おはなしこんにちは

「物語」のあらすじとか構造とかアウトラインなどを考えてみます
 (更新は月一回程度というブログの常識を越えたのろさ)

「セーラームーン第36話」ごっこ遊びの醍醐味

2005年08月23日 | TV


 その時、1992年12月12日、「セーラームーン第36話」を観ていた全国の大きいお友だちはテレビの前でひっくり返りました。それは何だったのか考えてみます。



●「セーラームーン('92)」とは?

 いや、知らない人がいるとも思えませんが、公式ホームページを見てみましょう。

 このアニメに関しては昔からいろいろ言われているのですが、等身大の戦うヒロイン像を打ち出した点で画期的な作品だったと思います。もっとぶっちゃけて言うと――同人誌などの世界でマイナーなテーマとして描かれていた話……、こんなことメジャーじゃとても恥ずかしくてできないようなネタを、一流のスタッフで「やってしまった」のがセーラームーンだったわけです。ヒット作品は往々にしてそんな風に生まれます。ウケようと思ったら恥を捨てねばならないのです。

 また、斉藤美奈子はその著書、「紅一点論」(すごく面白い本です)で、セーラームーンをちょこっとは評価しているみたいですが、最終的なテーマに「母性」を持ち出したところで、せせら笑っております。有能な(未婚の)女性は悪の怪物として描かれ、ちょっとドジな可愛らしい女の子は、やがて母性豊かな母となり世界を救う図式が気に入らないようです。もっともな話ですが、そんなこと言ったって、この図式は一千年もの間我々の脳みそに植え付けられてきたものなので、フェミニストが何を言ってもそうそう変わるものではないでしょう。



●そこまでの流れ

 うーん、案外覚えてませんね。Wikipediaにも書いてないのは日本人の常識だからなのでしょうか。こういうところもありますが、これだけ読んでもわけわかりません。

 とにかく、月野うさぎというヒロインがルナという猫と知り合ってセーラー戦士として覚醒するのです。彼女の使命は月のプリンセスと幻の銀水晶を探すこと。ところがダーク・キングダムという敵が妖魔という女怪物を操って襲ってくるのです。ヒロインピンチの場面で、いつもキザったらしくバラの花を投げて助けてくれるのが「タキシード仮面様」。なぜかシルクハットにタキシードを着て仮面をつけている変態です。ヒロインはこのキザ男にあこがれています。
 やがて仲間のセーラー戦士が増えていき、この第一シリーズでは五人になります。敵のほうは第13話で幹部のジェダイトを倒し、第24話でネフライトを倒しゾイサイトの時代となります。そしてプリンセスではないかと思われたセーラーヴィーナスもセーラー戦士の一人にすぎず、実はセーラームーン自身がプリンセスだったという展開になります。幻の銀水晶は……自分が持ってたんだっけ? とにかくゾイサイトをやっつけクンツァイトが現われて、タキシード仮面は敵に拉致されてしまうのです。そんなこんなで、今回のその時、第36話となります(松平アナの声で)。



●「第36話」

 第三十六話のサブタイトルは、「うさぎ混乱!タキシード仮面は悪?」というものです。こういうレビューもありますが、横着しないで自分でも書いてみます。

 前回でタキシード仮面が拉致されてしまい、ヒロインのうさぎはとても落ち込んでいた。セーラーヴィーナス愛野美奈子はお姉さんのようにうさぎの髪をとかし、気分を変えるために美容院に行くことを勧める。だがその店は敵の手に落ちており、髪の毛の手がかりから(いつ手に入れたんだ!)セーラームーンを探し出すという罠だったのだ。ところがうさぎの髪の毛が美奈子に付着していたために、美奈子がセーラームーンと判定されてしまう。敵が喜んだのもつかの間、別なところからセーラームーンが現われて……、

 と、ここまではいつものルーチンなストーリーです。

 違ったのは、ここでなんとタキシード仮面が敵として登場したのです。当時の驚きを文章で伝えるのはとても難しい。初期のセーラームーン――無印というらしいですが――それは、日常コメディにスーパーヒロインというきわめて安定した世界観の話だったのです。つまりありうべからざる展開だったわけです。

 例えて言えば――水戸黄門で風車の弥七が御老公の命を狙うようなもんです。
         八兵衛が御隠居に襲いかかるようなものなのです。


 こんな展開が成立するには、ダイナミズムのある絵空話である必要があります。つまりこれこそが『ごっこ遊びの醍醐味』というわけです。



●ミュージカル、そして実写版へ。

 セーラームーンはミュージカルにもなり、実写版('03)にもなりました。この物語がごっこ遊びの醍醐味で成り立っているからには、あるいは必然だったのでしょうか。完全に顔を見せても誰だかわからないという、お約束の世界。史上最高のごっこ遊びと言えましょう。



1 コメント

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未だに思ってしまう…。 (よっちー)
2015-10-29 21:53:23
小1の頃、美少女戦士セーラームーン36話を観てからふと思う。
うさぎちゃんと美奈子ちゃんがカリコ床山という美容院に行き、うさぎちゃんがシャンプーされている時に「本当に髪切るのかな。もし切るならそんなうさぎちゃんを見てみたい」という気持ちがあった。
シャンプー台にうさぎちゃんの長い髪が広がり、カリコさんは前髪を明らかに洗っていないのが気になった。
番外編でいいから「もし、うさぎちゃんが髪を切ったらクラスのみんなはどんな反応をするのか?」というのを見たかった。
ボブ・ソバージュ・ロングストレート(リボンで縛っているのを見ると美奈子ちゃんにしか見えない)なセーラームーンだったらシュールかな。(汗)
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