吹く風ネット

12月の雨

1、
 今日は朝から雨が降っていた。こういう日に限って、出仕事が入ってくる。
「悪いけど、来てくれんかねえ」
 人のいいぼくは、断り切れず、
「わかりました」
 と答えた。
 場所はすぐ近くだから、歩いて行こうと思って外に出た。しかし、すぐに考えを変えた。外はそんなに寒くはなかったのだが、そこは12月の雨、濡れるとやはり寒く感じるのだ。ということで、急遽車で移動することにしたのだった。

2、
 雨と言えば、以前書いた詩にこういうのがあった。
 傘をさすのが苦手なもんで

傘をさすのが苦手なもんで、
なるべく傘はささないことにしている。
そのせいで雨に濡れることもあるのだが、
さほど気にはならない。

昔からこんな調子だった。
傘をさす苦労に比べると楽なもんだと、
びしょ濡れで学校に行ったこともある。
もちろんクラス中の笑い者になったが、
それでも傘をさすよりはいいと思い、
みんなといっしょになって笑っていた。

そういえば最近は昔に比べると、
濡れることが少なくなったような気がする。
きっと空にいる神様がこんなぼくを見かねて、
降る頃合いを見計らってくれているのだろう。

 相変わらず傘をさすのが苦手だし、今は雨に濡れるのも苦手なもんで、車の中にはなるべく濡れないようにと、大きめの傘を入れている。
 しかし空にいる神様、今日は頃合いを見計らってくれなかったな。

3、
 雨の詩をもう一編。
 おかえり

午後十時半のエントランス。
雨でくもったガラスの扉に
どこかの子供が指で描いた
ドラえもんの間抜けな顔が
「おかえり」と出むかえる。
何も考えずに疲れたぼくは
「ただいま」と返している。

 これを書いたのは、一月の寒い夜だった。仕事で疲れて帰ってきた時にこれを見たとたん、心がホッコリしたのを憶えている。

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