そう思い、
ちょっと美味しそうな三元豚の薄切りと
新玉ねぎとしょうがを買った。
玉ねぎはよく炒め、
あまり存在感がないくらいの方が私好み。
たっぷりとおろしたしょうがと、
そして、すき焼きのタレ。
味付けはこれだけ。
付け合せにキャベツの千切りを山盛り添えて
三元豚のしょうが焼きの出来上がり。
家主はテレビを見ながら
時々テレビに向かって言いたいことを言いながら、特に手元も見ずに食べている。
私はテーブルに出しておいた
北海道物産展で先日買った「いか昆布」を、炊きたてのご飯に少しかけた。
家主が私の行動を見たので
「いる？」と聞いた。
「ん？あぁ」
昨夜の食事のときにも
この「いか昆布」は出しておいた。
なのに家主は
わざわざ立って、台所に「のりたま」を取りに行き、自分のご飯にかけていた。
「いか昆布は？」
のりたまで埋め尽くされたごはんを頬張りながら家主は
「いいや」
ところが今日は、
私がごはんにかけた「いか昆布」に興味を示し、袋に手を伸ばしてきた。
家主はひと口食べて、声のトーンが上がった。
「うわーこれは美味い！」
箸が進み
何度も「美味い、美味い」と聞こえてくる。
美味いコールがなかなか鳴り止まないので、
とうとう私も黙っていられなくなった。
「あの…しょうが焼きには何一つ言うこともなかったよね」
以前の私なら、
心の中でそう思うだけで、言うことはしなかったが、
きっと伝える努力も必要なんだと改心し
思ったことを言葉にしてみた。
すると
「しょうが焼きは美味しかったよ。ほら、しょう油もかけないで食べたじゃない」
………この人、なにを言ってるんだろう
しかも、
なんだか不機嫌そう。
さらに
「玉ねぎがどこに入ってるかわからなかったけど」
あぁ、じゃあ
これから家主さんのは、もっと玉ねぎの形が残る程度にしか炒めないようにします
私がそう言うと
「いや、玉ねぎそんなに好きじゃないからいいんだけど」
………この人、何が言いたいんだろう。
