*********************************
///// 第18号 2003年12月9日
///// ~ マーケティング・インサイト ~
///// 「第1部 効果的な広告計画の立て方」
///// 発行 正田MARCOMコンサルティング
*********************************
「効果的な広告計画の立て方」について、広告戦略、調査、表現、媒体
選択、効果測定等の説明・提案を行います。
☆ 今週は、マーケティングの基本的なことで、あまり面白くないかもしれま
せんが、重要なことですから、お目通し下さい。
=-==-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=第18号=-
■■
■■ 広告計画の立て方-14: ターゲットの理解ー2 ターゲッティング
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
● この号のポイント
1 ターゲット・セグメンテーション
2 効果的な市場細分化の条件
☆ 前回は、広告計画の出発点は、商品・サービスの購入者、購入影響者を理
解することであり、その特性による市場細分化:マーケット・セグメンテーションの
必要性を述べました。今回は、どのようなセグメントを狙うのかというターゲット・
セグメンテーションの区分と、効果的な市場細分化の条件について説明します。
- - ー - ー - - ー - ー ー - ー ー ー ー ー
● 今週の事例 広告目標の例
☆ 洗濯用洗剤アメリカ(注1)
ターゲット: 自動洗濯機を使っている7000万人の主婦
メッセージ: ブランドXは、衣類をより早く、よりきれいに洗い、泡立ちも
少ない成分「Y」を含んでいること
浸透度: 上記のメッセージを認知する主婦の割合を 10%から40%に増加する。
☆ 花王アタック(注2)
ターゲット: ヤングミセス、団地・マンション住まいの主婦
メッセージ: わずかスプーン一杯で驚く白さ
浸透度: 広告認知度、知名率、保有率の調査を行ったが、広告目標は公表
されていない。
☆ これらの事例が示すように、広告目標の第一がターゲットを定義すること
です。また、そのターゲットには、これらの例のように広く市場全体を狙うこ
ともあるのです。
- - ー - ー - - ー - ー ー - ー ー ー ー ー
● ターゲット・セグメンテーション
前回、現在、多くの製品は成熟化し、多くの消費者は標準品では満足せず、
「自分にぴったりの商品・サービスを求めていると述べました。
そして、マーケット・セグメンテーションの定義として、「市場を、類似の行動形
式やニーズを持つ顧客グループに分割するプロセス」で、そして、「それぞれの
セグメントは、マーケティング戦略の到達されるべき市場ターゲットとして選択さ
れる」とのアメリカマーケティング協会の定義を紹介しました(注3)。
市場ターゲットの選択方式には、市場細分化戦略のほかに、マス・マーケティ
ング戦略、集中化戦略、ニッチャー戦略があります。
・マス・マーケティング戦略
マス・マーケティング戦略では、市場を異なったセグメントの集まりとは見ない
で、消費者全部がほぼ同質的と考えるのです。
すべての商品の顧客がセグメントに分かれているとは限りません。例えば洗
濯用洗剤の場合、10年くらい前は、「ひどい汚れ用」とか「香り」を強調するメッ
セージが広告されていましたが、現在では洗剤メーカー3社とも、大量に広告を
打っているのは主力ブランドです。冒頭の例のようにアメリカでも日本でも主婦
全般をターゲットにしています。
また、セブンイレブンの鈴木会長が、「日本人は北海道から沖縄までほぼ同じ
ような消費パターンだ。個店別の小さな差はあるが」と述べていたの読んだこと
があります。
上記のような洗濯用洗剤やセブンイレブンの市場は、ほぼ同質的と捉えてよ
いようです。このように市場全体を同質と捉えれば、マス・マーケティング戦略で
もよいわけです。本によっては、この戦略を「非差別型マーケティング」と呼ぶ場
合もあります(注4)。
・ 市場細分化戦略
前項のように市場全体を同質と捉えれるマス・マーケティング戦略に対して、
市場を、類似の行動形式やニーズを持つ顧客グループに分割して、それぞれ
の顧客グループに対応して、最適のマーケティング・ミックスを展開する戦略を
市場細分化戦略といいます。
そして、市場を同質的なグループに分割する「市場細分化基準」ついては、前
回簡単に触れました。その商品・サービスを購入している顧客は、どのような市
場細分化基準で分割すれば、もっとも適切に理解できるかを種々の調査を行い
確かめることが必要でしょう。
・ 集中化戦略、ニッチャー戦略
多くの商品を顧客グループ毎に仕様・ブランドを分割して進めるのが市場細分
化戦略ですが、企業規模によっては一つの市場セグメントに集中する集中化戦
略や、さらに小さな隙間市場に特化するニッチャー戦略もあります(注5)。
この市場細分化戦略を進める前に、考慮すべき条件について次項で説明します。
● 効果的な細分化の条件
市場細分化戦略は、ターゲット市場毎に最適な商品を開発し、ターゲットの購買
する小売店に商品を並べ、ターゲットに最適な媒体で広告することで、マーケティ
ング活動を効果的・効率的に展開するものです。
このように、セグメント毎にマーケティング活動を展開すれば効果的でしょうが、
同時に非常に手間が掛かり、費用も増大します。費用に対する効果を考えて、
市場細分化を有効に進める条件について、コトラーらの主張を紹介しましょう(注6)。
コトラーらは市場細分化戦略が有効である条件として、1)測定可能性、 2) 到
達可能性、3)維持可能性、そして、 4)実行可能性をあげています。
測定可能性は、そのセグメントの市場規模と購買力が測定できることです。
細分化基準によっては、具体的に市場を分割できない場合や、対象者を特定
できないことがあります。
到達可能性は、そのセグメントに到達するコミュニケーション媒体があるか、
流通チャネルがあるかという問題です。あるセグメントが見込み客として有望
であることがわかれば、同時に、そのセグメントが接触している媒体や、購入
している小売店を明確にする必要があります。
維持可能性は、対象とするセグメントは、利益をあげるだけの市場規模が
るかということです。確かに存在していても、対象人数が少なくて、生産ロット
に達しない場合には、事業としては諦めざるを得ないのです。
ただし、少数の顧客であっても、パブリシティに用いることができる場合には、
少量でも、特別な顧客用に製造する場合はあるでしょう。
実行可能性は、その企業として、そのセグメントに有効なマーケティング活
動を実際に展開できるかということです。例えば、7つのセグメントが確認でき
たとしても、その7つを別々に計画・実行できるスタッフがいないとか、別々の
広告を打つ予算がなければ、ある特定のセグメントに絞った集中化マーケティ
ング戦略を採用せざるを得ないでしょう。
このような市場細分化の条件を紹介したのは、マーケティングを展開する場合
には、自社の資源と顧客ニーズのマッチングが最大の要素ではありますが、ビ
ジネスとしての収益性を常に念頭に置かねばならないからです。
☆ まとめ
市場細分化に進む前に、2つのことを考える必要があります。市場細分化戦
略は、すべての商品に有効とは限らないこと。また、市場細分化戦略が有効で
ある条件としての 1)測定可能性、 2) 到達可能性、3)維持可能性、そして、4)
実行可能性を考える必要があるということです。
- - - - - - - - - - - - - - - - - -
注
1 S. ダトカ 、(八巻 俊雄 訳)(1998) 『新版 目標による広告管理DAGMAR(ダ
グマー)の新展開』 ダイヤモンド社、p11、原書p7.
2 佐川幸三郎『新しいマーケティングの実際』プレジデント社、p.229, pp.281-285.
3 Bennett, Peter D. ed.(1995) "Dictionary of Marketing Terms" 2nd ed.,
American Marketing Association, p.165.
4 P. コトラー & G. アームストロング(和田、青井訳)(1995)『新版マーケテ
ィング原理』ダイヤモンド社、p.299.
5 和田充夫、恩蔵直人、三浦俊彦(1993)『マーケティング戦略』有斐閣、pp.57-74,
p.268.
6 コトラー & アームストロング(和田、青井訳)前掲書、 pp.297-298.
_/ _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
_/
_/ あとがき
_/
_/ 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
_/
_/ お陰さまで第17号は、他のサイトを含め全部で789通発送いたしました。
_/
_/ 第16号で星野阪神のことを取り上げましたが、12月5日の朝日新聞に
_/ よれば、2003年のヒット商品の横綱は星野阪神でした。
_/ 顧客に感動を与えた星野阪神は「経験マーケティング」のよい事例と
_/ 言えるでしょう。
_/
_/ 皆さんのご意見、 ご感想など、お待ちしております。
_/
_/ ☆ それでは、次号もお楽しみに! 12月16日発行予定です。
_/
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
///// 第18号 2003年12月9日
///// ~ マーケティング・インサイト ~
///// 「第1部 効果的な広告計画の立て方」
///// 発行 正田MARCOMコンサルティング
*********************************
「効果的な広告計画の立て方」について、広告戦略、調査、表現、媒体
選択、効果測定等の説明・提案を行います。
☆ 今週は、マーケティングの基本的なことで、あまり面白くないかもしれま
せんが、重要なことですから、お目通し下さい。
=-==-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=第18号=-
■■
■■ 広告計画の立て方-14: ターゲットの理解ー2 ターゲッティング
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
● この号のポイント
1 ターゲット・セグメンテーション
2 効果的な市場細分化の条件
☆ 前回は、広告計画の出発点は、商品・サービスの購入者、購入影響者を理
解することであり、その特性による市場細分化:マーケット・セグメンテーションの
必要性を述べました。今回は、どのようなセグメントを狙うのかというターゲット・
セグメンテーションの区分と、効果的な市場細分化の条件について説明します。
- - ー - ー - - ー - ー ー - ー ー ー ー ー
● 今週の事例 広告目標の例
☆ 洗濯用洗剤アメリカ(注1)
ターゲット: 自動洗濯機を使っている7000万人の主婦
メッセージ: ブランドXは、衣類をより早く、よりきれいに洗い、泡立ちも
少ない成分「Y」を含んでいること
浸透度: 上記のメッセージを認知する主婦の割合を 10%から40%に増加する。
☆ 花王アタック(注2)
ターゲット: ヤングミセス、団地・マンション住まいの主婦
メッセージ: わずかスプーン一杯で驚く白さ
浸透度: 広告認知度、知名率、保有率の調査を行ったが、広告目標は公表
されていない。
☆ これらの事例が示すように、広告目標の第一がターゲットを定義すること
です。また、そのターゲットには、これらの例のように広く市場全体を狙うこ
ともあるのです。
- - ー - ー - - ー - ー ー - ー ー ー ー ー
● ターゲット・セグメンテーション
前回、現在、多くの製品は成熟化し、多くの消費者は標準品では満足せず、
「自分にぴったりの商品・サービスを求めていると述べました。
そして、マーケット・セグメンテーションの定義として、「市場を、類似の行動形
式やニーズを持つ顧客グループに分割するプロセス」で、そして、「それぞれの
セグメントは、マーケティング戦略の到達されるべき市場ターゲットとして選択さ
れる」とのアメリカマーケティング協会の定義を紹介しました(注3)。
市場ターゲットの選択方式には、市場細分化戦略のほかに、マス・マーケティ
ング戦略、集中化戦略、ニッチャー戦略があります。
・マス・マーケティング戦略
マス・マーケティング戦略では、市場を異なったセグメントの集まりとは見ない
で、消費者全部がほぼ同質的と考えるのです。
すべての商品の顧客がセグメントに分かれているとは限りません。例えば洗
濯用洗剤の場合、10年くらい前は、「ひどい汚れ用」とか「香り」を強調するメッ
セージが広告されていましたが、現在では洗剤メーカー3社とも、大量に広告を
打っているのは主力ブランドです。冒頭の例のようにアメリカでも日本でも主婦
全般をターゲットにしています。
また、セブンイレブンの鈴木会長が、「日本人は北海道から沖縄までほぼ同じ
ような消費パターンだ。個店別の小さな差はあるが」と述べていたの読んだこと
があります。
上記のような洗濯用洗剤やセブンイレブンの市場は、ほぼ同質的と捉えてよ
いようです。このように市場全体を同質と捉えれば、マス・マーケティング戦略で
もよいわけです。本によっては、この戦略を「非差別型マーケティング」と呼ぶ場
合もあります(注4)。
・ 市場細分化戦略
前項のように市場全体を同質と捉えれるマス・マーケティング戦略に対して、
市場を、類似の行動形式やニーズを持つ顧客グループに分割して、それぞれ
の顧客グループに対応して、最適のマーケティング・ミックスを展開する戦略を
市場細分化戦略といいます。
そして、市場を同質的なグループに分割する「市場細分化基準」ついては、前
回簡単に触れました。その商品・サービスを購入している顧客は、どのような市
場細分化基準で分割すれば、もっとも適切に理解できるかを種々の調査を行い
確かめることが必要でしょう。
・ 集中化戦略、ニッチャー戦略
多くの商品を顧客グループ毎に仕様・ブランドを分割して進めるのが市場細分
化戦略ですが、企業規模によっては一つの市場セグメントに集中する集中化戦
略や、さらに小さな隙間市場に特化するニッチャー戦略もあります(注5)。
この市場細分化戦略を進める前に、考慮すべき条件について次項で説明します。
● 効果的な細分化の条件
市場細分化戦略は、ターゲット市場毎に最適な商品を開発し、ターゲットの購買
する小売店に商品を並べ、ターゲットに最適な媒体で広告することで、マーケティ
ング活動を効果的・効率的に展開するものです。
このように、セグメント毎にマーケティング活動を展開すれば効果的でしょうが、
同時に非常に手間が掛かり、費用も増大します。費用に対する効果を考えて、
市場細分化を有効に進める条件について、コトラーらの主張を紹介しましょう(注6)。
コトラーらは市場細分化戦略が有効である条件として、1)測定可能性、 2) 到
達可能性、3)維持可能性、そして、 4)実行可能性をあげています。
測定可能性は、そのセグメントの市場規模と購買力が測定できることです。
細分化基準によっては、具体的に市場を分割できない場合や、対象者を特定
できないことがあります。
到達可能性は、そのセグメントに到達するコミュニケーション媒体があるか、
流通チャネルがあるかという問題です。あるセグメントが見込み客として有望
であることがわかれば、同時に、そのセグメントが接触している媒体や、購入
している小売店を明確にする必要があります。
維持可能性は、対象とするセグメントは、利益をあげるだけの市場規模が
るかということです。確かに存在していても、対象人数が少なくて、生産ロット
に達しない場合には、事業としては諦めざるを得ないのです。
ただし、少数の顧客であっても、パブリシティに用いることができる場合には、
少量でも、特別な顧客用に製造する場合はあるでしょう。
実行可能性は、その企業として、そのセグメントに有効なマーケティング活
動を実際に展開できるかということです。例えば、7つのセグメントが確認でき
たとしても、その7つを別々に計画・実行できるスタッフがいないとか、別々の
広告を打つ予算がなければ、ある特定のセグメントに絞った集中化マーケティ
ング戦略を採用せざるを得ないでしょう。
このような市場細分化の条件を紹介したのは、マーケティングを展開する場合
には、自社の資源と顧客ニーズのマッチングが最大の要素ではありますが、ビ
ジネスとしての収益性を常に念頭に置かねばならないからです。
☆ まとめ
市場細分化に進む前に、2つのことを考える必要があります。市場細分化戦
略は、すべての商品に有効とは限らないこと。また、市場細分化戦略が有効で
ある条件としての 1)測定可能性、 2) 到達可能性、3)維持可能性、そして、4)
実行可能性を考える必要があるということです。
- - - - - - - - - - - - - - - - - -
注
1 S. ダトカ 、(八巻 俊雄 訳)(1998) 『新版 目標による広告管理DAGMAR(ダ
グマー)の新展開』 ダイヤモンド社、p11、原書p7.
2 佐川幸三郎『新しいマーケティングの実際』プレジデント社、p.229, pp.281-285.
3 Bennett, Peter D. ed.(1995) "Dictionary of Marketing Terms" 2nd ed.,
American Marketing Association, p.165.
4 P. コトラー & G. アームストロング(和田、青井訳)(1995)『新版マーケテ
ィング原理』ダイヤモンド社、p.299.
5 和田充夫、恩蔵直人、三浦俊彦(1993)『マーケティング戦略』有斐閣、pp.57-74,
p.268.
6 コトラー & アームストロング(和田、青井訳)前掲書、 pp.297-298.
_/ _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
_/
_/ あとがき
_/
_/ 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
_/
_/ お陰さまで第17号は、他のサイトを含め全部で789通発送いたしました。
_/
_/ 第16号で星野阪神のことを取り上げましたが、12月5日の朝日新聞に
_/ よれば、2003年のヒット商品の横綱は星野阪神でした。
_/ 顧客に感動を与えた星野阪神は「経験マーケティング」のよい事例と
_/ 言えるでしょう。
_/
_/ 皆さんのご意見、 ご感想など、お待ちしております。
_/
_/ ☆ それでは、次号もお楽しみに! 12月16日発行予定です。
_/
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/