できる人のIT活用事例

携帯電話やパソコンといったIT技術にどこか違和感がありませんか? 本当にその先進技術が生活の中で生かされていますか? 

いまさらながらiPhone&iPodtouchのゲームに驚いてしまう(第6回)

2009-06-08 | Weblog


KEY WORDS : Electronic Entertainment Expo : Worldwide Developers Conference : iPhone : iPod touch : Android G1 : 小 型ゲーム機 : apps Store : 購入動機 : 利用状況


▲Electronic Entertainment Expoを告知する公式サイトの1部

携帯電話用の「アプリケーション革命」

よいよ今週からスタートする《Electronic Entertainment Expo》や 《Worldwide Developers Conference》は、米一般紙全国版レベルでももちきりの話題になっている。下のNYT紙面の写真でもわかるように、中心はApple Appsのダントツ状態といってよさそう。日本時間6月7日の同紙記事は「the Mobile Apps Revolution」の見出しで、携帯電話用アプリケーションに「革命」が起きたとさえ伝えている。今回は閑話休題としてその内容に触れておこう。

iPhoneとAndroid G1のユーザー調査

NYTの記事は、シカゴのコンサル「Gravity Tank」社がこの4~5月に行った 調査をもとにAP通信の記者が書いたものである。調査の対象はiPhoneとAndroid G1のユーザー、つまりSmartphoneの中でも独自のOSを搭載し た人気の新機種ということになる。それもそれぞれがApps Storeを持ち、新たなユーザーを引き付けている機種だ。調査結果はそれほど驚 く内容ではないが、iPhoneやiPodtouchの画期的なApps状況を見渡すにはいい機会だから、速報をかねてここにまとめておく。


▲エクスポやコンファレンスを報じるNYTの紙面一部

最新SmartphoneのAppsはいよいよ本物に

人気の尺度としては、まずどれくらいの人がどのように利用しているのか。調査によると、Appsをダウンロードした平均点数は23.6、毎日利 用する点数は平均6.8という。しかもユーザーの約半数48%が、Appsを1週間に1回以上購入し、毎日30分以上の時間を費やしている。調査が言うように、Appsはいよいよ本物“Apps Get Real”である。しかも Android G1はまだ新参モノだから、こうした驚きはほとんどAppleにつ いてと考えていい。

iPhoneとAndroid G1の購入動機と利用状況

しかも調査が語るように、「Appsは携帯電話の利用の仕方、時間の費やし方、日々の生活の過ごし方」を変えつつあるという。利用するAppsの用途でいえば、32%がゲーム、31%が新聞、28%がGPSやMP3、 24%がTV番組を観る。だがそれだけではない。購入動機の74%がメー ルやスケジュールのチェック、同じ比率で1台の携帯が多様な機能を搭載するからという。おやおや、それではどこかの国で見た光景ではないか。67%が新しいゲームが使えるからと答えてはいるが・・・。


▲Android G1からも遅ればせながらAppsが

単なるスイス・アーミーナイフだろうか?

調査会社が語るように、まるで多用途一体のスイス・アーミーナイフ 状態である。しかしこの調査と記事が語るのは、かなり表面的な現象に過ぎない。日本の携帯電話が世界のスマートフォンに遅れをとっているとはいえ、機能だけはゲーム、新聞、GPS、TV番組、メールなどを搭載し、利用されている。問題は国内にしか通用しない稚拙な技術表現で終わっていることである。インターフェースの技術、ユーザーにも新しい経験をもたらす驚きがない。

「アプリケーション革命」の裏を読み取れ

それにひきかえiPhoneやAndroid G1は、ひとつの機能に多様なインタ ーフェースを持ち、ユーザーに驚きと新規の経験を与えるAppsが山積みである。機能は同じでも、「時間の費やし方、生活の過ごし方」の感覚はまるでスッポンと月といってよい。こうした新たな経験を生み出す遊びの要素こそ、もっと集約的に問わなければ、「アプリケーショ ン革命」などとはいえないはずである。次回を最後にAppsの具体的なジャンルや用途や分類で遊びの正体を見極めておきたい。一体、何が目新しいのか。


いまさらながらiPhone&iPodtouchのゲームに驚いてしまう(第5回)

2009-06-05 | Weblog


KEY WORDS : iPhone : iPod touch : 小型ゲーム機 : 巨大なメディア : 仮想現実 : 遊び : 幼児化 : app Store : ソーシャルメディア : SNS : 痛みのない暴力 : 裏切りのない夢


▲「驚きのアプリケーション」をうたうApple社のサイト

新たな社会特性が醸成されつつある

前回まで述べたiPhoneないしAppsの論点のひとつは、まずソーシアルネットワークSNSの「社会性」である。たかが携帯電話として発売されながら、通話からインターネット、情報通信、ゲーム機まで広がり、新たな社会性を獲得しつつある。任天堂の世界的ゲーム機を追いこす勢いだけではなく、膨大な人々を取り込むメディアへ成長しつつあることだ。ユーザー数だけでも社会問題だが、ここでいう社会特性とは、Appsを制作・提供する人々がプロのゲームクリエータを超えた場所まで広がっている点も含んでいる。

すべてが分散化・細分化・短絡化へ

創造の現場がはるかに広い領域まで拡散し、目新しさを惹き起こしたのは、旧来の社会自体が変化してきた逆照射とみなされる。前出の「可処分時間の時代」「今は子供でさえ忙しい」といわれる社会が、時間も場所もこま切れになり、すべてが徐々に分散化・細分化・短絡化をたどっている現われである。それをさかのぼれば、少し前に書いたビル・ゲイツとスティーブ・ジョブズの差異、あるいはKnow whatとKnow howのちがい、PCとMacのインターフェースの差による。


▲ますます注目を集めるApp stores つい最近放映のABC放送 先端技術番組

根底には新種の機械が持つ機能がある

さらにいえば、Apple社が率先して表に押し出したインターフェースの思想の奥にもっと根源的な要因があった。コンピュータに代表される「新種の機械」である。Macは直感や感性や遊び心で容易にコンピュータを操作する点で、一歩も二歩も先を走った。その底におし隠していたのは、他でもない最新のコンピュータ技術であり、社会や人々に分業化、専門化、細分化を強い、時間や空間や生活全体を細切れにしてきたその機能である。

表に漂うのは幼い遊びの楽しさ

当然、隠された表て面(インターフェース)に漂うのは、現実を模倣した仮想の現実である。仮想とは子供や幼児を見ればよく理解できる。彼らの現実は、多くが遊びやゲームである。遊びはすべて原初的であるという意味でも、子供の幼稚さと重なっている。まだ文字を知らない、まして文で操作するコマンドさえ理解できない幼児が、無考えにアイコンで操作する。遊びと言っても、わけのわからない感覚主導型の原理が、その場を差配している。


▲興味深いAppの画面から 遊びだけとは限らないが

変化をもたらす技術は文化の危機を

ある米の知識人が「文化は継続性であるが、技術は変化を司る。技術はいつのときも文化の危機を創り出す」といった。すでに今、旧来の伝統的文化が壊滅しつつある。変化を要求したコンピュータは、文明の危機をもたらし、かつての文化・社会・規範などをメルトダウンさせ、カオスのような原初の顔を現している。それこそ知や秩序や思考と異なる感覚の世界、子供や幼児の分散化・細分化・短絡化した世界である。

痛みのない暴力 裏切りのない夢

人々は終局の「幼年期の終わり」へ向かいながら、日々の祝祭、仮想、ハレといったゲームを演じている。痛みのない暴力、裏切りのない夢、傷つかない思いやりといったゲームは、どこまでつづくのだろうか。遊び以上の巨魁な遊び=虚構がつくられ、大衆が気付かないうちに有害な毒が醸成され、生き身の人々を不幸に汚染している。それに無知のまま、ゲームにいつまでも明け暮れていいはずがない。暇つぶしのゲームは、どこで折り合いをつければいいのだろうか?