吹く風ネット

通り名1

2005年3月19日
 以前、取引先のTさんという方が、
「今度、副業で携帯電話の会社(店)を起ち上げようと思ってるんだけど、本名だとちょっと通りが悪いけ、何かいい名前を付けてくれん?」と頼みにきたことがある。
 その人は、ぼくが姓名判断をやるということを知っていた。それで頼みに来たわけだ。

 そこでぼくは、
「通りのいい名前ねえ・・。そうですねえ、商売やるのなら、凝った名前よりも、誰もが一度聞いたら忘れない名前がいいですよ」と言った。
「忘れない名前ねえ・・。難しいなあ」
「いや、何も難しくはないですよ。本名はそのままにしといてもいいんですから」
「どうすると?」
「通り名を使うんですよ」
「通り名?」
「例えば、ガッツ石松は、『ガッツ』で通るじゃないですか。石松さんとか、あまり言わないでしょ?」
「そういえば、そうやねえ。石松さんじゃピンと来んもんねえ」
「通り名にしましょうよ」
「通り名か。何かいいのある?」
「なるべく短く強そうな名前なんかどうですか?」
「なるべく短くて強そうな名前か・・。例えば?」
「うーん、例えばですねえ・・。ああ、ジャガーとか」
「ジャガー?」
「短くて強そうじゃないですか。それに俊敏そうだし、覚えやすい。Tさん、下の名前は何でしたかねえ?」
「晃一やけど」
「ジャガー晃一か・・。いいじゃないですか。それにしましょうよ。語呂もいいし」
「そうかねえ・・」
「そうですよ。よし、今日から『ジャガーさん』と呼ぶことにしますよ」

 ということで、それ以来ぼくはTさんのことを、『ジャガーさん』と呼んでいる。その影響からか、ぼくの周りの人まで『ジャガーさん』と呼ぶようになった。

 さてその当時、アルバイトの中に、ぼくが『甘栗ちゃん』という通り名を付けた女子高生がいた。その甘栗ちゃん、天然という特技を持っていた。
 今年は21世紀だから来年は22世紀、さらにお母さんは19世紀生まれと思っていたり、
「沈殿って、チンチン電車のことですよね」と言ったり、
 あるパートさんから「甘栗ちゃん、天然やね」と言われた時、「失礼な、天然じゃありませんよ。地です」と答えたり、
 トムとジェリーの歌を『トムとチェリー、なかよくコンニチハ』、およげたいやきくんを『毎日毎日ぼくらは鉄板の、海で焼かれて嫌になっちゃうよ』、などと歌ったり、
 三波春夫のことを加山雄三と言ったり、
 小泉首相のことを「小泉しゅそう」と言ったり、
 と、なかなかのやり手なのだ。

 ある日、その甘栗ちゃんがぼくに、
「しんたさん、ジャガーさんって本名ですか?」
 と聞いてきた。
『何を言っているんだろう、この子は。ちょっと考えたらわかるやろ』
 と思いながらも、面白そうなのでつき合った。
「そう、本名よ」
「どういう字を書くんですか?」
「蛇に皮と書くんよ」
「へーえ、ジャガーさんって、本当は『ジャガワ』さんっていうんですか。珍しい名前ですね」

 甘栗ちゃんは、その後けっこう長い時間、Tさんの本名を『蛇皮さん』だと思っていたのだった。
 続きます・・・。

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