吹く風ネット

最高傑作

白紙の日記帳が目の前に現れて
何か書けとぼくに迫ってくる。
だけど毎日書くことがあるわけではない。
だからその日の日記を御免被ろうとする。
ところがそれでも日記帳は目の前に現れて
何か書けとぼくに迫ってくる。
それがあまりにしつこいので
仕方がなく何か書こうとやってみる。

そうやって考えて考えて考え抜いて
七転八倒していって、やはり何にも
出てこないと気づいた時に、突然
何かが吹っ切れたような気分になって
『白紙の日記帳が目の前に現れて
何か書けとぼくに迫ってくる』ことが
俄然面白く感じてくる。するとそれが
文章になってぼくの下に落ちてくる。

「なーんだこれがあったんだ」と
ぼくは何も手を加えずに
『白紙の日記帳が目の前に現れて
何か書けとぼくに迫ってきた』と書く。
読む人がこれをどう思うかは別にして
ぼくの中では「これは最高傑作だ」という
お腹いっぱいな気分になっている。
だから今日の日記はこれでいいのだ。

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