卒業アルバム

卒業アルバムを開くと、そこには
変なポーズをとっている自分いる。
最初ぼくは無愛想な顔をしていた。
それが気に入らない写真屋さんは
無理矢理変なポーズをつけさせた。
今では見たくもない写真の一枚だ。

写真を撮った学校を卒業して以来
一度も会っていない人たちがいる。
その人たちはきっとぼくのことを
忘れているのだと思う。こちらも
忘ているのだから仕方ないことだ。

さて、そういった人たちがある日
その卒業アルバムを開いてみたら
変なポーズのぼくの姿を見つける。
彼らはきっとこう思うに違いない
「ああ、こんな奴もいたなぁ」と。

それで当時を思い出してくれたら
それはそれでいいことだと思うが、
大抵はそういうことにはならない。
その時代のことなんかもけっこう
忘れているものだ。ということで
彼の持つぼくの記憶はその写真を
見てからの記憶になるに違いない。

何かの折にぼくの名前が出た時に
「しんた？・・・ああ、あいつね」
この・・・の間に彼の頭の中では
卒業アルバムのぼくが思い出され
変なポーズが再生されているのだ。
　　　・・・イヤだな、そんなの。