- 労政審の今後の労働時間法制の「建議」にあたっての談話 -
労働政策審議会は本日、今後の労働時間法制の在り方に関する「建議」を取りまとめた。しかしながら、全労連は以下のとおり、「建議」の内容だけでなく、取りまとめの手法もとうてい納得できない。厳しく抗議するとともに、広範な批判や危惧の声に真摯に耳を傾け、拙速な法案化・国会提出を慎むよう、安倍政権に強く求める。
第一に指摘すべきは、三者構成の労働政策審議会の基本原則を逸脱する強権的な取りまとめとなったことである。「高度プロフェッショナル制度の創設」と「企画業務型裁量労働制の新たな枠組み」という、今回の「建議」の根幹部分(=法改正の骨格部分)には、「認められない」とする労働者代表委員の意見が付されたとおり、労政審で労使の意見の一致がなかったことは明白である。にもかかわらず、使用者側の意見に偏重した取りまとめが強行されたことは、手続き的にも重大な瑕疵があるものといわざるを得ない。
厚労省がこうした強権的な取りまとめを強行した原因としては、産業政策審議会など労働側の代表は一人もいない場での意見をそのまま取り上げ、閣議決定を先行させて厚労省と労政審に押し付けた安倍首相のクーデター的な手法がある。ILOなど国際機関も求める三者構成原則を逸脱した悪質なやり方であり、認められるものではない。
第二に指摘すべきは、内容の点においても、8時間労働制という労働者保護法制の根幹を揺るがずものとなっており、許されざる改悪だということである。
高度プロフェッショナル制度で労働時間規制(労働者保護)が完全に取り払われるだけでなく、企画業務型裁量労働制やプレックスタイム制の大きな要件緩和も盛られており、8時間労働制という労働者保護法制の根幹そのものが脅かされている。これでは、労働者の権利性が著しく形骸化され、長時間過密労働にいっそうの拍車がかかることは明らかである。
過労死・過労自殺やブラック企業が社会問題になっているなか、いま必要なのは、反対に、労働時間の上限規制の実現など、労働時間短縮の具体策であることを強く指摘しておく。
全労連は、今回の「建議」に強く反対し、労働組合の共闘をいっそう強めて反撃していく。トマ・ピケティ氏の『21世紀の資本』が大ゼストセラーになっているように、賃上げや格差是正が日本経済の再生にとっても不可欠の課題になっているもとで、「建議」は雇用をいっそう劣化、不安定化させ、逆に不況を招く誤った経済対策であることを明らかにし、国民的な共同をひろげていく。
2015年2月13日
全国労働組合総連合
事務局長 井上 久
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