心の扉

日々の事などを記していきます。

零~刺青の聲~(二次創作)

2006-12-02 23:14:05 | 二次創作
PS2のゲーム『零~刺青の聲~』の二次創作です。
二次創作というものは、初めてだったので、ダメな部類に入ると思います。
ゲーム内の彷徨う母娘の葛原梢ちゃんが好きだったのです。
物語は、彼女視点で進んでいきます。
宜しかったら、読んでいただけると嬉しいです。

『父さま、投げるよ』
『あぁ、頑張って此処まで届かせてくれよ』
笑いながら、そう言った父さまに少し怒りながらも私は鞠を投げ返した。
鞠は、望んでいた場所を大きく外れ、崖っぷちにまで転がった。
不安になって父さまを見ると心配するなというような顔をしていた。
父さまは、ちょっと待っていなさいという仕草をすると鞠を取りにいった。
私は、遠くから父さまが鞠を取るのを眺めていた。
父さまと鞠の距離まで後少し。
父さまが鞠を手にして私に向かって笑いかけた瞬間、父さまは崖に飲み込まれた。
私は怖くて茫然とするしかなかった。
どれくらいの時間が流れたのだろう。
涙とともに震えながら出した声は、余りにも小さくて『父さま』と呼んでも返事は返って来ることはなかった。
母さまに伝えなければと走って家に帰った。
途中で下駄は脱げてしまったらしく家に着いた時、足からは血が流れていた。
母さまは、息を切らして帰ってきた私に驚いてたみたいだった。
母さまは、『梢、どうしたの??父さまは??』と私に聞いた。

『……父さまが、父さまが居なくなっちゃった』
その時、私はなぜか本当の事を言えなかった。

私の言葉を信じて、母さまは、毎日毎日、私を連れ、父さまを探し歩いた。
会う人会う人に父さまの事を聞く、母さまを見る度に、私の心は重くなっていった。
『ごめんなさい』
その言葉を何度も何度も噛み締めた。
けど……母さままで居なくなったら、どうしよう。
『ごめんなさい、母さま。ごめんなさい……父さま』
そんな事ばかりを考えていたせいなのか、今日が何日なのか私には解らなくなっていった。
ただ、わかるのは、知らない屋敷で父さまらしき人の後ろ姿を追っていくこと。
……謝らなくちゃ、待って、行かないで、父さま。
必死で追う私を無視して父さまは、どんどん奥に進んでいく。
ここで、見失ったら、もう二度と言えない。
……母さまが泣いてしまう……。
私は、居なくなってもいいから……。
そうならなくちゃいけないから……。
『父さま、待って』そう言って私は屋敷の奥へと足を進めた。