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■ 三比主義という経営&マーケティングの限界 企業のミッションとは何か?

2008年07月15日 | Weblog

企業の目標をどう設定するか?

企業活動の出発点である。
クリティカルパスである。

企業目標を考えるとは?

何が、社会にとって、企業をとりまく人々にとって、大切なことか?
幸福にする事につながるか?

を考えることである。

 この稿は、まず、三比主義から話を始める。

 A.三比主義的経営&マーケティングの弊害と凄さ

三比主義とは?!(さんぴしゅぎ)
対前年比、対他社比、対予算比
で経営管理することである。

資本主義の伝統的な、本質的な管理方法である。

しかし、この考え方は、近代的企業が産業革命以後誕生して近代経営をし始めたときから何も変わっていない。
明らかに金属疲労を起こしている。
社会主義的、共産主義的経営が終わったと同じように。

 ■ まず、三比主義の凄さとは。

適者・強者生存で、弱者を淘汰し最適な企業を残し結果社会に貢献するという、かなり強引な、しかし間違いなく一定の効果が上がる方法論である。
そのロジックは筋論としては正しい。

近代産業革命が起こってから、今までその命脈を保ってきた手法であり、そのすべてを排除するものではない。

 ■ 逆に、三比主義の弊害とは。

 ・数字を追うことが目的化する。
・ 過剰競合が生じ、あまりに無駄が多く資源活用の生産性が悪くなる。
・ 消費を過剰に刺激し、欲望を極端に走らせる
・社会的な不正義が、不的確性が多く発生する。(例えば環境問題、格差問題、ストレス社会誕生・・・)

しかし、三比主義を是正するのに共産主義までいくと行き過ぎである。
あまりに人間の欲望に鈍感で性善説に立ち過ぎるからである。

三比主義の修正・革新・進化については、いまだ発展途上であり、現代マネジメントにおいてその解はでていない。
試行錯誤中である。


 B.三比主義の功罪:

改めて三比主義(さんぴしゅぎ)について客観的な解釈をしておく。

 1.対前年比:

ポジ:拡大再生産は不可欠
(起業は利益を上げてその富を再投資しなくてはならない。
革新性を求めて変わることで、環境の変化に適応して、次の利益を確保し、投資家に還元しなくてはならない。) 

ネガ:既存事業のへの拘泥
(経営のマネジメント、商品・販売マーケティングが同じ方法で進み、革新性が生じず、徐々に環境からかけ離れてしまい、マーケットの賛同を得にくくなっていく。)

 2.対他社比:

ポジ:他社に負けることはマーケットからの退場を意味する。
(相手よりいい商品・サービス、いいコミュニケーションをすることにより、短中期的な競争に勝つノウハウを獲得できる。)

ネガ:自主性が失われる。
(他社のことばかり見ていては、自分のこだわり、新規創造性の芽を摘むことになる。投資方向性が他社を意識した単純な優位性確保だけに向かう。)

 3.対予算比:

ポジ:経営の精緻化が図れる。
(しっかり管理して、内外に約束したコト(予算)を守ることができる。
しっかり守ることで、立てた予算のどこに問題があったのかが把握でき、経営の予測精度を高めることができる。)

ネガ:環境の変化に適応できなくなる。
(予算にこだわって環境の変化に鈍感になる。相手の出方、景況感のくるい・・・などへの迅速な対応が出来なくなる)

 4.別の視点:

「三比主義」は、内向志向(思考)に陥ることが多くなる。
社会へ目がむかなくなる。
自分の利益に忠実になり過ぎ、
反社会的行為に走る、
法的には問題はないが無過失責任的な結果を生じてしまう、
ことになりやすい。
社会からの、生活者からの、声に疎くなる。

これらの反面教師的な象徴として、昨今は、
コンプライアンス、CSR、耐震・食品偽装問題など
のリスクキーワードがクローズアップされてきているのである。

 C.三比主義の克服:

 資本主義では、最後は金銭に換算され成果が問われる。
そして、ストックホルダー、ステークホルダーにいくら還元されたかが問題とされる。
いくら、「三比主義」からの脱却を求められても、利益が上げらなければ、社員から、銀行から、協力してくれる会社から、株主からの評価は得られない。
どうしても利益追求に走らざるを得ないのである。

構造的に見ても、企業の自覚、経営者の自覚を待っていたのではなかなか弊害を除去することはできないのである。

従って、三比主義の弊害を克服するには、古典的な経営指標ではない、別の新しい、創造的な経営指標の導入が不可欠である。
新しい視座を用意し、社会的な認知を与え、法的にも担保されることが求められている。
そして、その指標によって経営の透明性が増し、生産性が向上し、企業収益が増大することが求められるのである。
そうでないと、新・経営指標は、資本主義の世界ではなかなか定着しないのである。


では、単純な三比主義ではない別の方法とは何か?

 1. 制度的、財政的な支援を担保して、寄付や社会還元事業・イベントが出来るようにすること。

その行為が、その企業の信用を高め、企業収益にいい影響を与えるような社会土壌をつくっていく、気運を高めていく。
制度的指標の整備(利益の1%拠出ルールなど)もこの方向のひとつである。

 2.三比主義のような量的指標だが、三比主義の単純な収益オリエンテットとは異なる別の指標を導入する。

 例1.マーケティング会計指標の導入:

この数年の売り上げ・利益に占める新製品構成比で目標化する。

 例2.修正時価総額指標の導入:

単純な時価総額ではなく、いろいろと工夫をして、株価形成の需給ギャップをもろに受けない、ぶれない、客観性のある指標とする。

株価は、企業の実績、成長性、ブランド力、またマーケットの様々な状況を反映した、いろいろなプレーヤーの目論見、期待値で形成される総合指標である。
これを企業評価に使わない手はない。
(例えば、半年、一年、数年の平均株価でみるとか?、同業界平均との乖離、同企業規模平均との乖離・・・など、また、事業の多様性を反映させ集中度、安全度指標を儲けるなどである。)

 D.企業利益の再配分について:その意味とは?

一方、あまり難しいことをいわずに、社会還元をしたらいいじゃないか?!
という論も根強くあるのも事実である。

そこそこの利益でいいから、そんなに儲けず労働分配率を上げたり、協力会社への利益圧迫をせずにもっと支払ったらいいじゃないか?
もっと納税したらいいじゃないか?
という意見もある。
しかし、それは評論家の言うこと。
そんなそこそこで適当なことは、生きた経営の世界の中ではありえないのである。
企業というのは、最大限の経営エネルギーを傾けてはじめて利益は微笑むのである。

そこそこの利益なんてのはありえないのである。

いままでに大企業、優良企業といわれながら、どのぐらいの企業がつぶれてきたか、
を見ればわかる。
要するに、経営は常に気を抜かず、必死に儲けるように経営して、初めて儲かるのである。
適当にやれば、違法をすれば当然の報いとして経営は傾くのである。

従って、結果としての利益から何らかしらの還元を実現していくことが妥当である。

 よくある論は、企業の外形に応じて利益の一部を供出する方向である。
外形(売り上げ、従業員数、資産等)に課税する方向はこの方法の典型的なものである。利益(儲け)に関係なく、外形に課税するのは、企業を疲弊させることにつながりかねない。

 利益の一部を供出する方向が妥当である。

企業は社会の公器なので外形に課税するという方法は一つのやり方ではある。
しかし、企業はサステナブルであり続けるために拡大再生産をしなければならないという現実もある。
いろいろ考えて見ると、利益の一部を供出して、その範囲で社会責任を負うというのが通常の健全な姿のように思う。

但し、利益の社会還元については、政府・自治体の支援が不可欠である。(税制上の経費参入、補助金・・・・・・等々)

 企業は、
雇用により従業員の生活を確保し生きがい・働き甲斐の場を与える、
商品・サービスの安定的な供給をおこない、
納税義務を果たす、

いろいろな責務を負っている存在である。
社会的な責任を負い、かつサステナブルな企業として社会責任を果たしていくためにも利益を確保しなくてはならないのである。


 F.新・経営&マーケティングの視点:(企業ミッションとは何か?)

古典的な「三比主義」を脱し、新しい企業目標をどう考えていくか?
新・経営&マーケティングのミッションをどう考えるか、設定するか、ということになる。

参考までに、別の原稿で発表した新しいミッションの視点を再掲する。

 以下再掲:

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

経営&マーケティングの新しいミッションとは・・・:

端的にいえば、

・生活のスタイル(購入、使用のスタイル)を変えなくてはいけない、ということである。
・供給側の立場で言えば、作り方・売り方のマーケティングのパラダイムを変えなくてはならないということである。

大切なポイントは「5つ」ぐらいになる。

 ■ポイント1:自然環境からの要請

①環境マーケティング:(待った無しのスロー、ロハス的ライフスタイルへの対応)
②再生マーケティング:オークション等、ノミの市、セコハン流通などモノの使用復活、ベストマッチングビジネス・・・)
③節約マーケティング(非在庫、受注生産、もったいない思想・・・)



 ■ポイント2:精神的目標からの要請:脱物質という要請

④幸福マーケティング:(量的満足から、幸福満足へ/GDPからGNHへ・グロスナショナルハピネス)
⑤会話マーケティング:(人と人のつながりを大切にしたコミュニケーションこそ重要)

 ■ポイント3:生活効率、便利性からの要請

⑥非占有マーケティング:
(情報満足-ゲーム、ネットサーフィン、小説、TV・・・
視認満足―タウンウォッチング、ウィンドウショッピング・・・
人間関係満足―出会い、パーティ、家族団欒・・・
等の非占有で満足をえる枠組みの導入)
⑦共有マーケティング:(レンタカー、カーシェアリング、レンタルビジネス・・)


 ■ポイント4.ネガティブな社会環境からの要請

⑧地道マーケティング:(ネガなことの清算をキチント、地道にする。例:高齢化対応)
⑨正直マーケティング:(食品・耐震偽装、アパレル原料偽装などいい加減な対応の排除)


 ■ポイント5.ポジティブな社会環境からの要請

⑩本物マーケティング:(富裕層、高質なものへの本物ニーズへの対応)
⑪公共マーケティング:(収益概念からフリーな分野、社会インフラづくり 例:介護・・・)

以上、今後のマーケティングは、今までの量的なマネジメントではとらえられない次元で、動き出していくことになる。

パラダイムが変わればマーケティングの方法も、マーケティングの目標も異なる。
新しい認識・行動が社会要請にもかなうし、ビジネスチャンスにもなる。

・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

以上、再掲

 単純な三比主義からは脱したいものである。

 そういえばトヨタはROEと同時に環境のCO2排出関連指標を経営の同列におくことを発表した。

この稿終わり