徒然草庵 (別館)

人、木石にあらねば時にとりて物に感ずる事無きに非ず。
旅・舞台・ドラマ・映画・コンサート等の記録と感想がメインです。

あなたがここにいればよかったのに (キャラメルボックス)

2014年04月05日 | 舞台

キャラメルボックス・アコースティックシアター2作品のもうひとつ。
3月21日に『ヒトミ』とダブルヘッダーで観に行き、翌日もう一度観に行きました!


■   □   ■


『あなたがここにいればよかったのに』
http://www.caramelbox.com/stage/acoustic2014/you.html


≪キャスト≫ ☆敬称略
天野大志   筒井俊作
日高まひろ   林貴子
日高明広(まひろの父)  大家仁志(青年座/客演)
森岡季之(まひろの恋人)  阿部丈二  
宇田川恵菜(まひろの親友)  原田樹里
宇田川譲(恵菜の夫)  三浦剛
池沢千夏(恵菜の母)  笹川亜矢奈
長山莢子(大志の姉/編集者)  前田綾
深見常比古(書店店長、まひろの上司)  菅野良一
堀公香(まひろの同僚)  小林春世/木村玲衣(DC)
門倉芙佐子(看護師)  木村玲衣/小林春世(DC)

≪プロローグ≫
日高まひろ、27歳。翻訳家を目指しながら書店で働いている。母を幼い時に事故で亡くし、唯一の家族である父は世界的に名声を得ている建築学の教授である。恋人の森岡は広告代理店の営業マン。半年前に知り合い、そこそこ順調な(と思われる)交際を続けている。多忙な彼と仕事の合間をぬってカフェで話したある日、まひろは突然プロポーズされる。戸惑うまひろ。森岡が去った後、いきなり見知らぬ男が「その結婚であなたは不幸になる、絶対に止めるべきだ!」と、まひろの前に現れた――!
その男の名前は、天野大志。彼は「自分には未来が見える」と言い、まひろの身辺で起こるであろう様々な出来事を「予言」していく…。


≪感想≫
天野先生に泣かされましたッ!!!(ノДT) ←号泣、ではなくて(涙は出なくても)胸がじわーっと熱くなる感じ。
これほどまでに、人を想うことができる、いや、人の幸せを願うことができるのか、と。

よくある恋愛三角関係の安っぽいドラマではなく、一人の人間が、大切に想う人とその周辺の全ての人々のために、不器用でわかりにくくて直球勝負なんだけれども、汗だくになって必死で足掻いている。その人を幸せにしたい、という純粋な想いに、ただただ、胸をうたれました。

まず最初の設定、というか、主人公の登場が、観る側に「何だコイツ?!」と思わせる怪しさ満点の芝居だったのがポイント!(笑)これはまひろの心を理解するのに避けて通れない?場面かと。誰がいきなり現れた見知らぬ人に「あなたの将来は!」なんて予言されて信じますか、って!このへんの「底辺からの出発点」をひっくり返していく真柴あずきさんの丁寧で心の機微を緻密に描く脚本が良かったです。タイムトラベラー…というか、タイムシークエンスの設定など細かい部分は「どうなのよ?」と思った向きもあるかもしれませんが、私個人としては、語りすぎず言い訳しすぎず、非現実的な設定を何となく押し切っちゃうテンポの良さが、おそらく「キャラメルボックスならでは」であり、「演じている役者さんたちの醸し出す雰囲気」があってこそだったのでは、とも感じました。大志くんこと、天野先生を演じる筒井俊作さん、有無を言わせぬ「純粋さ」を言葉より雄弁に語る眼差しが、ストーリーに感情移入する大きなカギでもありました。

一番ぐっと来たシーンは、終盤にまひろの恋人・季之に「俺とまひろを別れさせたとしても、彼女がお前になびくとでも思うか!」と胸倉を掴みあげられて、大志が「いいえ、思いません!!!」と叫ぶところ。いろんな理由があって「まひろに幸せな人生を歩んでほしい」と願い、奔走する彼の「理由」が、まひろへの恋愛感情なんかよりももっともっと大きな「愛」――この言葉も似つかわしくない気がしますが――とにかく、「彼の大切に想う人全ての幸せを願う」という、一段階も二段階も高いステージの感情が込められていた台詞のように感じたからです。

ドタバタで決してスマートとは言えない大志の奮闘が、「一生懸命な姿は美しい」と愛おしく思えましたし、その芝居をまひろを挟んで受けて立つ季之の胡散臭さ満点&自己中心的な姿にもイライラ(いい意味で!お芝居が良かったからこそ大志とは良いバランスの存在感でした)、素直になれない?あるいは胸の中のモヤモヤにフタをしてしまったようなまひろの頑固っぷりに、「もう!あんたって子は!」と恵菜ちゃんと一緒に叱りつけたい気分になったり…(笑)そして娘の葛藤を冷静に見守る日高先生のカッコ良さに「大人の男っていいわ…v」と惚れ惚れ。(←そこ?いや日高先生に関しては多分半日くらい熱く語っていられると思いますw)
展開を見守るハラハラ感とは別に、各キャラの心情が本当に繊細に描かれているお芝居を楽しめました。



タイトルの「あなたがここにいればよかったのに」。
この言葉が台詞に登場するのは、最終盤でした。いつ使われるのかな、と見守ってきた私も、このタイミングには「なるほど」と胸にストン。
大志とまひろ、彼らを取り巻く皆の「未来予想図」を最後まではっきりとは描ききらないけれども、その分観る側が「幸せになるんだよ!」と登場人物たちの将来を祈るような、温かい気持ちの幕引きでした。



音楽(挿入されている歌)も、スタイリッシュで舞台の雰囲気にとても似合っていました。特に印象的なのは、オープニングのオールキャストダンスでキーボードから一気にギターとドラムが重なるシーン。中央にまひろを挟んで大志と季之が視線を交錯させる止め絵も、緊張感のある物語のスタートダッシュに相応しい印象的な場面でした。


これはEGNISHの「Chain」という曲でした。iTunesでDLしましたが、耳にするとあのオープニングダンスのシーンが脳裏によみがえって、あの開幕直後のドキドキを追体験できました♪劇中に使用されている曲目リストはCBの公式サイトに掲載されています!


■   □   ■


もうちょっと各キャラに対して感じたことを掘り下げて書きたいのですが、今日はここまで。
タイムシフトを(おそらく予約ミスで)見逃してしまったので、もう一度でいいからゆっくり見たかったなぁ…と。残念~!(´Д`)