吹く風ネット

意見

 2007年4月9日にぼくは禁煙して、その後一度もタバコを口にしてない。もし「吸いたいか?」と問われたら、「もう吸いたくない」と答えるだろう。喫煙を思い出すたびに口の中が気持ち悪くなるからだ。

 さて、「嫌煙権」という言葉が世の中にお目見えした頃の話だ。
 当時ぼくはJRで通勤していた。電車内での喫煙は、まだ普通に行われていて、世間もやかましくは言ってなかった。

 ある日の会社帰り、ぼくは時間待ちしている電車に乗った。発車時刻までまだ時間がある。乗っている人もまばらだったので、ぼくはタバコを吸い始めた。
 半分くらい吸い終えた時だった。けっこう離れた席に座っていた20代くらいの女性がぼくのところにやってきて、
「すいません。タバコをやめてもらえませんか」と言った。
「ああ、嫌煙権ですか?」とぼくが聞くと、その女性は
「いや、そんなんじゃないんですけど、私タバコの煙がダメなんです」と言った。
「わかりました」とぼくは言い、タバコの火を消した。

 しばらくして、発車時刻も迫り、だんだん人が多くなってきた。すると、どこからともなくタバコの臭いがしてきた。誰が吸っているのかと思い、顔を上げて見回すと、ぼくに意見してきた嫌煙権女のすぐそばで、強面のおっさんがタバコを吸っている。
 彼女どうするかなと思って見ていると、意見するでもなく、黙って本を読んでいる。
「おいおい、タバコの煙がダメだったんじゃないのか」
 ぼくのタバコの煙はだめで、おっさんの煙ならいいとでもいうのだろうか。確かに相手は強面だが、彼女は人を選ぶのだろうか。
「自分を貫けないようなら、人に意見などするな」
 ぼくはその時思ったものだった。

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コメント一覧

shinta1488
古くは国防婦人会ですね。
さくらもち
https://blog.goo.ne.jp/sakuranbo-doghotel
ひところ話題になった“自粛警察”とか“マスク警察”がまさにこれですね。
shinta1488
こんばんは
もし相手が怖くて言えないのなら、席を移ればいいのにと思ったのですが、それもしなかった。
おっしゃるとおり、典型的な日本人ですね。
さくらもち
https://blog.goo.ne.jp/sakuranbo-doghotel
自分より弱いあるいは大人しそうな人にしか意見できないという日本人一般の特長をよく表していますね。
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