吹く風ネット

兵法

 千葉周作のもとに商人が訪れて、
「私は命を狙われております。どうかやって防ぐ方法はないでしょうか」と尋ねた。
 すると周作は、こう答えた。
「目を閉じて、刀を大上段に構え、相手の動く気配を感じたら、振り下ろしなさい」

 後日、その商人に刀を向ける賊があった。商人が周作の教えられた通りにやってみると、賊は何もせずに退散したということだ。目を閉じるという不気味さに加え、動いたら切られるという殺気まで感じるものだから、うかつに手を出せなかった。虚にして実、と言ったところだろうか。

 とはいえ、商人としては生きた心地がしなかったに違いない。強盗などをやる人間は、相手は怯えて何もしてこないことを予想して事を起こす。そこで、こちらから相手の予想外の行動を起こしてやると、逆に強盗のほうが何も出来なくなる。

 人間というのは、自分の予想していたことと反する行動を他人がとった場合、防衛本能が働いて引くものである。おそらく、この賊が手を出さなかったのは、不気味さや殺気の前に、相手が予想外の行動を起こしたので何も出来なかったという本能的な要因もあったのだろう。

 つまり、気を呑まれたということである。気を呑まれる、すなわち戦意喪失。戦意喪失、すなわち戦わずして勝つ。これこそが兵法の極意である。

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