極右過激主義者の脅威の高まりと国際的なつながり
欧米諸国で高まる極右過激主義者の脅威
近年,白人至上主義やネオナチ思想を有したり,外国人排斥等を主張したりする極右過激主義者によるテロの実行や奨励,軍事訓練キャンプの運営等,テロに関連した動向が顕著となっている。こうした中,国際刑事警察機構(ICPO)のストック事務総長は,2020年2月,欧米諸国で過去2,3年に極右関連事案が320%増加したと述べたほか,国連テロ対策委員会執行事務局(CTED)は,同年4月,極右過激主義者による攻撃の頻度や被害が近年増加傾向にあると言及するなど,その脅威の高まりが指摘されている。
欧米諸国には多数の極右組織が存在する一方で,近年の極右テロの実行犯は,そのほとんどが組織に属さない単独犯である。これらの実行犯を含む極右過激主義者は,過去のテロ実行犯の影響を受けその模倣をしているほか,オンラインや紛争,イベント等への参加を通じて交流しているとされ,テロを含めた極右関連の動向は国際的な広がりを見せている。
近年の主な極右テロ
多数の死傷者が生じた主な極右テロに,2011年7月にノルウェーで発生した連続テロ(77人死亡)や2019年3月にニュージーランド南部・クライストチャーチで発生したモスク銃撃テロ(51人死亡)がある。
2019年は,米国南部・エルパソのスーパーで,男がヒスパニックを標的として銃を乱射した(22人死亡)ほか,ドイツ東部・ハレでは,男がシナゴーグへの侵入を試みた末,通行人らを銃撃するなどした事件が発生した(2人死亡)。また,2020年には,ドイツ中部・ハーナウで,外国人が集まっていたシーシャ(水たばこ)バーを男が襲撃し,9人が死亡する事件が発生した。
クライストチャーチにおけるモスク銃撃テロの実行犯ブレントン・タラントは,ノルウェー連続テロの実行犯アンネシュ・ブレイビクの影響を受けたことを自認したほか,2019年以降に発生した極右テロ実行犯の多くが,タラントが犯行直前にソーシャルメディア上に投稿した文書(注1)を見たり,同人と同様に犯行の様子をインターネット上で生中継したりするなど,同人の影響を受けていたとみられている。
国際的につながる極右過激主義者
海外の紛争,イベント等への参加
2014年,ウクライナの親ロシア派武装勢力が,東部・ドンバスの占領を開始したことを受け,「ウクライナの愛国者」を自称するネオナチ組織が「アゾフ大隊」なる部隊を結成した。同部隊は,欧米出身者を中心に白人至上主義やネオナチ思想を有する外国人戦闘員を勧誘したとされ,同部隊を含めウクライナ紛争に参加した欧米出身者は約2,000人とされる(注2)。
他方,白人至上主義組織が運営する軍事訓練に欧米出身者が参加しているとの指摘もある。米国国務省が2020年4月に白人至上主義組織として初めて特別指定国際テロリスト(SDGT)に指定した「ロシア帝国運動」は,ロシア西部・サンクトペテルブルグで軍事訓練キャンプを運営しているとされ,ドイツやスウェーデン,フィンランドの出身者が同キャンプに参加したと報じられた。訓練を修了した者の中には,ウクライナ紛争に参加した者もいるとされる。このほか,ネオナチ思想を有する者が主催する音楽コンサート,総合格闘技等のイベント会場も,極右過激主義者が接点を持つ場所として指摘されている。
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https://www.moj.go.jp/psia/ITH/topics/column_03.html