そらみみ

……

Mr・ホームズ 名探偵最後の事件

2018-01-21 | 観聴読
アマゾンプライム

思い出せないことばかりの、最晩年のホームズの日々
ワトソンは3年前に「さよならも言わずに」亡くなり
ハドソン夫人もとっくに亡くなっている

思い出せない
でも思い出せないことは自覚している
身体から脂肪が抜け、余ってしまった皮膚は薄っぺらいシワになり重なる
老人斑は手にも顔にも数えきれない
筋肉は薄くなり、骨も関節もいうことをきかない

父親を英国に引き止めたために、不幸にした日本人の妻と息子
ウメザキとの経緯も記憶が定かではない

引退を決意した最後の事件
一枚の写真
写真の女性はアン
カメオローズの香り
左手だけの白い手袋
田舎に引っ込むことにした最後の事件
未解決だったのか、どこで自分が間違ったのか思い出せない

折々に訪れる記憶の断片を書き留め、
事実だけをつなぎ合わせて物語を完成していく

ホームズが暮らす田舎は殺風景で美しい
海に近い田舎で家政婦とその息子ロジャーと養蜂をしながら生活している
「彼はわたしの宝物だ」
ロジャーは宝だと認める
最後の事件の全容を思い出す
自分がウメザキに何を言ったかも思い出した

孤独を認めた先には
暖かい孤独があった

遠景に岸にそそり立つドーバー海峡の白い崖
そこを見渡せる草原に、先に逝った者の名を唱えながら
丸っこい石を円形に並べ、ホームズはその中に座っている