以前、井上敏樹がインタビューの中で戦隊番組の脚本を書くとき子供を意識したことはないと言っていた。
10月16日の時点で33話が公開された「ドンブラザーズ」。
ここまでの展開を振り返り整理しておきたい。この〝最新ゴレンジャー〟はカーレンジャーやジェットマンと同じ種類のコメディーシリーズと目されていたが、予想を上回る〝コメディー風の何か〟だ。作り手の本気度(暴走度)が高く、おもしろい。
最初は脚本家の井上敏樹が戦隊ヒーローにおけるコメディーの新機軸を模索しているのかと思った。もちろんその要素が強いのだが、公式のオーディオコメンタリーなどを観てみるとどうやら各話の担当監督や若い演者にも引っ張られて現在の形になっているらしい。とくに志田こはくのコメディエンヌぶりは演技経験が短いことを考えると驚異的だ。
同シリーズのコメディー路線のものとドンブラザーズの違いは数多いが、中でも特異なのが主に鬼頭はるかが発するメタフィクション目線のセリフだろう。作品の構えとして「これコメディーですよ」というのを隠そうとしていない。
戦隊ヒーローにつきものだった「名乗り」を廃していることや、わかりやすい敵の存在を描いていないことなどからもわかるが、明らかに過去作品とは違った新しさを標榜している。ピンクの戦士を男性が演じるのも現代的なテーマ性を盛り込んだ結果だろうし、6人目の追加戦士が2体に分離して違った人格を持っているのも、普段とSNSで発信するときの人格が異なるという現代にありがちな現象を反映させているように見える。
さらに本作が特殊なのはこの世界を構成する設定が明らかになってきたのが中盤を過ぎてからという遅さだ。主人公たちがナゼ変身できる力を身につけたのか、脳人や獣人とは何なのか、本当の敵は人間の持つ過剰な欲望の権化ということでいいのか、など普通なら遅くとも5、6話くらいまでに明らかになることが謎のまま話が進んでいる。なにしろヒーロー5人(6人)の中のひとりに関しては変身後の姿でしか面識がなく、人間のときは何処の誰なのか全員がわかっていない。これはひょっとしたら終盤まで、もしくは終劇しても明かされないネタなのかもしれない。もちろんシリーズ初の試みになるだろう。
中盤で明らかになった事実の中に「獣人は人間をコピーする」というのがある。これはアバター(仮想現実での分身、化身)の発想を用いた設定と思われ、いかにもSNSによるコミュニケーションが一般化した現代の物語という趣だ。
ここで整理する意味で登場人物の位置関係を考えておく。最近の話でわかってきたことを総合して予想すると、雉野ツヨシの奥さん雉野ミホは鶴の獣人であり、そのオリジナルは犬塚 翼の彼女・夏美だ。さらに推理すれば脳人ソノイは主人公ドン・モモタロウのアバターであり、ウサギの着ぐるみを着たマンガ家・椎名ナオキは鬼頭はるかのコピーという気がする。とくに鬼頭はるかの件は「なりたい自分が最大のライバル」という古典的なテンプレだ。ここで終盤に向けて重要になるかもしれないポイントが〝各アバターがコピーでありながら自律してそれぞれの人生を生きている〟ということだ。
少しずつ設定公開されている流れを考えると、中盤を過ぎて広げた風呂敷をたたむ態勢になってきたのかもしれない。ライムスター宇多丸もアフター5ジャンクションで言っていたが、1話たりとも見逃せない。
「100分de名著」とか「なつぞら」とか「全裸監督」などを観ていたので後回しになっていたリュウソウジャーを少しずつ観ています。先日観た回に、ピンクの娘が大きな声で音痴な歌を唄うシーンがありました。コレよかったです。
写真で見る彼女は今ひとつ特徴がつかみにくく、若さゆえの薄味な感じのためか印象に残りにくかったです。しかし、この歌って闘うというリンミンメイ的演出が彼女の魅力にハマった感じがしました。
衣装のせいでセクシー路線の魅力は望むべくもない感じですが、新しいヒロイン像が見えたせいで、いつもより少しマジメに観てしまいました。