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マーケティング・インサイト

第一部[ 効果的な広告計画の立て方」

No.018 ターゲットの理解 -2 ターゲッティング

2003年12月09日 05時49分22秒 | 広告計画の立て方
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  /////                   第18号 2003年12月9日
  /////  ~ マーケティング・インサイト ~ 
  /////   「第1部 効果的な広告計画の立て方」  
  /////               発行 正田MARCOMコンサルティング
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  「効果的な広告計画の立て方」について、広告戦略、調査、表現、媒体
 選択、効果測定等の説明・提案を行います。
 ☆ 今週は、マーケティングの基本的なことで、あまり面白くないかもしれま
  せんが、重要なことですから、お目通し下さい。
 =-==-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=第18号=-
 ■■      
 ■■  広告計画の立て方-14: ターゲットの理解ー2 ターゲッティング
    
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 ● この号のポイント
 
 1 ターゲット・セグメンテーション
 2 効果的な市場細分化の条件
  
 ☆ 前回は、広告計画の出発点は、商品・サービスの購入者、購入影響者を理
 解することであり、その特性による市場細分化:マーケット・セグメンテーションの
 必要性を述べました。今回は、どのようなセグメントを狙うのかというターゲット・
 セグメンテーションの区分と、効果的な市場細分化の条件について説明します。
 
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 ● 今週の事例 広告目標の例
  ☆ 洗濯用洗剤アメリカ(注1)
   ターゲット: 自動洗濯機を使っている7000万人の主婦
   メッセージ: ブランドXは、衣類をより早く、よりきれいに洗い、泡立ちも
          少ない成分「Y」を含んでいること
   浸透度: 上記のメッセージを認知する主婦の割合を 10%から40%に増加する。
  ☆ 花王アタック(注2)
   ターゲット: ヤングミセス、団地・マンション住まいの主婦
   メッセージ: わずかスプーン一杯で驚く白さ
   浸透度: 広告認知度、知名率、保有率の調査を行ったが、広告目標は公表
       されていない。
 
 ☆ これらの事例が示すように、広告目標の第一がターゲットを定義すること
  です。また、そのターゲットには、これらの例のように広く市場全体を狙うこ
  ともあるのです。  
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 ● ターゲット・セグメンテーション
   前回、現在、多くの製品は成熟化し、多くの消費者は標準品では満足せず、
 「自分にぴったりの商品・サービスを求めていると述べました。
  そして、マーケット・セグメンテーションの定義として、「市場を、類似の行動形
 式やニーズを持つ顧客グループに分割するプロセス」で、そして、「それぞれの
 セグメントは、マーケティング戦略の到達されるべき市場ターゲットとして選択さ
 れる」とのアメリカマーケティング協会の定義を紹介しました(注3)。
  市場ターゲットの選択方式には、市場細分化戦略のほかに、マス・マーケティ
 ング戦略、集中化戦略、ニッチャー戦略があります。
 ・マス・マーケティング戦略
  マス・マーケティング戦略では、市場を異なったセグメントの集まりとは見ない
 で、消費者全部がほぼ同質的と考えるのです。
  すべての商品の顧客がセグメントに分かれているとは限りません。例えば洗
 濯用洗剤の場合、10年くらい前は、「ひどい汚れ用」とか「香り」を強調するメッ
 セージが広告されていましたが、現在では洗剤メーカー3社とも、大量に広告を
 打っているのは主力ブランドです。冒頭の例のようにアメリカでも日本でも主婦
 全般をターゲットにしています。
  また、セブンイレブンの鈴木会長が、「日本人は北海道から沖縄までほぼ同じ
 ような消費パターンだ。個店別の小さな差はあるが」と述べていたの読んだこと
 があります。
  上記のような洗濯用洗剤やセブンイレブンの市場は、ほぼ同質的と捉えてよ
 いようです。このように市場全体を同質と捉えれば、マス・マーケティング戦略で
 もよいわけです。本によっては、この戦略を「非差別型マーケティング」と呼ぶ場
 合もあります(注4)。
 ・ 市場細分化戦略 
  前項のように市場全体を同質と捉えれるマス・マーケティング戦略に対して、
 市場を、類似の行動形式やニーズを持つ顧客グループに分割して、それぞれ
 の顧客グループに対応して、最適のマーケティング・ミックスを展開する戦略を
 市場細分化戦略といいます。
 
  そして、市場を同質的なグループに分割する「市場細分化基準」ついては、前
 回簡単に触れました。その商品・サービスを購入している顧客は、どのような市
 場細分化基準で分割すれば、もっとも適切に理解できるかを種々の調査を行い
 確かめることが必要でしょう。
 ・ 集中化戦略、ニッチャー戦略
  多くの商品を顧客グループ毎に仕様・ブランドを分割して進めるのが市場細分
 化戦略ですが、企業規模によっては一つの市場セグメントに集中する集中化戦
 略や、さらに小さな隙間市場に特化するニッチャー戦略もあります(注5)。
  この市場細分化戦略を進める前に、考慮すべき条件について次項で説明します。
 ● 効果的な細分化の条件

  市場細分化戦略は、ターゲット市場毎に最適な商品を開発し、ターゲットの購買
 する小売店に商品を並べ、ターゲットに最適な媒体で広告することで、マーケティ
 ング活動を効果的・効率的に展開するものです。
  このように、セグメント毎にマーケティング活動を展開すれば効果的でしょうが、
 同時に非常に手間が掛かり、費用も増大します。費用に対する効果を考えて、
 市場細分化を有効に進める条件について、コトラーらの主張を紹介しましょう(注6)。
  コトラーらは市場細分化戦略が有効である条件として、1)測定可能性、 2) 到
 達可能性、3)維持可能性、そして、 4)実行可能性をあげています。
   測定可能性は、そのセグメントの市場規模と購買力が測定できることです。
  細分化基準によっては、具体的に市場を分割できない場合や、対象者を特定
  できないことがあります。
   到達可能性は、そのセグメントに到達するコミュニケーション媒体があるか、
  流通チャネルがあるかという問題です。あるセグメントが見込み客として有望
  であることがわかれば、同時に、そのセグメントが接触している媒体や、購入
  している小売店を明確にする必要があります。
   維持可能性は、対象とするセグメントは、利益をあげるだけの市場規模が
  るかということです。確かに存在していても、対象人数が少なくて、生産ロット
  に達しない場合には、事業としては諦めざるを得ないのです。
   ただし、少数の顧客であっても、パブリシティに用いることができる場合には、
  少量でも、特別な顧客用に製造する場合はあるでしょう。
   実行可能性は、その企業として、そのセグメントに有効なマーケティング活
    動を実際に展開できるかということです。例えば、7つのセグメントが確認でき
  たとしても、その7つを別々に計画・実行できるスタッフがいないとか、別々の
  広告を打つ予算がなければ、ある特定のセグメントに絞った集中化マーケティ
  ング戦略を採用せざるを得ないでしょう。
  このような市場細分化の条件を紹介したのは、マーケティングを展開する場合
 には、自社の資源と顧客ニーズのマッチングが最大の要素ではありますが、ビ
 ジネスとしての収益性を常に念頭に置かねばならないからです。
 ☆ まとめ
  市場細分化に進む前に、2つのことを考える必要があります。市場細分化戦
 略は、すべての商品に有効とは限らないこと。また、市場細分化戦略が有効で
 ある条件としての 1)測定可能性、 2) 到達可能性、3)維持可能性、そして、4)
 実行可能性を考える必要があるということです。
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 注 
 1 S. ダトカ 、(八巻 俊雄 訳)(1998) 『新版 目標による広告管理DAGMAR(ダ
    グマー)の新展開』 ダイヤモンド社、p11、原書p7.
2 佐川幸三郎『新しいマーケティングの実際』プレジデント社、p.229, pp.281-285.
 3 Bennett, Peter D. ed.(1995) "Dictionary of Marketing Terms" 2nd ed.,
American Marketing Association, p.165.
 4 P. コトラー & G. アームストロング(和田、青井訳)(1995)『新版マーケテ
     ィング原理』ダイヤモンド社、p.299.
 5 和田充夫、恩蔵直人、三浦俊彦(1993)『マーケティング戦略』有斐閣、pp.57-74,
     p.268.
 6 コトラー & アームストロング(和田、青井訳)前掲書、 pp.297-298.
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 _/ あとがき
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 _/  最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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 _/ お陰さまで第17号は、他のサイトを含め全部で789通発送いたしました。
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 _/   第16号で星野阪神のことを取り上げましたが、12月5日の朝日新聞に
 _/ よれば、2003年のヒット商品の横綱は星野阪神でした。
 _/   顧客に感動を与えた星野阪神は「経験マーケティング」のよい事例と
 _/  言えるでしょう。
 _/  
 _/  皆さんのご意見、 ご感想など、お待ちしております。
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 _/  ☆ それでは、次号もお楽しみに! 12月16日発行予定です。
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