナウンサーから手紙を取り上げて八つ裂き。「は?あなた達なんて知りませんけど?人違いですよ」と宣い学校からクラスメイト達を追い出す。

本当の手紙は実は「皆大好きだよ😘ずっと皆のこと思ってるね💕」というふうに特定の誰か宛ではなく皆が対象。最後の最後で勇気が出なくて「もう!私の馬鹿!」となる。ラブレターは破っちゃったしもう望みは叶わないだろうから、青春よろしく「バカヤロー」と空に向かって叫んでFin。



うーん、
うっぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ