吹く風ネット

1980年12月8日、遠賀川沿いで

 43年前、ぼくはとある量販店でアルバイトをしていた。年末商戦たけなわで、その日の仕事は売出しチラシのポスティングだった。
 お昼をちょっと過ぎた頃だった。ちょうど車で遠賀川沿いを走っている時に、ラジオで臨時ニュースが流れた。
『今入ってきたニュースです。元ビートルズのジョン・レノンが、銃で撃たれたということです』
 それを聴いて、車を運転していた人は思わずブレーキを踏んだ。助手席にいたぼくは
「えーっ」
 と大声を上げた。
 後ろの席の人たちは前の二人の行為に驚いた。

 最初は死亡したとは言わなかった。続報で初めて死亡という言葉が使われた。そこまでの短い時間がけっこう長く感じた。
 ラジオから次々とジョンの歌が流れてくる。中でも新曲の『Starting Over』は印象的だった。
 かつてジョンはこう言った。
"Nothing's gonna change my world"
 ヨーコへの愛がそうだったように、おそらくはその死だって
何ものも変えることの出来ない、自分の世界だと受け止めていたのだろう。その意味での再出発だったのかもしれない。

 数秒後、ぼくたちを乗せた車は、ニュースで受けた衝撃から立ち直り、再び動き始めた。
 その日、この地方は晴れていた。12月にしては暖かい日で、窓から差し込む日差しが、やけにまぶしかったのをぼくは昨日のことのように憶えている。

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