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月草通信

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『絶望死のアメリカ』(アン・ケース アンガス・ディートン)

2021-05-19 01:11:02 | 本読記
 恐ろしい内容だ。

 アメリカの非ヒスパニック系白人中年の死亡率が、2000年頃までは2%ずつ減少してきたのが、21世紀に入って増加から高止まり状態で、他の「富裕国」フランス・イギリス・スウェーデン等(グラフにはないが日本も減少しているのだろう)が依然減少しているのと比べ、特異である。ヒスパニックはもっと貧しいが死亡率は他国と同じ。アフリカ系は、どこの死亡率よりも高いが、減少は顕著で、倍以上であったのが、20%位の差になっている。
 非ヒスパニックでも、大卒以上と未満では画然とした差があって、死亡率は、白人大卒未満・黒人同・白人・大卒以上・黒人同 の順である。
 アメリカでは、大卒と未満との賃金格差が年を追って広がっていく。大卒用の高給職は多いのだそうだ。未満は、製造業の雇用が減って、簡単なサービス業しかなくなっていく。戦後の貧しい日本人がテレビで羨んだ「高級ブルーカラー階級」なんて存在しなくなっているのだ。(彼らがトランプに夢を託しているのだろうか)
 痛みに苦しむ大卒未満の人達は、大卒よりも率が高く、後者や他国が年齢に応じて増加するのに対して、中年の時一番高い。著者は、社会的排除や心理的苦痛が影響していると論じている。

 絶望死とは、自殺、薬物過剰摂取、アルコール性肝疾患・肝硬変だそうだ。
 2017年の死者は15万8000人という。内自殺は4万7000人。

 痛みの多い地域は自殺者の多さと一致しているそうだ。また、アルコールによる死と自殺率も相関していて、アメリカだけでなくロシア・東欧の多くの20年間を絶望の波と、結んでいる。
 オピオイド=薬 の処方は、痛み止めとして非常に手軽に行われているようだ。製薬会社は利益のためにあらゆることをした。上院議員にもなってもいる。新型コロナワクチンで知られるジョンソン・エンド・ジョンソンは、エピデミックを助長したとしてオクラホマ州から5億7200万ドルの支払いを命じられ告訴するらしい。

 日本の大卒者とそれ以外の格差は、アメリカほどではないように思う。寧ろ、折角高度の知識を得た博士達の就職難まで言われている。しかし、非正規労働者の処遇はアメリカ並みに見える。コロナ禍での様子は凄まじい。

 副題「資本主義がめざすべきもの」の語るものは、当たり前のことで、まず「低学歴アメリカ人の賃金低下をどうにかして止めるか」であった。そして、他国への「一番わかりやすく直接的な教訓は、現在おこなわれているオピオイドに対する規制をそのまま維持することだ」。








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