sean's cinema

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「さよなら。いつかわかること」

2008-09-05 | 過去に観た映画
名画座にて。

J・キューザックの演技を映画館で観るのが久々だったので、
あ~懐かしいなぁ…と思う間もなく、彼の風貌に圧倒された。
かなり太った?(役作りか)身体をのっしのっしと揺すりつつ、
両手は前に垂れ、やや疲れ切った表情で前のめりに歩く彼…。
いや~すごい。これだけでもう私は泣けてきてしまった。

彼が演じたのは元・軍人で、今はイラクに派遣されている妻を
待ちわびながら、娘2人を育てている父親。彼の過去に何が
あったのか、この時点ではまだ語られていないのに、すでに
彼は身体全身でその男を体現していた。。これぞ役者だー!!
おおよその内容は分かっていたけれど、冒頭で「よかった」と
言えてしまう作品に出逢えたのが、まず嬉しい…。

愛する人を失ったことがあるなら、なおさら。
そうでなくても、想像するだけでその哀しみは分かると思う。
私は経験者の一人なので、痛いほど彼の気持ちが分かる。
彼は、子供に妻の戦死を伝えられない。。
というより彼自身が、まだそれを受け入れる段階ではないのだ。
戦地へ赴いたのだから、もちろんいつそうなるとも分からない。
そんな状況だったとしても、やっぱり辛い。まさか…と思う。
彼の場合、子供を育てている状況だったから、
子供たちにどれだけ母親が必要なのかを痛感していたはずだ。
もしも自分が、妻の代わりに戦地に行けていたなら、
娘たちは母親とこの先ずっと生活出来たかもしれなかったのだと、
悔やんで忍び泣く彼が、この上なく哀しかった…。

突然、今までの厳しい態度から一転。セキを切ったように、
「娘たちを連れて遊園地へ行く!」という計画を立てた彼。
価値観の合わない弟(彼も重要)の反対を押し切り、出発する。
いきなり父親のテンションが上がったのにビックリする姉妹。
勘の良い長女は、だんだんと気が付いてくるんだけど、
父親が受け入れられないものを、娘が理解できるはずもなく…。

癒しの旅。を続ける彼らが辿り着く海で、やっと真実を迎える。
辛いことに向き合う勇気は、逃げることより遥かに難しい…。
だけどタイトルにもあるように(このタイトル、上手いと思った)
すべてが、いつかわかること。なのかもしれない。
これからの彼らに必要なものは「時間」なのだ。

ただもうひとつの真実は、彼らの愛国心や価値観が揺るぎをなす
とある戦争の実態を知った時、真に訪れるものなのかもしれない…
と思うと、母親の死をどう受け止めるかは、まだ続くことになる。
ひょっとして製作者側は、それを言いたかったのかな…とも思う。

(愛国心は、生命を大切にする人間愛の上に成り立って欲しい)

★★★★☆

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6 コメント

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なるほどねぇ (ポアポア)
2008-09-13 17:51:11
マルコヴィッチの穴/シン・レッド・ライン/アナスタシア/コン・エアー/真夜中のサバナ・スタンド・バイミー
以来・・・この人の映画は観てません。
この人は、気配を演じられる人ですね?
こういった設定は、海外ドラマでもあるので、「あぁ、アメリカの現実だなぁ」とか、思いながら観ていました。戦場で女性が死ぬ。日本人には特に想像が出来ないかもしれませんね。今は、自衛官にも女性は居るけれど、敗戦以来、国民の目に触れる戦場は表向きない国ですものね。
人一人の存在が消えるって言うのは、とてつもなく切なく苦しいことですよね。

本日私は、気軽に観れるウォンテッドをチョイスしました。(笑)
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ポアポアさん♪ (sean)
2008-09-13 20:44:04
なんか卵みたいに、つるんとした顔立ちなのよね(爆)
今回はホントに素晴らしい役作りだったと思います。

女が戦場で、男が家庭を守る…って、
日本人にはまるで想像がつかないことですよね。

ところでそれ、息子が観たがっているよー(爆)
どうだった??
タムナスさん、好きだけど~^^;
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家族を失う辛さ (ポチ)
2008-09-13 23:25:57
戦争へ行った愛する妻を失う…、上のコメントで
お二方が書かれているように、私も日本では
ちょっと想像出来ないなあと思いました。
でも、先日何げなくCNNを見ていたら、妻を
戦場で亡くしたアメリカ人の男性がインタビュー
されていて、この映画のレビューを読ませて頂いて
ふっと思い出したんですよ。

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胸が痛かった (ふみや)
2008-09-14 20:08:55
この作品のジョン・キューザックは
ほんとすばらしい演技でしたよね。
もし、自分が彼のような立場になったら・・・
実際そのような体験をしたことがないから
自分がどうなるのか・・・わかりません。
ただ、この作品もある意味、戦争の悲惨さを訴えている作品ですよね。
ほんとに人の犠牲の上に立った愛国心はもううんざりです。
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ポチさん♪ (sean)
2008-09-15 20:47:05
ポチさん、そうなんですね…。
やはり向こうでは日常に起こりえることなんですよね。
なんともやるせないです(T_T)
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ふみやさん♪ (sean)
2008-09-15 20:52:13
ですよね~!
冒頭から彼の演技に釘付けでした。

映画のようにドラマチックでないにしても、その辛さはきっと同じです。
もしそうなったら、やっぱりなんとかして立ち直るしかないのですよね。
そしてそれは、必ずできることでもあります。

そう、でもその前に、、、
もう戦争などたくさんですよね。私も同感です(T_T)
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