吹く風ネット

迷言を吐く

 三十代の前半だったか、足繁く飲み屋に通った時期がある。その頃、仕事がうまくいかず、不機嫌でうつむき加減で、いつも首や肩のこる毎日を送っていた。
 足繁く飲み屋に通ったのは、そんな不機嫌で肩や首のこる生活から、少しの時間でも逃げ出したいという一心からだった。

 飲むとぼくはいつも饒舌になった。顔見知りの人、初対面の人、そんなこと関係なく、とにかく酔いの中に人を見つけると、ぼくは大いにしゃべり続けた。
 その饒舌に乗せられて、数々の迷言が口から滑り出たものだった。

 そんな迷言の中の一つに
「青春とはインキンの痒みだ!」
 というのがあった。
 どういう経緯からその言葉が出たのかは憶えてないが、これが受けに受けたのだった。その辺にいたおっさんたちが口々に
「その通り!」と賛同する。

 きっとその時そこにいた人たちは、ぼくと同じく、不潔で臭く、痒く痒くしつこく痒く、また痒く、掻きすぎて痛く、痛くて痒く・・。地獄のような青春を送ってきた優しい男たちだったのだろう。

ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「日記」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事