吹く風ネット

ご近所様の声

 以前近所にあった居酒屋は、いつもお客の入りが悪かった。まったくお客のいない日もあり、そういう時は決まって大将が、三軒先の焼き鳥屋の前まで行き、窓の外から店の中を覗いていた。そして腕を組んで横目で見ては、時々「チッ」と舌打ちする。おそらくその焼き鳥屋に、お客を取られたとでも思っていたのだろう。
 だけど、ぼくたちご近所様は知っていた。焼き鳥屋がお客を取ったのではなく、お客がその居酒屋を好まないのだと。いや、居酒屋を好まないのではなく、その居酒屋の大将を好まないのだと。

 そこの居酒屋の大将は、何を勘違いしているのか知らないが、とにかく態度が大きく、お客を自分の意のままにしようとしていた。
 例えば、注文したお酒が大将の推奨するものでなかったら、
「この料理にその酒は合わんよ」と目をつり上げて文句を言っていた。
 自分でネーミングした料理のメニューを見せて、
「これは何ですか?」とお客が尋ねると、そんなこともわからないのか言いたげに、声を荒げて答えていた。
 気分よく飲んでいるのに、大将はいちいちケチを付けてくる。
 そういった大将の態度が気に入らず、お客は「こんな店二度と来るか」となってしまい、結局お客が定着しなかった。それがお客の入りが悪かった原因で、ほどなくその店は潰れてしまった。。
「味はまあまあなんだし、もう少し謙虚だったら店も流行っていたのに」
 というのが、ぼくたちご近所様の声だ。

ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「日記」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事