今日の一枚/Speakeasy

昨夜隠れ酒場で流れたレコード、その中から毎日一枚ご紹介していきます。

Kenton,Christy,Freshmen/The Road Show

2014-03-31 08:39:11 | Weblog
このアルバムは中味は勿論のことだが、見開きのライナーノーツがとても楽しませてくれる。当時のコンサートツアーの様子が手に取るようにわかるのだ。

彼らは広いアメリカをバスで旅する。バスの中ではスコアーを書く者、ひたすら眠る者、ポーカーゲームに熱中する者、様々だ。移動中のバスで眠ることもある。狭い車内でひとかたまりのミュージシャンが長い時間を過ごす。男だらけの中だが顔見知りに囲まれてJune Christyも楽しそう、、、そんな様子が伝わってくるジャケットだが、、、
実はこの時June ChristyとKentonはひどい風邪に悩まされていたという。この事は後にFresmenのRoss Barbourが書いた本で知った。Capitolによるコンサートの録音は二日間延期された。Juneの喉の調子が悪いから。。

しかしもうタイムアップ、ということで録音が強行された。出来上がったテープを聴いてJuneは非常に落ち込んだという。発売に難色を示した。説得したのはKenton。スタジオワークで何とか調整するからと彼女を慰めた。

ミックスされたテープを聴いてRossは「Studio Magic」と表現した。「いまでもJuneはこのアルバムが発売されたことを悔やんでいるだろう」とも書いている。
確かにSeptember Songを聞くと、元々ハスキーなJuneの声はもっとかすれて高音が出きっていない。しかしこれはライブだ。その場の楽しさが伝われば十分。そして裏話を知れば知るほど、好きになっていくアルバム。

Terry Gibbs/Vibes On Velvet

2014-03-28 09:51:17 | Weblog
Terry Gibbsはビブラフォンプレイヤー。若き頃をTommy Dorsey (1946,1948), Chubby Jackson(1947-1948), Buddy Rich (1948), Woody Herman's Second Herd (1948-1949),Benny Goodman等のグループで過ごし、50年代はスタジオミュージシャン、アルバムリーダーとして数多くの録音を残した。

このアルバムは1955年録音、4リズム+5本のSaxをバックに演奏している。Jazzの作品としてはC級であるが、ムードミュージックとして聞けばそこそこ楽しめるアルバムである。安キャバレーのフロアに流れるダンスミュージックの様に、妙にレトロな味がするのだ。そしてこのアルバムを聴き進めると、戦後日本の歌謡曲がどのようにして作られていったかよく解る。

有名な「Boulevard Of Broken Dreams」を始めTerryのオリジナル曲「Lullabye Of Swing」「Two Sparkling Eyes」等は日本語の歌詞が素直に乗るし、日本の楽曲と言っても皆信じるだろう。
「爪」「あいつ」など素晴らしい作品を多数残した平岡精二は元々ヴィヴラフォン奏者だった。当然Terryの作品は聞いていただろうし、大きな影響を受けたはずだ。インスパイアーされてこれらの名曲を書き下ろしたに違いない。

1950年Down Beat誌で読者人気ナンバーワンVib奏者に選ばれたこともあるTerryだが、評論家筋には評価が低い。流麗でクールな演奏を僕はとても好きだが、あまりにもわかりやすく親しみやすい彼の作品をジャズとは認めたくなかったんだろう。しかしファンは彼を支持し、21世紀まで彼の音楽活動は続いた。

ジャズ界であまり語られることのない人だが、、日本ムード歌謡の蔭の功労者として記憶したい。こんな事思うの、僕だけだろうか?

For You From Us/The Astronauts

2014-03-20 10:00:03 | Weblog
Astronautsは「太陽の彼方へ/Movin'」の大ヒットで一躍人気者となった。橋幸男が「ノッテケ、ノッテケ、ノッテケサーフィン、、」という陳腐な歌詞を乗せて歌い、リズム歌謡と言う妙なジャンルが出来たのもこの曲がきっかけだった。

元々インストゥルメンタル曲だったものに強引に歌詞を乗せて歌うと言うのは暴挙と言えば暴挙、斬新と言えば斬新、高度成長時代の波に乗りまくっていた日本人のバイタリティーが成し得た技かも知れない。

さてこのアストロノゥツ、海とは縁の無いコロラド州ボーダーの学生が結成したロックバンド。R&BやR&Rを演奏してスクールパーティーで人気を博していた。その人気に目を付けたRCAがサーフィン、ホットロッドグループに仕立ててデビューさせた。
アメリカではHOT100に入るのが精一杯と言う程度であったが、日本ではサーフィンブームに乗って大人気を獲得した。しかし僕が彼等のファンになったきっかけはサーフィン物では無かった。
TVで観た「Unchain my heart」これが格好良かった!今になって思えば彼等が特別格好良く、演奏が素晴らしかった訳では無かったはずだが、何しろ初めて見るスタイル、音に引き込まれたのだろう、結局全アルバムを手に入れた。(ブスでもなんでも初めての経験をさせてくれた人は忘れられない、今になっても何故かドイツで発売された復刻CDやRaritiesを買っているのだから)

「Unchain my heart」を収録した「For you from us」は彼等にとって六枚目のアルバム。ブルースやロックンロールのカバーが中心で、チャックベリーの名を知ったのはこのアルバムだった。
大滝龍一、山下達郎等彼等にはコアなファンがいるが、いずれもサーフィンインストゥルメンタルグループAstronautsのファン、僕の様にロックグループとして愛しているのは珍しいだろうな。

Paul Weston/Floating Like A Feather

2014-03-17 10:42:07 | Weblog
Paul Westonはムードミュージックの父と呼ばれている。

1940年代全米はスイングジャズに熱狂していた。何百、いや何千というスイングバンドがあらゆる都市に存在し、ボールルーム、ナイトクラブを席巻していた。
Paul Westonは当時Tommy Dorsey Orchestraにアレンジャーとして所属、主にDoris Day、Joe Stafford(後に結婚)らの歌手に編曲を提供していた。

その後1944年Capitol Recordの設立と共にA&R兼Artistとして入社、かねてから構想を持っていた「聞き手をリラックスさせ、ロマンチックなムードに浸らせる」音楽を制作し始めたのだ。それが「Music for Dreaming」であり、最初のムードミュージックと言われている。

スイング全盛の時代でありながらこのアルバムは大成功を収め、彼は次々とヒットアルバムを発表した。その後1950年代にはスイングに変わってムードミュージックが時代の主流となり、多くのムードミュージックが生まれた。

このアルバムはタイトル通り(羽のように浮かんでいる)なめらかで一寸リズミカルなアレンジが、疲れた心を軽くしてくれる。

La Vergne Smith

2014-03-14 09:12:07 | Weblog
僕がニューオルリーンズに行ったのは80年代始め。もう既にBarbon Streetは日光江戸村化していて、古いのは建物だけ、後は全て観光客向けのアトラクション化していた。

深夜溢れるほどの人がBarbon Streetを行き交うが、その99%が観光客でその90%が白人という有様だった。ジャズクラブらしき店内で演奏しているのも殆ど白人、それもフランスなどから出稼ぎで来ているミュージシャンが多かった。僕は「遙かなるニューオルリーンズ」というCDブックの取材に出かけたのだが、収めるべき音、風景が無くて困った。

そんな時出会ったのが一人の日本人。早稲田大学の学生で(恐らく卒業はしなかったろう)若い黒人ストリートミュージシャンのバンドでバンジョーを弾いていた。彼曰く「こんな所(Barbon Street)では本物は聞けない。観光客が踏み入れることの出来ないスラムに良い店があるよ。連れてってあげる。でもそのデンスケ(小型DATレコーダー)とカメラは持っていかないでください。危ない」。

深夜彼と待ち合わせてタクシーを飛ばした。Barbon Streetから10数分行ったところにその町(スラム)はあった。薄暗いストリートに数件のぼやけたネオン、その中の一件に足を踏み入れる。すると、、そこは別世界。客はオール黒人、年齢は50以上の人ばかり。80才くらいのおじいちゃんがいかしたブギピアノを弾いていた。約二時間楽しんだが、音楽はノンストップ。バンドなのかセッションなのか分からないが、次々様々な楽器を持ったおじいちゃんがステージに上がる。中にはピアノを弾き語りするおばちゃんもいた。皆いかしてる!僕が想像していたニューオルリーンズはここにあった。

La Vergne Smithはフランス系の黒人だろう。1950年代ニューオルリーンズでピアノの弾き語りをしていたそうだ。Hadda Brooksに似た声の持ち主で、しっとり語りかける様に唄う。Barbon Streetの片隅から彼女のI Surrender Dearが聞こえてきたら、間違いなくその店に引き込まれていったことだろう。

The Bob Crewe Generation/Let Me Touch You

2014-03-10 08:11:30 | Weblog
Four Seasons, Diane Renay, Mitch Ryder, Freddy Cannon, The Toys等のProduceで60年代~70年代大活躍したBob Creweが、自ら67年に結成したインストグループ。

デビューアルバムのタイトル曲「The Music Girls Go By」はペプシコーラのCM曲として制作され、大ヒットを記録、これをカバーしたAndy Wiliamsのシングルも大ヒット、Producer-Song Writerという裏方から一躍表舞台に飛び出した。

このアルバムは自らのレーベル「Crewe」から1968年頃発売されたもの。歯切れのいいギターが刻むGo-Goのリズムをベースに、Herb Alpertに似たブラスをフューチャー、12弦ギターやアルトサックスを交えながら独自のイージーリスニングの世界を作り出している。何とも切ないGolden Earing、華麗なピアノが奏でるイントロがすてきなWives And Lovers等どの曲をとってもCreweのセンスが光る好アルバム。パーティーのBGMにはうってつけだ。

CD化もされておらず今となっては幻の一枚になってしまったが、、沢山の方に知っていただきたいグループ。

ちなみにWives & Loversは1970年代、僕は、自身が制作していたTBS Radio「あなたとタキと駅の側」の番組テーマとして使用した。

Hal Blaine/Deuces,

2014-03-09 11:11:19 | Weblog
一寸長いが次ぎの表をざっと見て欲しい。

Connie Francis | Where The Boys Are | 4
Elvis Presley | Can't Help Falling in Love | 1
Bobby Darin | Eighteen Yellow Roses | 10
Jan & Dean | Surf City | 1
Sam Cooke | Another Saturday Night | 10
The Beach Boys | Surfin' USA | 3
The Cascades | Rhythm Of The Rain | 3
The Crystals | Da Doo Ron Ron | 3
The Ronettes | Be My Baby | 2
Dean Martin | Everybody Loves Somebody | 1
Johnny Rivers | Mountain of Love | 9
Roy Orbison | It's Over | 9
The Beach Boys | I Get Around | 1
The Marketts | Out of Limits | 3
Barry McGuire | Eve Of Destruction | 1
Gary Lewis & The Playboys | This Diamond Ring | 1
Herb Alpert & TJB | A Taste Of Honey | 7
Jay & The Americans | Cara Mia | 4
The Byrds | Mr. Tambourine Man | 1
Frank Sinatra | Strangers In The Night | 1
Johnny Rivers | Poor Side Of Town | 1
Nancy Sinatra | Boots | 1
The Beach Boys | Good Vibrations | 1
The Mama's & Papa's | California Dreamin' | 4
Frank & Nancy Sinatra | Something Stupid | 1
Scott McKenzie | San Francisco, Wear Flowers... | 4
The Association | Windy | 1
The Fifth Dimension | Up, Up & Away | 7
The Monkee's | A Little Bit Me | 2
Simon & Garfunkel | Mrs. Robinson | 1
The Vogues | My Special Angel | 7
Glen Campbell | Galveston | 4
Henry Mancini | Love Theme- Romeo & Juliet | 1
Andy Williams | Love Story Theme | 9
Barbara Streisand | Stoney End | 6
Hamilton, Joe Frank & Reynolds | Don't Pull Your Love Out |
Paul Revere & The Raiders | Indian Reservation | 1
The Partridge Family | I Think I Love You | 1
(Hal Blaine Official Site"Discography'より)

これらはHal BlaineがDrumsを担当した作品リストの抜粋。そして数字がチャートアクションだ。えっこんな作品も、と驚かれるはずだ。アメリカのヒット業界を陰で支えてきたと言っても過言ではない。

このアルバムは彼のソロ名義で発売された物。Halのダイナミックでタイトなドラミングがたっぷりと楽しめる。
そしてここに参加しているミュージシャン、Frank Capp/Glen Cambell/Billy Strange/Tommy Tedesco/Carol Kaye/Howard RobertsらはHalと一緒に前述のアーティスト等のレコーディングを支えてきた。まさに60's All American Pops Bandだ。

Billy Strange/Mr.Guitar

2014-03-07 10:26:11 | Weblog
中高生の頃Nancy Sinatraの「Sugar」がBillyとの出逢いだった。

彼はこのアルバムで編曲とギターを担当していた。何とも言えぬ味なギターに興味を持った。僕が12弦ギターを手にしたのも彼の影響。そう、彼は多彩なギターサウンドを繰り広げる人だが、特に12弦ギターでその名をあげた人だ。ソロデビューアルバムも1963年に発売された「Twelve String Guitar」である。60年代西海岸で録音されたPOPSの12弦ギターはBillyかGlen Cambellの物、と言っても過言ではないだろう。

このMr.Guitarは1964年の作品。トヮンギーなロックから大人のエレキ、ラウンジなアコースティックサウンド、12Strings Guitarの世界、、スタジオミュージシャンとして数え切れないほどのセッションをこなしたBillyが、まさにMr.Guitarにふさわしい世界を展開している。
Maria Erena/The Great Escape/Deep Purple/Charade/Washington Square/Kansas City/The Third Man Theme等全12曲収録。

Beverly Kenney/Born To Be Blue

2014-03-05 09:48:59 | Weblog
Blue、、、Sky Blueに代表されるきれいな色。しかし感情に置き換えると、憂鬱、悲観となる。
「Born To Be Blue」Mel TormeとRobert Wellsが作った名曲。Julie London/Anne Phillips/Nancy Wilson等数多くの歌手が名唱を残しているが、このBeverly Kenneyの歌が大好きだ。

大体歌というのは生き物でその歌手その歌手の解釈、表現方法でがらりと雰囲気が変わる。又歌い手そのもののキャラによって受け手の想像力がかきたてられて、歌が表情を変える。
JulieのBorn To Be Blueはちょいと汚れた女が「どうせあたしゃ生まれつきこんな調子、、」とあきらめを交えて自嘲的に呟く感じ。Anneのそれはもう消え入りそうになりながら哀しみたっぷりに「生まれてこの方ずっとブルー」と今にも死んでしまうんではないかという感じがする。

さてこのBevはというと「何を見ても面白くない、だって私生まれつきブルーなのよ」と一寸甘えてすねた女の問わず語りの可愛い独り言に聞こえる。
Go Away My Love、It Only Happens When I Dance With You、スペインのAngel盤にだけ収録されているCould't Be Cuter等女の可愛さが溢れる、僕の愛聴盤。

Gloria Lynne/Gloria,Marty & Strings

2014-03-04 09:44:15 | Weblog
ゴスペルシンガーを母に持つグロリア、どちらかと言えばソウルフルにシャウトするイメージが強い。が、このアルバムでは名手Marty Paichのゆったりとした、ゴージャスなストリングスをバックに、素晴らしいバラードを聴かせてくれる。

Serenade In Blue/My Devotion/I Should Care/I Wish You Love等どの曲をとっても名曲、名唱揃いだが私的ベストはDon’t Take Your Love From Me。
ブルージーなストリングスに導かれて、一言一言かみしめるように歌う。

夜空と星を引き裂いたら空は悲しむでしょ
バラから花びらを取ったらバラは泣き出すわ
あなたの想いを私から無くしたら私の心は壊れてしまう
そう私の命はあなたの物
どうか火を消さないで

あなたは鳥が飛べなくなるように羽をもぎ取る?
あなたにそんな事して欲しくない
それが私のお願い
どうか私からあなたの心を離さないで

深夜ライトを消して聴き入るとどうにかなりそう。。。


1962年発売の、やはりバラードアルバム「After Hours」と再発されている。

Gloria, Marty & Strings/After Hours